翻訳ソフトを活かす法 [もの書きのソフト談義(3)]
あまりにも期待されすぎているがあまり、実際に使った人から「あんなものは使えない」という烙印を押されがちなソフトがある。翻訳ソフトとOCR(スキャナで読み取って文字変換するソフト)がその代表だろう。周囲の人からは「訳になってない」「誤字ばかりだ」という批判をよく聞く。
しかし、過度の期待をかけさえしなければ、どちらも非常に便利で、作業効率を飛躍的に上げてくれるソフトなのだ。実際、私の英語能力などはたかが知れているのだが、翻訳ソフトとタッグを組むことで、ケンブリッジ留学者より速く訳を仕上げたこともある。どうすればそれが可能になるのか。今回は、翻訳ソフトの使い方についてちょっと書いてみたい。
翻訳ソフトについて、念頭に置くべきことは、この一点だ。
「翻訳ソフトは、日本語の下手なガイジンだ」
決して流暢な通訳を期待してはならない。ぺらぺらしゃべれるわけでもない。メチャクチャな訳もしてくる。しかし、それでも全部外国語というのよりはずっと「参考」になる。
訳してもらうのではなく、意味をとるための「参考」だとすれば、こんなに心強い味方はいない。
日本語の下手くそなガイジンとつきあわなければならないとしたら、あなたはどうするだろうか。そこには二つの方法があるだろう。
●日本語をもっと教え込む。
●相手の下手な日本語の癖をこちらが理解する。
翻訳ソフトでも同じである。最近のソフトは語彙力が増えたとはいえ、万能ではない。よく出てくる言葉を辞書に登録し、自分の訳したいジャンルの文章の決まり文句を登録する。そうしてはじめて、翻訳ソフトはちゃんとした訳語を返してくれる。
もう一つは、翻訳ソフトの癖を知ることだ。こういう表現のときはこんな訳文を出力してくる、というパターンがわかってくると、たどたどしい口調であっても言いたいことはわかるようになってくる。
翻訳ソフトとツーカーの仲になれば、これほど便利なものはない。
日本語の下手くそなガイジンに手伝ってもらって書類や文章を作るとしよう。そのとき、仕上げをそのガイジンに任せるだろうか。仕上げはやはり、日本語のネイティブである自分がやるべきだ、と考える人が多いのではないかと思う。
翻訳ソフトも同じである。それはすぐに使える訳文を提示してくれるのではなく、単語の置き換え、文意の参考を示してくれるにすぎない。そこで理解した「意味」を日本語の文章に整形する作業は、自分自身でやるべきである。
翻訳ソフトに最初から最後まで任せるのは、日本語の下手なガイジンに書類を全部任せるのとまったく同じこと。あまりにも危険である。
もちろん、翻訳ソフトの精度や使い勝手は年々向上している。結構日本語のしゃべれるガイジン並になってきているのかもしれない。ときどきは修正する必要のないきれいな訳文を出してくれる。しかし、完全ではない。やはり、翻訳ソフトに万能を求めないことだ。
こんな認識で翻訳ソフトとつきあうならば、それは本当に効率を上げてくれる。辞書を引く回数も結構省ける。長文になると構文を理解していない場合も多いが、原文と見比べていけば非常に参考になるものだ。
そして、最後のポイントは、「和訳の場合は、外国語の力より、国語力」ということである。実は私自身、大学入試のときは国語力で英語の点数を稼いでいたように思う。単語がわからないところがあっても、前後の文脈から読み取り、日本語を仕上げれば、結果的にそれが正解となる。
英語の意味がわかったとしても、さて、それを日本語でどういうか、ということがわからなければ詰まってしまうことになる。日本語の下手な英国人の場合、英語の能力は完璧だろう。しかし、日本語能力が劣っているがゆえに訳せないのである。だから、翻訳ソフトが使えるかどうかは、語学力よりも国語力だと考えるといいだろう。
翻訳の仕事をしている人に聞くと、完全なバイリンガルでない限り、日本人は和訳はできても英訳はできない、という(英語に限らない話だが)。自分の国の言葉に訳すことはできても、逆はできないというのだ。
では具体的にどのソフトがいいか、という話になるのだが、私自身もあまり比較対照しているわけではないので、これ、と断定するわけにはいかない。おそらく決定的な差はあまりないと思うので、結論としては「手に馴染んだものが一番の友」ということになるのだろう。
そこで、参考までに私の使っているソフトを紹介しておく(じつは手元にあるのは古いバージョンなのだけど)。
【英語】
・LogoVista X PRO [英×日] Ver.3.0
・LogoVista X PRO [英×日] Ver.3.0 専門辞書フルパック
他社のでも悪くないと思うのだが、どうも手に馴染んでしまったのでロゴヴィスタ以外には手を出していない。ただし、LogoVista Xシリーズは高いので、あまり使用頻度が高くなければ、同社の「コリャ英和!」シリーズもいいかもしれない。
・コリャ英和! 一発翻訳バイリンガル Ver.5.0 フルパック
・コリャ英和! 一発翻訳バイリンガル Ver.5.0 + OCRソフト
・コリャ英和! 一発翻訳バイリンガル Ver.5.0
・コリャ英和! 一発翻訳バイリンガル for Mac Ver.3.0 専門辞書バリューパック
・コリャ英和! 一発翻訳バイリンガル for Mac Ver.3.0
【中国語】
・j・北京 V4
・j・北京 V4 アカデミック
・蓬莱 Ver.4 for Windows
j・北京の訳文は、excite中国語翻訳と同じ(同じ翻訳エンジンなので)。ただし、ソフトの方にはピンイン表示機能、辞書登録機能などがついているので重宝。蓬莱も試したが、個人的にはj・北京の方が手に馴染んでいる。
もの書きのソフト談義シリーズ (1)テキストエディタ [2003年11月04日]
(2)文字入力あれこれ [2003年11月21日]
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すみません「日本語の下手な外人」と言うのは分かったのですが、たとえば日文を書いて中文に翻訳します、それを再度逆に行った場合に、日文はめちゃめちゃになりますよね。
それを日文が読めるように添削して出来た中文は意味が通じるのでしょうか?
「翻訳ソフトは、日本語の下手なガイジンだ」
まさにその通りだと思います。
最近、関連エントリーを書いていたので、トラックバックさせていただきました。
>non猫さん
きれいな日本語に訳される中国語は、多分、日本風の思考に基づいた中国語だと思います!
>あたしンちのおとうさん
使ってらっしゃるソフトは何かわかりませんが、改行を必ず行末にしてしまうというのは困りますね。
専門用語辞書が高いという話ですが、頻出語は自分で登録しまくる方が適切な訳になりやすいかもしれません。
私が期待している翻訳ソフトがあります。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0401/21/news079.html
これなんですが発売されたら色々と
試してみたいですね。
@niftyの翻訳ツールも結構使えますよ。
主語を明確にするといい感じに翻訳できると思います。
実際にそれでクロアチア人と友達になれました。
やはり最後は国語力が大事なんですね。
言葉のニュアンスというものは難しいそのことを感じました。