Deutsche WelleのBOBs=ベストブログ 国際ウェブログ大賞2004
ドイツのラジオ局ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)が世界各国のブロガーやジャーナリスト、メディア学者を審査員として選んだ「ドイチェ・ヴェレ・ベストブログ国際ウェブログ大賞2004(The BOBs - BEST OF THE BLOGS - Deutsche Welle International Weblog Awards 2004)」が発表された。
ブログはマスコミに対抗するメディアになるか否かとか言ってる人は、とりあえずここで受賞したジャーナリスティック・ブログをチェックしてからものを言ってほしいものである。
■国際ウェブログ大賞 受賞ブログ
ドイチェ・ヴェレ2004国際ウェブログ大賞受賞者決定! BOBsの審査員は1100以上のノミネートの中から11カテゴリーでの受賞者を選んだ。審査員賞は、ブログ専門家の国際的なパネラーによって与えられた。審査員によるベストウェブログ大賞を勝ち取ったのは、中国のブログ「18摸 狗日报(犬ニュース)」である。さあ、今年のベストブログを見てみよう!
各カテゴリーに与えられたユーザー賞も忘れてはならない。ユーザーは好きなブログについて6万票を投じた。ユーザー賞受賞者の結果も出ている。ベストブログユーザー賞はブラジルのブログ「por um punhado de pixels(一握りのピクセル)」。
BOBsは the Best of the Blogsの略である。ベストウェブログ、ベストトピック、ベストデザイン、ベスト新機軸の国際賞に加えて、アラビア語・中国語・英語・ドイツ語・ポルトガル語・ロシア語・スペイン語という7言語におけるベスト・ジャーナリスト・ブログもそれぞれにBOBsは賞を与えた――それはドイツWelleで扱っている言語である。
■ベストブログ大賞
18摸 狗日报(犬ニュース)
このウェブログは犬についてである。犬が苦しんでいる様子だけでなく、犬の売春のように奇妙でおかしな犬の生活が書かれている。英国では人類最良の友が主人と同じように贅沢をしている。
犬新聞では、「攻撃的な小さなヘビ」の話題は、西洋と東洋の犬の不平等を示すためにある。中国では人権について語ることは不可能だが、このウェブログは2002年から犬権について語り続けている。このブログは中国の犬が味わっている苦しみや虐殺を読者に伝え、西洋に置ける犬の生活と比較する。西洋では犬は風呂に入れてもらい、手編みのセーターを着せられるなど、中国の多くの犬にとっては夢のような状態にある。ペットの扱い方についての対比によって、BOBsの審査員・木子美が語ったとおり、「わたしたちの世界は平等な世界ではない」ことが誰の目にも明らかになる。
■ベストトピック部門
El Hombre Que. Comia Diccionarios (辞書を食べた男)
「リファレンス本を食べた男」というセッションはインターネット文化そのものを比喩している、とBOBs審査員ホセ・ルイス・オリフエラ(José Luis Orihuela)博士は述べた。ランダムな知識の断片は、ウェブの相互接続性の典型を示すものである。このブログの単純だが印象的なデザインで全体表示され、ウェブログはタイムスタンプと固定リンクを持っていなければならないという常識を覆す。
「リファレンス本を食べた男」はすでにスペイン語圏ブロゴスフィアではカルト的な地位を確立しており、それ以外の人もこれを見れば、数多くの言語からとられた小ネタニュース、引用、ゲーム、詩、本の断片が世界に公開されていることは一目瞭然だろう。奇妙なことに、よく知っているものもあるだろうが、非常に多くのものは、広範な知識を扱っているこのダダ風サイトを見ない限り、一生知ることもなかっただろうと思えるようなものだ。
■ベストデザイン部門
トピックごとに横に、トピック内では時系列順に並べられた「La Malarosa」は、何百万という他のブログと違って「左から右」と「上から下」のスクロールの組み合わせを実現している。「La Malarosa」の男性のHombreと女性の共同ブロガーのMouseは、ブログエントリーを毎日のそれぞれの生活から書くようにしている。
このブログの卓越したデザインは、主流のソフトウェア・プロバイダでダウンロードできるようなものではない。「La Malarosa」のデザインは、読者の興味をそそる写真とスケッチを絶妙に使っている。
「このウェブログは魅力的でプロのデザインだ」と述べたのは、ふだんはブログナビゲーションのトリックにまどわされたりすることのないBOBs審査員コンスタンティン・クライン(Konstantin Klein)である。
■ベスト新機軸部門
グループブログ「Domino - cover by cover」は、ドミノ倒しができるくらいの厳選した音楽コレクションを持っているブロガーたちがアントヴィル・ウェブログ・ソフトウェアを手にした結果生まれたものである。アントヴィル・ウェブログ・ソフトウェアと、幅広い音楽コレクションを持っている仲間たちが出会ったとき、そのコレクションでドミノをしようというアイデアが生まれた。BOBs審査員コンスタンティン・クラインは「これは純粋に新機軸だ。新しい見かけの新しい目的のために、新しい技術を使っている」と語る。
コンセプトは詳細よりも重要だ――そしてハッカーは文書内容に責任はない――ということを証明しているこのゲームのルールは、まだ完全には固まっていない。構造が欠如していても数十人のユーザーたちは音楽コレクションをひっくり返すのをやめず、ゲームを発展させるのによさそうだと思ったジャケットのデジタル写真を撮り続けている。大事なのはコンセプトで、マニュアルなんか不要――ついでにいえばハッカーにとっては何を扱うかなんてどうでもいい――ということなのだろう。ゲームのルールは完全には決められていない。列につながられると思えばそれでいい。枠にはめられることなく、数十人のユーザーたちは、自分の音楽コレクションの山をひっくり返し、ジャケットのデジタル写真を公開し続けている。((suika-tohさんによる指摘を受けて訳文ちょいと変更))
■アラビア語ベストジャーナリスティック・ブログ
25歳のクウェート人は社会・政治についての話題を主に扱うこのブログで鋭い視点を世に出している。Moodless.netはアラブ世界が直面している問題を読者に投げかけ、文化的な対話を促す。そこでは、ウェブログそのものがコメントと意見を発表する場として使われている。
Moodless.netは現在の問題について考えているが、他のブロガーによるポエムや文学的な文章がゲストとして書き込まれることもある。
■中国語ベストジャーナリスティック・ブログ
■英語ベストジャーナリスティック・ブログ
このカテゴリーでBOBs審査員はブロゴスフィアで最も有名で熟考する人物のものを選んだ。ローレンス・レッシグはデジタルメディア問題の専門家であり、ウェブログを使って、政治・社会に関して論争を招くような意見を提出する。レッシグ自身のブログエントリーは、短くて思慮に富む傾向がある。来訪するブロガーやユーザーのコメントは、その内容が面白く、最新のものであることを証明している。
審査員は、このスタンフォード大学法学教授がサイバースペースとデジタル世界の発展について有している権威に加えて、レッシグの辛辣な発言と著作権についての議論を持ち出す方法に感銘を受けた。
■ドイツ語ベストジャーナリスティック・ブログ
Medienrauschen(メディア騒音)
トマス・ギゴールド(Thomas Gigold)の始めたグループブログ・メディエンロイシェン(Medienrauschen=メディア騒音)は、あらゆる形態のメディアについて日々コメントしている。15人のウェブログ著者チームは、生計を立てている分野――テレビ、印刷メディア、インターネット――に注意を向けている。
メディエンロイシェンは主にドイツのメディアで起こっていることを長期的に見ているが、国際的なメディア世界で起こっていることも見守っている。
ニュースメーカーについて扱っていないときでも、メディエンロイシェンは印象的だ。何が重要なのか、なぜ重要なのかというジャーナリストの重要な視点をもって、時事的な問題を見ている。メディエンロイシェンのエントリーは、13のRSSフィードによって呼び出すこともできる。
■ポルトガル語ベストジャーナリスティック・ブログ
「ポント・メディア(Ponto Media)の中のブロガー、アントニオ・グラナド(António Granado)は、この現代の我々が生きているメディア革命の中で面白いと思う人に対して適切なリンクを多種多様に広く投稿している」と語るのは、BOBs審査員でブロガーのホセ・ルイス・オリフエラである。「ポント・メディアはジャーナリスト、メディア研究者、学生、ブロガーが読まなければならないブログだ」。
ポント・メディアはメディア、ブログ、インターネットについて書いている。グラナドは自分のウェブログを使って、世界中のメディアで起こっていることを指摘している。ブログの日々のエントリーは、「Público」土曜版でも印刷されている。このブログの特徴の一つは読みやすさにある――たとえポルトガル語がわからなくても。これは、ドイツ人審査員イェルク・カンテルがいつも読んでいると言った唯一のポルトガル語ウェブログでもある。ポント・メディアはコインブラ大学の「ciberjornalismo(サイバージャーナリズム)」課程の一部であり、ポルトガルでは非常に人気が高い。
■ロシア語ベストジャーナリスティック・ブログ
Труд сделал человека. Труд может уйти.(ジャーナリスト・ナターシャ・モズゴヴァヤのブログ)
このジャーナリスティック・ブログはロシアで公開され、テロリズム、入国審査、中東紛争といった話題を主に扱っている。その話題をこのブロガーはロシアとイスラエルで発行されたヘブライ語出版物でカバーしている。テルアヴィヴで生活し、働いているジャーナリスト、ナターシャ・モズゴヴァヤ(Natasha Mozgovaya)は、新聞のコラム、インタビュー、レポートで書く内容のプレビューとしてウェブログを使っている。ブログは、公刊されない考え、発言、独占的な写真レポートも掲載されているが、その一部は後に出版される。このウェブログの資料は検閲もされず、編集もされないまま並んでいる。
ユーザーはこのブログを対話型プラットフォームとして使うこともできる。読者はコメント、意見、訂正、事実の追加を元記事に加えることができるからだ。多数の読者のインプット――このウェブログには2100人以上の登録者がある――は、モズゴヴァヤの伝統的印刷・出版メディアでの仕事のためのインスピレーションを生み出したり、土台となったりしている。
■スペイン語ベストジャーナリスティック・ブログ
ジャーナリスト・フアン・バレラ(Juan Varela)の書くPeriodistas 21は、ジャーナリズムとメディアについてのブログである。Periodistas 21はよく書かれており、伝統的なメディアでも情報源としてよく引用されている。加えて、他のメディア機関の報道前に、独占的なスクープニュースを発表することがよくあるという事実もあり、BOBs審査員がこのブログに感銘を受けたのは当然といえる。
Periodistas 21は「ジャーナリスト」と「ブロガー」の橋渡しとなり、双方のグループから尊敬されている。
■審査員
2004ドイツWelle国際ウェブログ大賞は、ジャーナリスト、メディア専門家、ブログ専門家による国際審査員が審査した。10人の審査員はノミネートサイトすべてについて指名した。
- モハメド・アリ・ファルハト(Mohammed Ali Farhat)
- レバノンの詩人・ジャーナリスト。1989年から国際新聞アルハヤット(ALHAYAT)に勤務。
- 木子美(Mu Zimei)
- 中国人作家、コラムニスト。2003年、オンラインのセックス日記で国家的に有名になった。
- マイラ・ハント(Myra Hunt)
- 2003年からBBCワールドサービスニューメディア部長。組織のオンラインサービスの責任者である。BBCワールドは43の言語で世界1億5000万人に配信するオンライン・コンテンツを配信。
- イェルク・カンテル(Jörg Kantel)
- ベルリンのマックス・プランク研究所コンピューター部長。2000年に作ったSchockwellenreiterサイトは、ドイツでも人気の高いブログとなっている。
- コンスタンティン・クライン(Konstantin Klein)
- ドイツWelleの前ワシントン通信員。現在ベルリンのDW-TVで編集者として働いている。個人的には、ジャーナリズム・ブログBatterien nicht enthalten: The Very Large Orangeを運営。
- トマス・N・ブルク(Thomas N. Burg)
- オーストリアのクレムスにあるドナウ大学ニューメディアセンター長。ウェブログ会議「BlogTalk」の組織者として、ブロゴスフィアでよく知られている。
- アンドレ・レモス(André Lemos)教授
- ブラジルのバヒア連邦大学でサイバーカルチャー研究国際センター長。「サイバー法王」としての評判は南米中にとどろいている。
- アントン・ノシック(Anton Nossik)
- 1966年生まれ、有名なロシアのインターネットポータルLenta.ruの長。Газета.Ru、Вести.Ru、NEWSru.comなどの成功したロシアサイトの共同創設者でもある。
- イグナチオ・エスコラル・ガルシア(Ignacio Escolar García)
- オンライン・ジャーナリストのためのJosé Porquet賞を受賞した26歳。Tele 5、Gsmbox、Geo y Baquiaなど数々のスペインメディアで働いている。
- ホセ・ルイス・オリフエラ・コリバ(José Luis Orihuela Colliva)博士
- 通信科学者、ニューメディアの専門家。
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"Domino"がおもしろい。しかし、松永氏の翻訳では意味がうまく伝わらないと思うので、それを補うように意訳してみた。
「幅広い音楽コレクションを持っている仲間でドミノをしようという、ただそれだけのためにカスタマイズした結果がこれ。大事なのはコンセプト、マニュアルなど不要ということなのだろう、ゲームのルールは完全には決まっていない。列につなげられると自分で思えば、それでいい。ひたすらジャケットの写真を並べていく。
suika-tohさん、ありがとうございます。ちょっと訳文をいじってみました。
中国じゃ、みんな冷ややかに受け止めているよ。だいたい、審査員のうち1人の中国人(この人選がまた強烈なわけだが)を除いて、中国語理解できたの何人いたわけ?
http://blog.cnblog.org/archives/2004/12/oeoneee.html