読点(、)はどこに打つか?句読点の使い方2
ネットで文章を書いていると、句読点や記号(「約物」という)の使い方は避けて通れない問題ではあるにも関わらず、その使い方はあまり指摘されることがないようだ。そのため、前回の記事はいろいろと参照していただく結果となった。なお、前回は特に使用頻度の高い話に限ったので、例えば、ハイフン(‐)とマイナス(-)とダーシまたはダッシュ(――)と長音(ー)は違うのだというようなところまでは突っ込まなかったのでご了承いただきたい。
そのなかでnaru33さんからのコメント。
「、」をどこに入れたら読みやすいかについても何か基準があるのでしょうか?読点「、」つまり「テン」の打ち方は非常に重要だ。しかし、それは他の記号以上に「ルールなき世界」でもある。「こうでなければならない」とは誰もいえない。しかし、「こうした方がいいかな」ということは(曖昧だが)いえるかもしれない。
「、」を、どこに入れたら読みやすいかについても、何か基準があるのでしょうか?
自分はわりと、後者のようにいっぱい入れちゃう派です。
そして、この読点の打ち方を見れば、その人が人に見せる文章を書ける人なのか、あまり上手でないのかが大体わかるものである。下手すると「テンで話にならない」場合もあるのだから怖い話だ(←句読点の話では絶対に出てくるオヤジギャグ)。
テンはどこに打つか――という話なのだが、今回も網羅的にではなく、ポイントを絞っていきたい。
●テンを打つ前に語順を整える
まず、「テンを打つ場所を考える前に、語順を考える必要がある」と声高に主張したい。テンを多く打たなければ意味がきちんと伝わらないのだとしたら、それは悪文だ。「テンをできるだけ打たずに済む」ような語順を整え、その上で必要・重要な個所から優先的にテンを打つのである。場合によっては、語順を変えるだけでテンが不要になることさえある。
例文を考えるのが面倒なので、たまたま手元にある本多勝一『日本語の作文技術』から例を引用して、語順が非常に重要だということを確認してみる(氏の本の内容が一番いいというわけではないので、念のため)。
ポルトガルとのあいだに休戦協定がむすばれ、MPLA指導部の第一陣として一九七四年の暮れに、解放闘争初期からの指導者の一人ルシオ・ララにひきいられた代表団がルアンダの空港についたとき、五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこみ、ララ同志をかついでルアンダの中心へむかった。(『アンゴラ解放戦争』岩波新書)これはかなりの悪文である。本来なら「一九七四年の暮れに」の前にも「、」を入れるべきだろう。いや、できれば前半後半で二文に分割したいところだが、語順だけ変えて改善するとすれば、以下のようになる。
一九七四年の暮れにポルトガルとのあいだに休戦協定がむすばれ、解放闘争初期からの指導者の一人ルシオ・ララにひきいられた代表団がMPLA指導部の第一陣としてルアンダの空港についたとき、五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこみ、ララ同志をかついでルアンダの中心へむかった。つまり、原文では4個所、できれば5個所にテンを打ちたいようなブツ切れの文が、テン3つで済むようになるわけである。
そして、ここまで改善したならば、「一九七四年の暮れに」のあとにテンを打つか打たないかというのは「好みの問題」で片づけられる程度のものとなる。しかし、3つより減らすのは不可能である。
●論理性とテン
テンをどこに打つか、ということは、ある程度慣れてくると直感的に打てるものであるけれども、実はその書き手がどれだけ「論理的な思考をしているか」ということを証明するものでもある。どこからどこまでがひとまとまりで、どこからどこまではさらに大きなグループになっているか、ということを、テンの打ち方一つで示すことになる。
変なところにテンを打ち、必要なところにテンを打っていない場合、その人は論理性に欠けるのだな、と思えてくる。
→「変なところに、テンを打ち必要なところに、テンを打っていない場合その人は、論理性に欠けるのだなと思えてくる」
と書き直すだけで、ものすごく変に見えてしまわないだろうか。だから、必要度の高い順にテンを打つことだ。そうすれば必要最小限以上の読点がある限り、多くても少なくても許容範囲に含まれるということになる。
テンを打つ場所は、意味の切れ目である。意味がつながっているところをテンで切ってはならないし、意味が大きく切れるところにはテンを入れなければならない。この辺は一つ一つの文のシチュエーションによって変わるので、一概には言い切れないところもある。
●実例を考える
冒頭のnaru33さんの例なら、テンがなくても理解できるから語順はOK。そして、一個テンを打つとしたら、私はこう打つ。
「、」をどこに入れたら読みやすいかについても、何か基準があるのでしょうか?
では、もう一つ打つとしたら?
「、」をどこに入れたら読みやすいか、についても、何か基準があるのでしょうか?
※「『、』をどこに入れたら読みやすいか」についても、何か基準があるのでしょうか?
下の※のように書けば、そこにテンを打つ意味はわかっていただけるだろう。なお、こういう場合は積極的に「カギカッコ」を使うのが私の好みである。テンだけで区別しようとするとやりづらいときでも、カギカッコでひとまとまりを示すとすっきりし、非常にわかりやすくなることがある。また、テンも打ちやすくなる。これはちょっとした技法。
そして、私としては、これでテンは充分だと思う。したがって、この文章にふさわしいテンの個数は「0~2」であろう、と判断する。もちろん、文章の流れ具合によって、自分でもテンを増やしたり減らしたりすることがある。
●動詞の連用形が続くときは読点がほしい
私が絶対に読点を入れてほしいと思うのは、「並行する動作が、いくつかの動詞の連用形でつながるとき」だ。もちろん補助動詞を切り離してはいけないが、別の動作が続くときなどは、連用形の動詞のあとにはやはりテンがほしいように感じる。
△しゃがみかたまり背を向ける。走り出し逃げ込んだ。
○しゃがみ、かたまり、背を向ける。走り出し、逃げ込んだ。
○しゃがんでかたまって背を向ける。走り出して逃げ込んだ。
○しゃがんでかたまり、背を向ける。走り出して、逃げ込んだ。
ただし、「て」「で」で続くときは読点を入れなくてもよい。これは個人的な希望に近いので間違いというわけではないのだが、どうも気になることが多いので書いてみた。
●テンの打ち所と主語の問題
いま私が書いた、
「これは個人的な希望に近いので間違いというわけではないのだが、どうも気になることが多いので書いてみた」
という文は、実は2文が「のだが、」で続いている。だからここがまず読点の打ち所となる。
それ以上にテンを増やすなら、
「これは個人的な希望に近いので、間違いというわけではないのだが、どうも気になることが多いので、書いてみた」
となる。「~ので」までで理由を表わすひとかたまりになるから、ここが第2のテンの打ち所だ。
ただ、テンが増えると「第一のテン」がそこに埋もれてしまいかねないこと、また後半の「書いてみた」だけの部分が短すぎるように感じたので、私はテンを一回しか打たなかったのである。この辺は個人的感覚の問題なので、特に正解があるわけではない。
主語の後には読点を打つ、と教わった人がいるかもしれないが、それは必ずしも適切ではない。必ずしも打たなくてもいいからだ(しかも、最近の国文法では、日本語には主語はない、という説も出ているほどである)。もし「主語のあとにはテン」というセオリーを守るとすると、先ほどの例は
「これは、個人的な希望に近いので、間違いというわけではないのだが、どうも気になることが多いので書いてみた」
というように、ちょっとブツ切れになってしまう感じがする。もちろん、それなりのボリュームのある主題を提示したあとに読点を置くのは、有効な使い方である(←この文自体もそうだ)。
●引用の「と」の前か後か、どっちにいれますか
あなたは私の指先を見つめ、悲しいかいと、聞いたのよ。
あなたは私の指先を見つめ、悲しいかい、と聞いたのよ。
あなたは私の指先を見つめ、「悲しいかい」と聞いたのよ。
この3つはどれも使われていると思う。自分は2つめか3つめが好みだが(つまり、カギカッコの代わりの読点のような使い方である)、「と」の後が長い場合は「と」の後に入れたほうがすっきりする場合もあるかもしれない。
●その他のポイント
あと、自分の癖としては、接続詞の後には必ず打っている。
まあ、内容に合わないテンでバラバラな書き方にならないように整えて書いていれば、問題が生じることは少ないだろう。
余談。
前回の話はタイトルこそ「句読点の使い方」だったが、実際には句点も読点も扱っていなかった。だが、あるニュースサイトで、「どうしても打つ場所が分からない場合は声を出して読んでみる。読んでて文が切れる所があったら、そこに点を打てば大抵OKです」というコメントが書いてあって、ありゃりゃ、この人は本文を読まずにコメントしてしまったのだな、と思いました。←「と」の前にテン
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非常の勉強になります。
学校などでは、あまり教えてもらった記憶がない気がします。
自分がサボっていたせいでしょうか?
文章書き見習いのようなことをしているので本文は勉強になりました。
ただ、例文の改変は違うように思います。
原文では「代表団がついたとき」が一九七四年の暮れであるという意味ですが、改訂文では「休戦協定がむすばれ」たときが一九七四年の暮れであるという意味になっており、若干意味が変わってしまっているのではないでしょうか。
一つだけ気づいたこと。本多氏の原文では「一九七四年の暮れに」が「ルアンダの空港についた」にかかっていますが、改善後は「休戦協定がむすばれ」にかかってしまっていますね。
げ!コメントを読んでなかった。消したい。。。
(↓改善後)
げ! コメントを読んでなかった。消したい……。
「圏外からのひとこと」のessaです。
前の記事(書きたいことを「あえて書かない」エディター思考)にトラックバックをしたつもりが、ひとつずれてこのエントリーに入ってしまいました。(しかも、二度打ち)
すみませんでした。
この記事も面白かったですけど。
本多氏の本からの引用ですが、改変後のも実は本多氏の本での修正案と同じになっています。つまり、休戦になったのも空港についたのも同じときだったようです。細かい話ですが。というかそれ以前にこれ、日本語の発想というより、英文和訳的なにおいのする文章なので、修正後もあまりいい文章とは思えないのですけどね。
「日本語の作文技術」に従えば、例文は
ポルトガルとのあいだに休戦協定がむすばれ解放闘争初期からの指導者の一人ルシオ・ララにひきいられた代表団がMPLA指導部の第一陣として一九七四年の暮れにルアンダの空港についたとき(、)五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこみ(、)ララ同志をかついでルアンダの中心へむかった。
最低で(、)が1個で済むかと思います。つうか、
うまいひとなら(、)無しで済ませられるはずです。
「休戦協定がむすばれ」のあとにはテンは必須だと思いますし、テンがなければいいというものでもありません。むしろ、こんな長文は悪文なので、私なら、
1974年の暮れに、ポルトガルとのあいだに休戦協定が結ばれた。そして、MPLA指導部の第一陣としてルシオ・ララ率いる代表団がルアンダに到着した。ララは、解放闘争初期からの指導者の一人である。この一行が空港に到着したとき、五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこんだ。そして、ララをかついでルアンダの中心へむかった。
とやりますね。また、連用形動詞の後の「、」抜きはやっぱり気持ち悪いです。なお、「日本語の作文技術」は参考になる部分も多いのですが、やはり「ホンカツ流」という部分も多いと思います。私も自己流といえばそうですが。
勉強になりました。
自分のウェブログを見直したら、句読点を打ち過ぎなのに気が付きました。
たいていは自分が話している通りに書いているつもりなんで、句読点もその通りに打っているはずなんです。ということは、わたしは普段無意識に句読点を打ちまくりながら話しているのかなぁ?
…と、そんなことを考えちゃいました。
浪人したときに自分の文章が読点が多すぎることに気づいて、本多勝一氏の『日本語の作文技術』を読みました。
すると、恐くて読点が打てなくなった思い出があります。
大学時代文学部でしたが、日本語を教えるための授業に出たときに「日本語には正書法がない」ということを習いました。
要は句読点を打つルールははっきりと決まっていない。逆にいえば外国語では厳密に規定している国がある。(公文書等で)
曖昧にしておく美学ってものなんでしょうかね。
質問なのですが、私、小学校の時に習った記憶があるのですが、行末に読点は付けてはいけないと教えられたと思うのですが、それは間違いなのでしょうか?
是非教えて頂きたいので、よろしくお願い申し上げます。
行末、ということは原稿用紙の一番下ということですか?
行頭に読点(、)が来そうなときは、前の行の一番下のマスの中か、その下に書くのが基本的なルールです。なので、行末に読点はつけてもかまわないはずです。
文末が読点(、)で終わることは基本的にないと思います。
まつながさん、有難うございました。大変参考になり、また、勉強になりあました。かなり長い時間勘違いをしていたみたいです。助かりました。
よかったと思います。続いて頑張ってください
( )かっこの中の文章での最後の「。」まるは付けるのがただしいのでしょうか。付けないのがただしいのでしょうか。教えてください。
こんにちは。
すごく古い投稿にコメントしますが。
私の場合、「ひらがなばかりでよみにくそうだな」と思った場合は普段つけないような部分にも読点をつけます。
意味が取りやすく、読みやすく、かつ論理的に整合している文章を作るのには、なかなかパワーが要ります。
私は、読点の打ち方が日本語最大の“謎”であると考えて来ました。
「ポルトガルとのあいだに休戦協定がむすばれ、MPLA指導部の第一陣として一九七四年の暮れに、解放闘争初期からの指導者の一人ルシオ・ララにひきいられた代表団がルアンダの空港についたとき、五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこみ、ララ同志をかついでルアンダの中心へむかった。」について私の意見を述べます。
先ず私は、私が、正しいと考える文に訂正します。
「ポルトガルとのあいだに休戦協定がむすばれてMPLA指導部の第一陣として一九七四年の暮れに、解放闘争初期からの指導者の一人ルシオ・ララにひきいられた代表団がルアンダの空港についたとき、五万人からなるアフリカ人の群衆が空港をとりかこみララ同志をかついでルアンダの中心へむかった。」
第一の訂正は「むすばれて」です。
原文の「むすばれ」は「むすぶ」の同時形です。従って「むすばれ」は「むすぶ」と同時に「別の行為をする」事を意味しています。ここでの「別の行為」は「ついた」です。しかし「むすばれる」と同時に「空港につく」ことは起こりえません。従って、「むすばれ」を「むすばれて」に変えることが必要です。この「むすばれて」の「て」には、「後に」という意味が有ります。
従って原文は「休戦協定が結ばれた後に代表団が空港についた」事に成ります。
次に、この「むすばれて」が「ひきいられた」に係らない理由です。それは、「むすばれて」と「ひきいられた」の間に読点(「むすばれ」と「解放闘争」の間に在る読点)が打たれているからです。
言語には、近くの言葉と言葉が関係を持つという法則が在ります。この法則を打ち砕くのが読点の役割です。
第二の訂正は、「とりかこみ」と「ララ同志」の間に打たれた読点の削除です。
ここでは「とりかこみ」と「かついで」と「むかった」が関係しています。従って、読点を打つ事は誤りです。ここでは「とりかむ」と同時に「かついだ」のです。そして其の後に「中心へ向かった」のです。
以上については「読点の、正しい打ち方(円山万治著)」を参考にしました。
第三の訂正は、平仮名表記を漢字表記する事です。例えば「むすばれ」を「結ばれ」に書き換えます。
日本語は英語のように「スペース」を必要としません。
英語の文字はアルファベットのみです。従ってスペースが必要になります。
日本語の文字は漢字と仮名です。漢字の後に平仮名が続いて一つの役割を果たしています。
最後に原文の主文のみの、正しい表記をします。
「ポルトガルとの間に休戦協定が結ばれてMPLA指導部の第一陣として一九七四年の暮れに代表団がルアンダの空港に着いた時にアフリカ人の群衆が空港を取り囲みララ同志を担いでルアンダの中心へ向かった。」
私は、多くの人が句読点に関心を持っている事を知って喜んで居ます。
参考になりました。
サンキュです。
はじめまして 句点も読点も29年間生まれてから一度も文章につけないで文章をつなげて書いてきました。 そして昨日掲示板に書いた後次の人のコメントを見ると句点も読点も付けないで書くのかよ?と言われやはり気になったので書きました。こんな29歳の私ですがよろしくお願いいたします。
『引用の「と」の前か後か、どっちにいれますか』についてですが、引用の「と」は助詞ですから、原則として他の語ないし語句の後に付けるのが基本ではないかと思います。たしかに、例示にあるような、カギかっこの代用として読点を用いるような場合には、「と」の前に読点を入れることも誤りとはいえないでしょうが、やはりそれは『例外的な使用法』のように感じます。少なくとも、私が知る限り、文芸作品等は別として、報道文や解説文等で、引用の「と」の前に読点を入れている文章はあまり目にしません。いかがなものでしょう?
非常に参考になりました。ありがとうございます。
ただ、●その他のポイントでの「あと、……」という接続詞の使い方に少し違和感を覚えます。僕もたまに使ってしまうのですが、みなさんはどう思われますか?
句読点にはルールは無いと聞きますが、
以下のように「の」の後ろに句読点を打つ方がいて、
非常に違和感を感じています。
①「私の、名刺」
②「飛行機での、旅行」
私自身、少々読みづらくストレスを感じてしまうので、
一度、その方に指摘しようかと思っているのですが、
皆さんはどのように感じられますでしょうか?
その方は40歳代半ばの方ですが、世代によって異なる
ものなのでしょうか?
①「私の、名刺」
②「飛行機での、旅行」
この例では読点は要りません。しかし次の例では読点が必要です。
①ー1 「私の、名刺が入っている鞄」
ここでは「私の鞄」であって「名刺が入っている鞄」です。
②-1 「飛行機での、旅行に関する話」
ここでは「飛行機での話し」であって「旅行に関する話」です。
この区別が曖昧にされているのが現実です。
私は、正しい日本語を普及させる為に頑張ります。
あちゃーー。
やっちゃいました。
「飛行機での話し」では無くて「飛行機での話」ですね。訂正します。
正直に申しますと私でも『読点』の打ち方は難しいです。必ず見直します。