情報源明記:個人ニュースサイトから伝わる美しいウェブ作法
アクセス解析でリンク元をたどって見たところ、STAR LIGHT PARADEという個人ニュースサイトに
メタルバンドのロゴフォント集 (RinRin王国)
ちょっと懐かしく思ってしまいました。
とあった。このメタルバンドのロゴフォント集というのは非常に面白いものだが(メタルファンにとって)、それ以上に興味深いのは「この情報がどこから流れてきたか」だった。STAR LIGHT PARADEはRinRin王国でこのリンクを見つけたという。そこでRinRin王国へ行ってみると、今度は
とある。……そこでこの情報の流れをさかのぼってみることにした。そこには、ブログ界/個人ニュースサイト界の見えざる情報の網の目が存在していた。
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(旧: )
■個人ニュースサイトの伝統
ネットで見つけた面白い「記事」単位へのリンク集を日々更新する「個人ニュースサイト」としては、日本では「【あ!ネット】連日更新!!日本のお気楽スタートページ!!」が嚆矢だろうと思う(現在更新停滞中)。
その後、個人ニュースサイトは、コメントやコラム中心の「裏ニュース!」型と、「俺ニュース」に代表されるリンク列挙型の二つのタイプに分かれるようになったように思う。どちらも大手個人ニュースサイトでは「どこでその情報を知ったか」を明記する傾向がある。特にリンク列挙型では、
・該当記事への直リンク(直接知った情報源サイト)
というスタイルで記述するのが「お約束」となっている。
ちなみに、欧米のウェブログでも「フィルタ型」と呼ばれるスタイルのものがあって、これは個人ニュースサイトそのものといっていいだろう。日米でそれぞれ独自に別の名称で成長したいとこのようなものだ。そして現在、日本でもいくつかの個人ニュースサイトはウェブログツールを使うようになり、また個人ニュースサイト型ブログを始めている人も少なくない。
自分の面白い記事を、メモしやすいツールでウェブ上に記録しておくのは便利である。自分自身もはてなダイアリーでは何割かがそんな感じの「URLメモ」になっている。
■情報の源流をたどる
さて、この「情報源明記」というすばらしい作法のおかげで、今回は「日本で最初に紹介したブログ」をつきとめることができたようだ。
- STAR LIGHT PARADE 02/06
- ↑RinRin王国 02/05
- ↑BRAINSTORM 02/05
- ↑ojakan.com 02/03
- ↑N.a.E 02/03_23:39
- ↑Going My Way: 憧れのバンドのフォント 02/02
古参ブログ「Going My Way」のこの記事には参照元がないので(おそらく独自に検索していて見つけたのだろう)、ここで打ち止め。つまり、kengoさんの2005年02月02日07時29分投稿の記事が源流となって、現時点で4日間にわたる「サイト間の情報の流れ」が生まれたわけである。
なお、BRAINSTRMやRinRin王国は参照数も多い個人ニュースサイトなので、おそらくはこれ以外にも多くの個人ニュースサイトへと情報の流れが枝分かれしていると思う。また、この流れの中にカトゆー家断絶などさらに大規模な個人ニュースサイトがからむと、枝分かれの規模はさらに大きくなるはずだ。
■blogmapで確認してみる
さて、「あるURL」を取り上げたブログがほかにもないか、ということを調べたいときは、blogmapが便利である。今回のフォントサイトのURLを入れて検索してみると、[BM]『RockRage: Music Band Fonts』に関する詳細情報ページに一覧が示されている。Going My Wayはなぜか拾われていない。
kengoさんより明らかに早い2/1にこのURLを記したブログは存在していない。同じ2/2に取り上げたブログは(閲覧可能なものはすべて)はてなダイアリーでの日記なので執筆時刻がわからないが、おそらくはkengoさんの記事を見たのだと考えられる。これらのダイアリーでは「参照元明記」の美しい伝統は受け継がれていなかったのが残念だ。
翌2月3日にブログ界(というかはてなダイアリー界隈)でこの情報が広まる。しかし、ブログ界隈でのURLメモ型ニュースサイトは、本当にメモ書きのつもりのようで、情報源が明記されていない(特にはてなダイアリー上のニュースサイトは、情報源明記率が低いようだ)。中には「有名ロックバンドのロゴのフォントがダウンロードできるサイトがありました」と、いかにも自分が検索して見つけたかのようにしれっと書いてあるブログもあって興ざめである。リンクはないものの、「色んな処で話題になっているバンド・フォントを試してみました」ってのはまだ良心的な方かもしれない。
■Going My Wayからの流れ
blogmapに拾われたブログの中で、Going My Wayから拾ってきたことを明記してあるものがあった。
- ぺお記す「Rockバンドのフォント:RockRage: Music Band Fonts(via Going My Way: 憧れのバンドのフォント)」
それから、酔生夢死では「穂積のブログにすごいのが載せてあったんでご紹介」と情報源が書いてあったのでたどってみる。
- MEMO「Going My Way: 憧れのバンドのフォントより」
やはりこれもGoing My Wayからの流れだった。
もう一つ、しゅがーはーと・ぶろぐ :これで、Rockな文章が書けるかも!?では「我楽さんところのエントリで紹介されたんですが、オォ!と思ったんでトラバさせてもらちゃいました」とある。たどってみると、
「Going my Way さんところで紹介されていました、憧れのバンドのフォント」とあって、またまたGoing My Way系であった。
不思議なのは、いずれもGoing My Wayにトラックバックされていないことである。
なお、我楽には一件のトラックバックがあった。つまり、ここからは二つに枝分かれしたというわけだ。
さて、Going My Wayのトラックバック欄には、その他のブログも発見された。
というわけで、ここまでの流れをまとめるとこんな感じ。
- Going My Way
- N.a.E→ojakan.com→BRAINSTROM→RinRin王国→STAR LIGHT PARADE→絵文録ことのは
- 我楽→しゅがーはーと・ぶろぐ&Icecream-net.com
- MEMO→酔生夢死
- スミルノフ教授公式プログ
- So Wh@t ?
- stabucky blog
■以前にも紹介されていたフォント集
Going My Wayへのトラックバックに「B.B.'sWebSpace::バンドロゴには印象的で秀逸なモノが多い」というものがあった。
via : フリーの英文フォントいっぱい @ sasapong's roomさん
Linkfilter.netさんで知った
よく見ると、これは2004.05.12。つまり去年にも「静かなブーム」があったらしい。残念ながら、このときはそれほど広まらなかったようだ。
なお、この去年の紹介サイトは、今回のとはURLが違う。今回のRockRageはロック関係のみ104個ほどのフォントだが、去年のEKNPは同じフォントも含めて各種1500フォントが用意されているようである(全部一括でダウンロードの手間を省きたかったら$4.95らしい)。というか、EKNPからロックバンド系だけ集めたのがRockRageらしい。
なお、sasapog's roomにはこんなバンド系フォントも紹介されている。
DaFONT :: Famous > Music (page 1/6)
(※補記。B.B.'sWebSpaceからGoing My Wayへのリンクはない――過去の関連記事からのトラックバックで「こんなのも前に書いてたよ」というお知らせをしたわけである。こういう場合は「相手へのリンクがなくても嫌がられないトラックバック」の例ではないかと思う)
■ザイーガからの流れ
さて、blogmapには、中継点として影響力あるもう一つのブログが拾われている。
ザイーガがどこでこの情報を拾ってきたかは不明だが、ここには5つのブログからトラックバックされている。つまり、5つに枝分かれして流れが広まっていったわけだ。
- 景清航海日誌:このフォントは面白い! &デスメタル~ミュージカル映画~一般教書演説について
- ヒョンヒョロ(談)
- ★Gullible Rock★ ~ガリブル ロック~
- おデブはんBLOG:フォント
- Daigaku Tukareru - Blog ver. - :いろんなアーティストのロゴのフォント!
残念ながら、このザイーガ系ブログ5件にはいずれもトラックバックがついておらず、この先の下流をたどることはできなかった。ただ、これらトラックバックを積極的に打ったブログは(はてなダイアリーを含め)いずれも情報源を明記していた。つながりを明らかにする場合と、単に自分のメモ程度のつもりで書いている場合の意識の差があるのだろうか。
■ブログ空間の暗黙の構造と力学
ブログ界や個人ニュースサイト界での情報の流れはもっと複雑な場合も多いが、今回はたまたま「源流をたどってみよう」と思ってやってみて、5ステップもかかってたどりついたのでなかなか面白かった。もちろん、複数のサイトで見ている場合もあるだろうし、はてなダイアリーの「話題のURL」やblogmapで見て知る場合もあるだろうが、今回はそこまでの広がりがなかったので、追跡も楽だった。
ちなみに、ネット世論・ネットのトレンドを生み出すアルファブロガー [絵文録ことのは]04-12/23の最後の引用の中で紹介されていたImplicit Structure and the Dynamics of Blogspace(ブログ空間の暗黙の構造と力学)という論文は、このようなブログ界の中での情報の流れの「網の目」について研究したものであり、非常に興味深い。そのうち、隙を見て訳したい。
そして、ブログ界の情報というのは、このような形で自然発生的に網の目が作られるところに醍醐味があるのだと思う。もちろん、そこには多くのサイトから引用されるアルファブロガー、あるいは大手個人ニュースサイトといった有力サイトが登場する可能性もある。もっぱら他のサイトを紹介することに専念する「フィルタ型/司会者型ブログ」も一定の数で現われるだろう(というか、個人ニュースサイト/孫ニュースサイトがその典型的なスタイルとしてすでに存在している)。あるいは、大手サイトとして機能するか否かは、多くの人に参照されるだけの情報を質または量において提供するか否かによって自然に決まるものなのだ。
というわけで、そういう「網の目の一つ」としての司会者/紹介者としてのブログは当然としても、そういう流れそのものを自分一人のところに集約したがって、しかもそこに自分の個人名をかぶせずにはいられないような人が現われると、はっきりいって「そういうことはネット使う必然性もないだろうに」と思ってしまうわけである。その人の個人名を出すとそろそろ「こだわりすぎ」みたいに言われてるのでもう言わないが(言ってるも同然か。笑)
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TBありがとうございます。
興味深い内容、恐れ入ります。私がTBしないでリンクにとどめたのは、何らかの新しい見解やら情報やらを提供できるほどのことを書かなかったからだけなんです。(苦笑)
サイト間の情報の流れという観点から考えた場合、もっと積極的にTBをしても良いのかなと思いました。
トラックバックいただきましたザイーガ管理人パルモでございます。
というか私のやっているような黒まみれのサイトをご存知いただいていたことに、びっくりするとともに大変うれしい限りでございます。
当ブログの場合、情報元が表記されていない記事はすべて海外サイトからもってきたものです。こちらも表記すべきかどうか迷っていたところのご指摘、大変参考になりました。今後検討していきたい所存でございます。
はじめまして。TonyKeiと申します。
非常に興味深い記事でトラックバックさせていただきました。ありがとうございました。