日本型『ウェブ2.0』と関心空間&電脳卸

 9月15日、EC研究会の第106回目合同フォーラムに参加してきた。パネルディスカッション「日本型『ウェブ2.0』と関心空間&電脳卸」で、電脳卸の田村さんが話すというので申し込んだのだった。

 EC=ウェブショップの世界の人たちが、今のWeb2.0をどのように見ているのか。このパネルディスカッションの内容のメモを残しておく。断片的なので判りづらいと思うがご了承ください。

2006年9月20日06:47| 記事内容分類:ウェブマーケティング| by 松永英明
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日本型『ウェブ2.0』と関心空間&電脳卸

  • ディー・フォー・ディー・アール(D4DR)株式会社 代表取締役社長 藤元 健太郎氏
  • 株式会社関心空間 代表取締役社長 前田 邦宏氏
  • 株式会社ウェブシャーク(電脳卸) 取締役COO 田村 啓氏
  • EC研究会(NPO)/情報経済新聞(ウェブ)代表/編集長 土屋 憲太郎

藤本さん「Web2.0が加速させるCGMとECの融合」

  • 広告モデルの限界からEC(エレクトリック・コマース)が注目されている。
  • Web2.0の本質は、XMLによる情報・機能の部品化と流通可能化。情報が「レゴのブロックのように」いろいろな形で使えるような形式で流通する。
  • これからのインターネットビジネスは、「教えたい人」の知識が流通し、売りたい人の後押し、買いたい人の参考情報として、広告やEコマースと連動する流通産業化が進みつつある。
  • キーワードは「教えたい人」。売りたい人・買いたい人の世界であったECに教えたい人が加わる。
  • いろいろなところにいろいろなデータがある→付加価値が生まれる。
  • たとえば、音楽の場合、「どのように聞いたらいいか」という「メタデータ」によってモノが売れる。
  • ロングテール化は「情報の蓄積」がポイントとなる。ロングテールには二つあって、情報のロングテールと商品のロングテールがある。利益率は、テールではなくヘッドが高いのは言うまでもない。そのヘッドを作るためには、利用者から見てロングテールがなければならない。低収益なロングテールと、高収益名ヘッドを組み合わせる必要がある。
  • マーケティングにおけるCGMの役割の中で、まずマスメディアでのCMは非常に重要である。このCMの作り方の重要性は減っていない。その次の段階として、YouTubeなどでおもしろいCMがアップされる。テレビを見ないけれどもYouTubeでCMを知っているという人たちがいる。だから、マスメディアをおろそかにすることはできない。
  • googleは、情報・知識流通のプラットフォームになりつつある。それが生かされるためには、一次情報がプラットフォームに提供されなければならない。そうして初めて、付加価値のついたサービスが作られることになる。

関心空間 前田さん「ロングテール型商品にある“見えないつながり”を発見する方法」

  • ロングテールは決して「死に筋」ではない。特定の個人の専門的関心のあるものなどが含まれている。
  • 価値があることを伝えるのにはCGMが有効。「どうしても人に言いたくなる」瞬間、「死に筋」商品に火が当たる。
  • 立場の違う人に検証してもらうと、購買意欲につながる。これはエンジン内に内包できない。外側にあるから信用される。たとえばアマゾンのレビューなど。特に強いのは、体験情報の伴ったクチコミである。

電脳卸 田村さん「EC2.0―ドロップ・シッピングがもたらす影響」

  • アメリカではeBay!がほぼ独占状態。
  • スーパーセラーという売りまくる人がいて、値付けに影響している。
  • 日本のドロップシッピングサービスは、主要プレイヤーは3社。いずれも過剰といえるほどのサービスを提供している。問題は、商品供給側の保守性である。
  • ドロップシッピングは新しい業態ではないが、イノベーションではある。
    • ネットショップ、ECへの参入障壁を低下させた
    • ネットショップの運営効率化
    • 販売チャネルの多様化(これは商品提供側の利点)
  • 今後、ドロップシッピングは必要不可欠なインフラになりえる。
  • ドロップシッピングに向いている商品は、「ニッチ」「でかい」「重い」「高い」もの。通常ではロットが小さすぎるもの(手作り毛針)などが売れている。売れ筋とのついで買いが多い。在庫を持たなくてよい。

パネルディスカッション

  • mixiについて
    • 前田さん:mixiは社会化したが、SNSというものが社会化したかどうかはわからない。
    • 田村さん:インターン希望の人たちがみんなmixiアカウントを持っている。ゆるやかなつながりを持ち続けるためのシステムになっている。
  • mixiがECをやる可能性はあるか
    • 前田さん:Find Jobも含めてであればそちらが重点となっていくだろうが、あくまでもmixiでいくのであれば、何でもやる可能性がある。
    • 田村さん:コミュニケーションあるところにECあり。これは電脳卸などにとっても脅威かもしれない。ヤフオクを覆す可能性もある。
  • これまで楽天が牽引してきたが、ドロップシッピングで変化はあるだろうか
    • 田村さん:今、楽天で売りすぎてきた人がビクビクしている。また料率が上がるのではないか、と。疲弊化している。だから、選択肢が増えるととらえてもらえればいいのだが。ドロップシッピングは仕入れチャネルを完全に解放するものである。これで一般の人たちが多数新規参入してくる。持っていない人たちが入ってくるということは、すでに持っている人たちには脅威となる。
    • 前田さん:売るまでのコストがかかるものは、ECでは売れなかった。ドロップシッピングは、ニッチなものを買えるようにするものである。それは、時間がかかるが、いずれ売れる。キーワードは、リスク担保だが、これを分担する人が増えればメリットになる。また、目利きというのも重要。
    • 田村さん:ものつくりは職人がやるものである。職人が売ることまでやり始めると悲劇が起こる。
    • 前田さん:トップアフィリエイターと呼ばれているような人たちは、トップセラーに移っていく。ショッパーではない。トップアフィリエイターには、価値があるモノをゆっくりと売っていく、というような発想がない。
    • 田村さん:100万円を1人で稼ぐより、100人が1万円ずつ稼ぐ方が健全。トップアフィリエイターは、ノウハウを持っているが、短期間で売り逃げる。普通の人たちは、長期間でこつこつ売っていくが、それを総計すると同じくらいの価値がある。

質疑応答

  • Q:95年ごろからECショップ関連では、プロシューマー(コンシューマーとプロデューサーの両方の要素を持つ)が重視されている。
    • 土屋さん:だれもが昼は会社で働いてプロデューサー、夜や休日は買い物をするコンシューマーとなりえる。だから、単なる「消費者」はありえず、プロシューマー=生活者である。
    • 田村さん:作る人は偏執狂、こだわりのある人であるべきだ。プロシューマーではよくない。24時間作ることを考えている人の方がいい。職人礼賛を訴えたい。
    • 前田さん:デジタルの世界は、プロっぽい人を作るが、プロではないというところがある。プロシューマー・ジェネリック・プロジェクトの最もよい例が大阪のお好み焼き屋で、素材を渡して客に作らせる。
  • Q:mixiではモバイルだけの人を排除し続けるのか?
    • 藤本さん:PCが必要なのは登録のときだけで、実際の利用ではモバイルメインの人が多い。
    • 田村さん:携帯Onlyの人は、ウェブでの作法がなっていない。失礼な人が多く、コストがかかる。携帯だけのユーザーには触らない方がいい。
  • Q:商品には価格固定品と価格変動するものがある。消費者にとって、百貨店のものは高すぎるということがわかりつつある。アフィリエイトは消費者への還元になるのではないか。
    • 前田さん:ウェブ上では、質感のあるコミュニケーションはまだ起こっていない。これが今後の開拓先となる。毛糸のニット、セーターが売れる。背景の手作りの事実が読めたら、信用される。
    • 田村さん:価格コントロールするなら、究極的には直営で売るしかない。さもないと、在庫リスクと価格崩れのおそれがある。アフィリエイトもやらず、自社ネットでしかやらない。これが一つの考え方。一方、中間業者のことは考えずに割り切る方法があるが、これは激烈な価格競争を生む。この二つが対立する。
    • 藤本さん:ファッションの上代については、ECでは価格を崩さない。これはメーカーとの取り決めである。ブランドを建てる人、ブランドに価値を持っている人は、価格を下げるようなところには回さない。これは、メーカーが決めるのではなく、EC=小売も守ろうとしている。高くても買う人は買う。これがブランド価値だ。

今後のトレンド

  • 田村さん:「どこかのサイトで注文があった→XML配信→生産データベースに反映」というサイクルが短くなっていく。現在は小売店のEC化率が2~3%だが、もう少し高まるようになるだろう。DELLモデルがドロップシッピングによって中小にも行き渡るようになると思う。
  • 前田さん:現在は言語によるコンテンツマッチングしかない。個人の「文脈」にマッチさせる機能がコミュニケーションに欲しい。検索エンジンは「自分にふさわしいものは何か」を教えてくれない。SNSではこれがある程度実現しているが、検索とCGMとの関係でそれができれば。
  • 藤本さん:現在はウェブ上で「店頭」のコミュニケーションの機会がない。

松永の思ったこと

  • 売りたい人、買いたい人に加えて、Web2.0では「言いたい人」が絡んでくる、というまとめ方はわかりやすく、面白い。
  • Web2.0が良くも悪くも「集合知」であるとするならば、商売は大衆の好みや動向に合わせる必要があるわけで(ニッチも含めて)、そういう意味ではECとWeb2.0は相性がいいのだろう。
  • 前田さんの例。関心空間で「義母に好評」つながりの商品(けっこう高価な圧力鍋など)がよく売れているという。自分もつい最近、似たような購買経験をした。折りたたみベッドを買うのに、楽天市場の評価で「下宿する大学生の息子に買ったら好評だった」という購入者の体験が決め手となった。このへんにクチコミの真髄があるような気がする。
  • Web2.0でマイナスクチコミによって売り上げが落ちる可能性についても検討が必要ではないだろうか。そのリスクを最初から想定できれば。
  • 今回はそうではないが、たまに「アフィリエイトは1.0、ドロップシッピングは2.0」というふうに言う人がいる。アフィリエイトはWeb2.0のシステムを機能させるためのパーツとして働いているが、ドロップシッピングは第三者が紹介するというよりは小売店を増やすものになるので、実は2.0から1.0へ戻っているのではないだろうか。
  • googleの次、Web3.0は何だろう。
  • 全然関係ないが、前田さんはこのブログのGoogle特許記事などを読んでくださっていた。わーい。
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2006年9月20日06:47| 記事内容分類:ウェブマーケティング| by 松永英明
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