民主党は、ある程度の大きさの政府を目指す――前原誠司代表と「民主党 ブロガーと前原代表との懇談会」レポート

 10月31日、永田町の民主党本部で開かれた「民主党 ブロガーと前原代表との懇談会」に参加してきた。これは、GripBlogの泉あいさんの主導で開かれたもの。政治音痴の自分は個別の項目でつっこむだけの知識も見解もないし、また「支持政党なし」の立場なのだが、「要するに、民主党って何のためにあるの?何を目指してるの?」ということが知りたくて、末席に加えていただいた。

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 時間的には満足できない部分もあり、聞きたいことがすべて聞けたわけではないが、前原誠司代表、松本剛明政調会長をはじめとする方々から直接「民主党の基本理念」というものを聞けたように思う。

2005年11月 1日11:44| 記事内容分類:政治学| by 松永英明
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写真右から泉ケンタ議員、細野豪志議員、前原誠司民主党代表、松本剛明政調会長、大塚耕平議員。手前に回ってきてFPNの徳力さん、ずっとその場で速記録を取っていたR30さん。

いったい、民主党って何なのか。

 当日は早めについたので、国会図書館のロビーでR30さんの宿題の本を読んで時間をつぶした。読んでいるうちに、ああ、これは民主党の人が読むべき本だな、とわかったが、戦略とかは大好きなので楽しく読んだ。

 さて、民主党はペンタックスなどの入る雑居ビルの7階が受付。6階の大会議室で、部屋の半分くらいを使ってU字型の席でブロガー10人vs民主党議員5人の懇談会となった。参加者はみんな、民主党支持者というわけではない。

minshu1031b.jpg 左・大塚議員、右・松本議員
minshu1031c.jpg 左・細野議員、右・泉議員

 さて、当日の全体の様子は泉さんもまとめてくれるだろうし、他の参加者の記録も入るだろうから、このエントリーでは自分が一番聞きたかった部分についてのテープ起こしを入れておく。

 それは「民主党」の存在意義、目指すものだ。民主党の印象としては、旧自民党から民社党・社会党・自由党などいろいろな政党の寄せ集めで、そこにまとまりというか、民主党としての存在意義はどこにあるのか、ということがよくわからなかった。西村眞悟議員もいれば旧社会党系の人もいるという政党が一つになっている意味がわからない。それはつまり、民主党としての立ち位置がよくわからないということだ。

 そこを、前原代表に聞いてみたいと思った。確かに、マニフェストを読めば個々の政策はわかるが、じゃあ民主党が政権をとったら日本はどういう社会にしていこうと考えているのか、という全体像がよくわからない。自民党と民主党、2大政党にするとして、じゃあそこで民主党は自民党と何がどう違うのか。そこを知りたかった。

 そして、今回はその部分についての一つの答えを聞けたように思う。実際には質問のタイミングを失って、本当に最後の最後に紛れ込ませてもらったという感じだったのだが。

自民党は小さな政府、民主党はある程度の大きさの政府を目指す

 泉さんが、前原代表に「野党第一党の代表としての覚悟」を質問。具体的には、小沢一郎氏の名前を挙げて、場合によっては意見の合わない人を「切る」ような覚悟があるのか、と。おそらく、泉さんは「民主党を党としてまとめていく覚悟」を聞きたかったのだろうけど、前原代表には「方針に合わない人を切るか切らないか」という質問に聞こえたんじゃないだろうか。

 というところで、最後に割り込ませてもらった。以下、テープ起こし。

「寄せ集め政党」という印象

【松永】今までの話と絡んでくるんですけど……わたしも政治的に結構音痴なところがありまして――印象としては、民主党さんってすごく寄せ集めの印象っていうのがあるんですよね、正直。

 たとえば、旧社会党系もあれば、民社党系の方がそういう、ちょっと違ったものを先に出してしまったりとか((ソフトさんの発言“29日の日経に川端さんが「軍隊を保持するということを明記した案を出した」ということを言われ、その後前原さんが国民の意見を聞いてからと言われている、とありましたが。”を受けている。))ということがあったり、それこそ小沢さんもって話になる。そうすると、「民主党って何なの?」っていうのがよくわからないっていうところがあるんですね。

 自民党とそれに反対……「小泉さんに反対」って、それならわかりやすいんですけど、じゃあ「民主党ってどこに走っていくの?」というのがわかりにくい。そこが、今の「覚悟」だとか、そういうことにもつながってくると思うんですけど、集まってきて野党第一党になり、そこから政権党に行くっていうところで、民主党として、今までの寄せ集めじゃなく、マージされて、融合して、新しいものが生まれてこないと、民主党じゃなくて、なんか旧社会党とか小沢さんの自由党だとかいろんなところが集まっている「寄せ集め所帯」っていう印象、やっぱり「わかんない」っていう印象があるんです。

旧党派は弱まっている

【大塚】そこは定量的に、まさにちゃんとお示ししていく努力を我々もしますけども、もう旧党派に所属していた人間というのは、もう数少ないです。わたしなんかは2001年から入っているから、どことも関係がないし……

【前原】「民主党」です(笑)

【松永】だったら、そのあたりをうまく伝えていただきたい、という、その……民主党はどうなのか、旧社会党だとか旧自由党だとかもう関係ないっていう。「民主党」はこうなんだ、っていうあたりをうまく伝えていただきたいっていうのがあります。でないと、わかんないっていう印象が残ってしまうところがあるんですよね。

「無駄を削る」部分は自民党と共通している

【前原】自民党でも、見え方というか、あるいは根っこの部分は変わってないのかも知れませんが、見え方が変わっていってるんですね。たとえば、既得権益、圧力団体の影響力が非常に強い、あるいは族議員といってもいいかもしれないかもしれないし、縦割り役所の代弁者というのが今までの自民党だったけれども、少なくとも小泉さんはそのイメージを払拭したんですね。下部構造が変わっているかどうかは別にして。払拭をした。

 で、その点については、もしその改革ということが本当に実行されるならば、わたしは競争すると言ってるんです。つまり、真の改革競争ということを言っているわけですね。

 で、その一つの大きなポイントは「無駄を削る」ということ。税金の無駄を削る。わたしが特に言っているのは、特定財源とか、天下りとか、公共事業談合の問題とか、あるいは公務員の給料の高さだとか、だからまあ、わたしは労組とぶつかってるということも言われますけどね、そういう無駄を徹底的に削っていこうと。で、それは向こうはやると言っているから、そこについては競争していこうということなんですけど。

自民党はマーケットメカニズムを徹底させる

【前原】最終的な価値としては、何を目指すのかっていうと――小泉さんは「小さな政府を目指す」って言ってますよね。僕は、無駄は徹底的に削る。それは方向性としては「小さな政府」なんだけれども、最終的に「ある程度の大きさの政府」でいいと思ってるんですよ。つまりは、「贅肉」は取る。贅肉を取るけれども、それで何か、それが小さな政府でなくても僕はいいと思っているんですよ。

 そこは、どこが自民党と民主党と最終的に求めるところが違うかというと、ともかく、いわゆるマーケットメカニズムを徹底させる、何でも民営化をしていくという方向性で今、自民党は走ろうとしているけれども、我々は、それはおかしいと。

 基本はマーケットだし、経済活動を重点するのは必要だと思っているけれども、それで救われないところって、いっぱいありますね、と。たとえば、自然環境とか、あるいは地方の雇用だったりとか、あるいはあまり使いたくない言葉だけど「生活弱者」だとか、それはたとえば高齢者のことも入るだろうし、障碍者のことも入るだろうし、あるいは子供ということも入ってくるかもしれない。

 で、まあ来年、医療制度改革がメインになりますけれども、経済財政首脳会議の中では、医療の中にもいわゆる株式会社を参入させて、いわゆる医療の部分民営化ということをやろうとしているけれども、人の命に関わることでね、民営化を、そういういわゆる損得だけで成り立つような株式会社を入れていって、本当に人の命っていうのは、健康というのは成り立つのかどうなのかっていう疑問が僕にはあるんですよね。だから、そこはやはりわたしは、国であるなり、行政であるなり、あるいは「公(おおやけ)」というところでね、セクターでやるなり、といったことがあっていいと思うし、その結果、ある程度の大きさ。無駄は削るけれども、大きさになってくると。

民主党はある程度均質な社会を目指す

【前原】だから、最終的なゴールの違いは何かというと、このままの小泉路線で行くんであれば、徹底的なマーケットメカニズム、そして、格差が開いてもいい社会。だけど、我々はある程度均質な社会にして、セーフティネットもあって、そして、チャンスがほしいけれどもないような人たちに対してはチャンスを与える。あるいは、ハンディキャップを持っているような人たちに対しては、しっかりとセーフティネットを張っていく。そういうことが、わたしは求めるところが違うのではないかなと思ってますけどね。

 だから、カネでものごとをすべてはかっていくのか、それともそういう人というか、精神的なものを含めて、要は政治が干渉を持つべき分野を考えていくかというところで、大きな、わたしは、民主党と自民党の違いが生まれるんじゃないかな、と思っています。

【松永】今の説明はよくわかりました。

財源はまず「無駄を削る」ことから

【小飼】じゃあ、答えなくてもいいので、ブログでも何でもいいから、書いてください。じゃあ、その財源を示してください。それが一番大事です。

【前原】だから、徹底的に無駄を削るということはやりますし、今の財政状況を考えると、無駄を削るだけで成り立つのかという疑問もあると思いますから、とにかく雑巾を徹底的に絞って、ね、それでもう物理的に出ないよというときには、それは増税ということも考えなければいけないかもしれないけれども、順序としてはまずは無駄を削るというところで我々はその財源を……

【小飼】その情報を示していただきたい。でないと安心できないんですよ。

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まとめ

 懇談会はここでタイムアウト。まあ基本中の基本のようなものを聞かせてもらえたので、自分としてはわかったような気がする。

 自民党は、完全な競争原理に基づく社会を作ろうとしている(と少なくとも民主党では認識している)。それに対して、民主党は、自由競争だけではなく、ある程度の平等社会を維持する必要があると考えている。

 わたしは、中華人民共和国は中国共産党一党独裁の資本主義・自由競争国家だと思っており、貧富の差も激しいという事実がある。一方、日本は実は自民党率いる社会主義的な平等国家だと思う(貧富の差は中国などに比べると格段に少ない)。その平等性を必要だと考えるか、それとも実力による自由競争を選ぶのか。そこが民主党と自民党の違いだとすれば、どういう社会を望むかによって政党を選べばいいということだ。

 これで民主党の立場がわかったような気がするが、そこで新たな問題が出てくる。それは「自己責任の原則に基づく自由で公正な社会の実現」という旧自由党の理念(小沢一郎ウェブサイトより)とは合わないのではないか、ということだ。自由党は、むしろ自由競争社会を徹底的に推進しようという立場ではないのだろうか。そして、そういう人たちが民主党内にいるということは、意見のずれを生じないのだろうか。このあたりは次回(があれば)聞いてみたいことである。

補記いろいろ

 そうそう、こういうことを書くとよく誤解される部分だが、自分はこのエントリーで「自由競争とある程度の平等社会のどちらがいい・悪い」という判断を一切していないことに注意していただきたい。というより、このブログは、その判断の材料となる基礎情報として、それぞれの政党が何を考えているのかをわかりやすく伝えるだけでいいと思っている。批判・批評・賛同などの「評価」はここには必要ない。そういう意味で、わたしは「ジャーナリストじゃない」といわれるかもしれないし、ネット型の「民主主義」を望む人たちからは物足りないと思われるかもしれないが、特に政治的な問題について、自分はネット上では情報提供型の「ブロガー」として、つまりオピニオンよりも「淡々と情報を提供するよ」というブロガーとしてやっていきたいと思っているので、その辺はご了承いただきたい。ブログ民主主義だかなんだか知らないが、自分としては「相手が何を考えているのか」を聞ければ十分だ。

 と書いて思ったが、俺は田原総一朗か(とセルフつっこみ)。「要するにどういうことなんですかッ!」って。

 もしこれが民主党の宣伝に見える人がいたら、「他党でも同じようなことがあれば同じように情報提供します」とだけ答えておく。政治家に利用されているように見える人がいるのなら、「どの政治家の方もご利用ください」とだけ答えておく。

 なお、テープ起こし部分に間違いがあれば随時修正します。通常のインタビュー記事などではテープ起こししたデータをかなり編集するのが当たり前ですが、今回は発言を正確に起こすようにしていますので、文法的におかしいところもそのまま放置。

 話の中で、前原代表がブログをやるかどうか、といった話題も出たが、これについては別エントリーで後でまとめるつもり。

 さて、次回(があれば)聞いてみたいことは、上記の政策理念の内部不協和に問題はないのかというところと、もう一点。選挙期間中に、民主党のマニフェストの一部を取り上げて「沖縄を中国に売り飛ばそうとしている売国党」のように宣伝する書き込みがネットに散見されたが、その部分の真意を確認したい。また、こういう情報が流れて、それが間違っている場合、ネットに強い政党であれば即座に「本意はこうだ」というカウンター情報を流すことも可能だろう。そのあたりのネット活用法についての話もできるとおもしろいと思う。

 他の記事についてはこちら参照。

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