自民党 第3回「メルマガ/ブログ作者との懇談会」レポ3――松永の質疑と感想
平成18年3月7日18:30~20:00に永田町・自民党本部で開かれた第3回「メルマガ/ブログ作者との懇談会」に参加してきました。今回のテーマは「新憲法草案について」、メインとなるのは新憲法起草委員会事務局次長(要するに新憲法の自民党草案をまとめた人といってもいい)の舛添要一議員、そして広報本部副本部長・世耕弘成議員で、ブロガー・メルマガ作者のほうは26名となってます。
レポート第3部は、ICレコーダーでの録音データをもとに。
写真は、会場で出たサンドイッチと紅茶です。民主党の親子丼のときとのバランスがあるので、あとで代金を払って領収書をもらっておきました。
■自分の質問部分の録音の起こし
■松永質問
はじめまして。絵文録ことのはというブログをやっております松永と申します。ブログのほうでは、ブログの話題そのものですとか、あとは自分でわからないことを調べてみてわかりやすく書くというようなことをやっております。
今日お伺いしたいというのは、2点ありますけれども、一つは前文の中に気になる部分がありまして、「国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う」というところなんですけれども、「圧政や人権侵害を根絶」というものが場合によっては内政干渉ととられることがあるんじゃないかと。じゃあ、何が基準になるのか、ということなんですね。
今の現状ですと、たとえばイラクにおいてフセイン政権が、っていうことになった場合、これはある意味アメリカの判断ということになってると思うんですけれども、じゃあたとえば中国で人権侵害があるといった場合に、アメリカは認めますが中国は認めません。そうすると国連の判断を基準にするわけにもいかない。そうすると、北朝鮮なんかでも、反対する国があるかもしれない。こういった場合に、どこからどこまでが圧政や人権侵害なのかということが、どういう基準になっていくんだろうかと、これが第一点です。
それからもう一点はちょっとこれとは関係ないことで、十二条のところに飛ぶんですけれども、これはちょっと字面の、というか言葉の意味合いをお聞きしたいと思うんですけれども、「公共の福祉」という言葉を「公益及び公の秩序」という言葉に変えられた。「公共の福祉」という言葉を「公益及び公の秩序に反しないように」という、そういう形で変えられたわけですけれども、ここでこういう言葉に変えられた具体的な内容ですね。わかりやすくというか、具体的にされたと思うんですけれども、さらにどういうものを想定したのかというところをお聞きしたいです。
■舛添要一議員回答
2番目について言うとですね、これは世代によって感覚が違って、自民党の中でもこの前に当選された方なんかは「なぜ変えたんだ」ってことを言うんで、それはもう子供のころから「公共の福祉」でずっときていて、こういうもんだと思ってるんだけれども、私たちぐらいの感覚でいうと「公共の福祉って何だろうな」と思って育ってきたわけですよ。そうすると、公益=みんなの利益っていうことと、それとやっぱり公の秩序と。これ書いた方がいいだろうと。
いろんな人がいろんな言葉がいいって言ってて、まあ最大公約数的に書いてある。もっといい言葉で、もっとすべての世代に「そうだな」ってヒットするような言葉があればいいと思いますので、とりあえずは「公共の福祉っていうよりはこっちのほうがわかりやすいだろう」というくらいの判断です。
それから、最初のところはですね、これはあくまで先ほど言ったように理想、メッセージ。私たちの生き方はこうだって言って、でもそっから先はね、国際社会というのは力と力のせめぎあいだし、今のアメリカにしたって、イランの核はいけないといってインドの核はいいっていうダブルスタンダードは何なんだってことになる。イラクだって彼ら助けてたことがあるわけですから。サダム・フセインを使ってたんだから。
しかし、私たちはやっぱり理想としてはそういうことをやろうという、まあ理想の表明です。だから、現実的な社会ではどうというところには触れていない。
■今回の感想
■舛添議員のブログ理解・活用は完璧
まず、ブロガーとしての感想を述べるなら、舛添議員は「ブログの効果的な使い方」をすでに完璧に把握している。本、テレビなどのメディアを経てきただけに、「ブログのメディア特性」を完全に見抜いているあたりがすごい。
ここは録音しそこねたのだが、会の終わりに舛添氏がこういうことを言われたのだ(記憶に頼っているので概要)
「今日話した内容は、メディアにも話してこなかったような裏話がかなりあります。これはぜひ皆さんにブログなどに書いていただきたいと思います」
うまい。うますぎる。当日の取材記者にも退場してもらって、メルマガ/ブログ作者のみに絞っておいてざっくばらんに話をした上で、党の見解としては出すことの難しい舛添議員の個人的な意見(憲法改正に数の上では民主党だけが必要で公明党は要らないが、政治的な点で与党公明党にも納得してもらわねば、など)をしたんだ、と明かしている。つまり、眞鍋かをりならぬ「舛添要一のここだけの話」だったんだよ、と。そして、それをブログやメルマガに書いていい、と。
参加者の特権意識をくすぐりつつ、見事にブログの口コミ情報伝達機能を生かして、ネット中に「憲法改正の本丸は第9条、それさえ可能ならあとは妥協してもいい」という舛添議員の本当のねらいを広めることができるのである。
完璧である。手の内を全部さらけ出すメリットとデメリットをきちんと計算して、メリットを活かそうとしている印象を受ける。
■今回の舛添議員のメッセージ
今回の舛添議員のお話から私が受け取ったのはこういうメッセージだ。
- 憲法改正は9条改正が本丸で、そのためなら他は犠牲にしてもいい
- できるだけ多くの人の賛同を得られるような最大公約数的・妥協的な表現にせざるを得なかったという苦労をわかってほしい
個人的には「靖国問題の争点は宗教ではなく歴史解釈の問題」など納得できる部分も多く、前文の内容や表現に違和感を感じる部分がある以外はおおむね賛同できるものが多いと感じた。つまり、もう少し練り込まれれば、自民党による憲法改正案が国民投票にかけられたら、自分は一票を投じるんじゃないか、という気がする。
「本丸」の憲法9条改正も、戦争放棄は残した上で、自衛隊→自衛軍として明記するだけのこと、といってしまえばそれだけのことで、つまり「実情に合わせただけ」という見方もできる(私は「非武装中立・自衛隊廃止」論者ではない)。
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2006/03/07 18:30-20:00 自民党本部 8F リバティ2・3号... 続きを読む
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昨日、要約筆記の講習会があって、そこで受講生への宿題がでたのだ。詩を前もって入力しておいて欲しいという講師の要望で、ネットで調べればありますという補足が。... 続きを読む
レポート、大変興味深く拝読させていただきました。
ところで、「レポ2」の「質疑4」での「舛添議員回答」での記述が、
> 「イラクは核を持ってはいけないがインドは核を持っていい」というのは筋が通らない。
となっています。これは「イラク」ではなく「イラン」ですよね。
# 「レポ2」のページにコメント欄がないのでこちらに投稿しました。用が済んだらこのコメントは消してください。
舛添議員は「公共の福祉」の言い換えの部分について巧妙にスルーしたと思います。
法律では,文言の変更は異なる意味を生じさせることが多く、「これまでどおりでよい」と考えるのなら、文言を変えないことが原則の筈です。
もともと、「公共の福祉」というのは、単なる多数者の利益ではないと理解されているのが大勢です。すると、舛添議員の
>そうすると、公益=みんなの利益っていうことと、そ
>れとやっぱり公の秩序と。これ書いた方がいいだろ
>うと。
これは、現在の一般的な「公共の福祉」とは異なります。舛添議員が今の「公共の福祉」を理解しているとするならば、意図的に「公共の福祉」の意味内容を変更しようとしながら、それを隠そうとしていることになります。
まさか、舛添議員が今の「公共の福祉」の一般的理解を知らないはずはないでしょう。
「公共の福祉」の理解は、人権制約原理をどのようにとらえるかと言う点で非常に重要な問題を含みます。にもかかわらず、ノミナルな(名前だけの)問題という印象を与えようとする舛添議員の巧妙さには感心します。
他方で、多くのブロガーには正確な理解をお願いしたく考えます。