「アジア盤《も》買いたい」のはダメなんですか?CD輸入権による音楽鎖国

社団法人 日本レコード協会|日本の洋楽ファンの皆様へ」という声明が発表されました。こういうものを発表せざるをえないほど、音楽ファンの声が高まっていると見ることもできます。しかし、その内容はまったく納得できません。うっかりだまされちゃあだめです。その理由は……

2004年5月 8日16:26| 記事内容分類:著作権, 音楽| by 松永英明
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現在、国会で「商業用レコードの還流防止措置」を導入する著作権法一部改正法案が審議されており、この法案に対し、一部の方々から「欧米諸国からの洋楽直輸入レコードが買えなくなるのではないか」との不安の声が寄せられております。しかし、私たちは、欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に何ら不利益、不自由を与えることなく、今後ともこのような状況を維持し、さらに多くの洋楽レコードを提供してまいりますので、ご安心いただきますようお願い申し上げます。

社団法人日本レコード協会
ユニバーサル ミュージック株式会社
東芝EMI株式会社
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
株式会社BMGファンハウス
日本レコード商業組合

■アジア盤はやっぱり買えない!

 やっぱり、中国や韓国やアジア、その他「欧米諸国以外」からのレコードは買えなくなるんですね。いや、「アジアからの還流防止」がもともとの法律の趣旨ということになってますから当然といえば当然なんですけど。中には「洋楽(欧米の音楽)が手に入るってことになるんだったら、俺には関係ない」という人もいるとは思うんですが、アジアン・ポップスとか民族音楽好きの私にとっては逆に切実な問題です。

■日本レコード協会は何も確約していない

 日本レコード協会の文面は、一見、誠意ある対応を見せようとしているようにみえるものの、実は何一つ約束していない。まあ、書いた人もうまいなあ、と感心しているのだけど。
 まず、論点が「欧米諸国からの洋楽直輸入レコードが買えなくなるのではないか」に限定されています。つまり、逆にいえば、
 ・欧米諸国以外からのものについては買えなくなる ということが明記された、と考えていいでしょう。

 次。「欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達」だけが対象。音楽ファンを分断しようと考えているんでしょうか。ちなみに私は「半分だけ」該当します。つまり、欧米のも、そうでないのも楽しんでるからね。

 その次。「……に何ら不利益、不自由を与えることなく、今後ともこのような状況を維持し」。ここがくせ者。「現状をそのまま維持する」とは一言も言っていません。言い換えるなら「海外でプレスされたものが市場に並ぶという状況については、方法は別にして、維持しますけどね」ということです。
 わかりづらいですか? つまり、前のレポートにもあったとおり、洋楽海外盤の輸入については、メジャー企業の日本法人が輸入するルートと、その他のルート(並行輸入)があったわけです。
 で、輸入権を行使して、この声明を出した五大メジャーなどが「自分たちのルートだけ」を確保し、それ以外の輸入をストップさせることだって可能だし、それは決して「不利益・不自由を与えることなく」「このような状況を維持」するということに対してウソにはならないわけです。
 つまり、CDショップに洋楽海外盤は並ぶ。でも、洋盤専門店とかの独自ルートはつぶせるんです。

 そして、最後。「さらに多くの洋楽レコードを提供してまいります」ということなんだけど、別にこの五大メジャーががんばるかどうかは関係ないでしょう。つまり、海外洋楽レーベルの日本支店が「さらに多くの」っていうのは筋違い。たとえば海外でどんどん発売されて、そこに規制がなければ、放っておいてもAmazonとか経由して「さらに多くの洋楽レコードを提供」してもらえるわけだから。
 では、何を努力するというのか。つまり、「本国発売分をたくさん日本法人で輸入するから、五大メジャーから買ってね」「あるいは日本盤出すからそれでいいよね」ということにほかならないわけです。

 だから、うがった読み方をするならば、「欧米盤以外は買えなくするよ」「並行輸入禁止にしても、メジャーからバンバン流すから、それを買えばいいんだよ」というふうにも受け取れます。

 日本レコード協会さん。もしそうでないというのならば、こんな曖昧な、逃げ道の残る表現ではなく、「すべての海外輸入盤に対して、一切の輸入権を行使しません」と明記してください。さもなくば、最初から何も言わないでください。

■「還流防止」そのものが不要

 そもそも、アジアからの還流がほとんど問題になっていないレベルであるというのは、すでに数によって証明されているとおり。つまり「還流防止」そのものの必要性がまったくないということです。

 そして、アジア盤好きの人は(私も含めて)
・日本盤を買って、なおかつ海外盤もほしい
・日本盤がないから、海外盤がほしい
 のどちらかであって、
・安いから、日本盤ではなく海外盤を買う
 というのは実はファンというわけではない、というのが実態。この3番目のパターンの少数の人たちを防ぐために、純粋なアジア音楽ファンがどうして泣かなければならないんでしょうか。

 それとも、アジア盤好きはことごとくみんな、日本のCD市場を脅かす犯罪者なんですか? 台湾版や中国版や韓国版のものをほしいと思うのは、著作権の侵害なんですか? そこんとこはっきりさせてほしいです。
 わずか68万枚の還流盤、しかも「日本盤より安い」からという購買動機はその一部にすぎない。それを防ぐことに何の意味があるんですか?

 そういうわけで、前回と同じ結論ですが、「よいものを、納得できる価格で販売する」「明らかに違法な海賊版を現行法できちんと取り締まる」という真っ当な努力を怠っておきながら、ファンを潜在的に犯罪者扱いしたり、市場の敵扱いするような企業は、とうてい信用できません。


【関連】
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2004年5月 8日16:26| 記事内容分類:著作権, 音楽| by 松永英明
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The Trembling of a Leaf -「音楽障壁」粉砕編- - 火消しは走れど…… (2004年5月 8日 17:55)

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http://kotonoha.main.jp/2004/05/08riaj.html 大体俺のこの問題についてのスタンスはこの記事と似たもんです。株キチガイな人とかからたまに音楽業界トップの人の話を聞くんですが、彼等を想像す... 続きを読む

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「日本レコード協会は何も確約していない」というけれど、
法律が出来たら、法律は法律だから、
どんな口約束があったとしても反故にされる、
と思っていたほうがよろしいかと。
裁判所はどんな悪法でも、法律の文面通りに仕事をします。
日本レコード協会から妙な確約が出てきても信用するのは危険です。

↑そういう意味で書いてますが?

ん?アホレコード協会のこの宣言文を読むに付け、

>、さらに多くの洋楽レコードを提供してまいります

は「日本版」の洋楽レコードを提供するってことじゃね?
「輸入した海外の洋楽レコード」じゃなくて、「日本の会社が作り直した洋楽レコード。」だと思った。

海外のマイナーミュージシャンのCDはレコード協会が日本版を作って売ったりするんだろうか?
もちろん値段を高くしてね。 w

音楽や著作権って思ったより闇が深いなぁ・・・。
マスコミと著作権屋は小泉政権でも立ち入れない
最後の聖域なのかも知れない・・・。

DVDだと、「リージョン」というものがあり、地域によって再生できなかったりするワケですが、
CDでもそういうのをつければいい。ダメならそれもよし。

DVDオーディオやSACDにはすでにリージョンコードが設定されています(が秘密にされている)
私はリージョンコードそのものが囲い込みだと思うので反対です。

消費者無視、企業優先の法案が通ってしまいました。法案が通った理由として「著作権を守った」みたいな書き方をしていたが、アジア版が安い理由は「企業努力を何もしないで、現地の物価に合わせる為にアーティストの権利を削った結果」であることが全然言われていない。
芸術的権利は世界と統一規格でありどんな事があっても侵害されない「これが著作権の保護」ではないか!!を完全に無視している。
はっきり言って、企業努力の無いレコード会社↓、CDを買った事もないのに法案通過させた政治家↓、一方通行のHPの日本レコード協会↓、そして著作権(作詞・作曲)が低められていることに怒らない音楽家↓↓。

このブログ記事について

このページは、松永英明が2004年5月 8日 16:26に書いたブログ記事です。
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