morph tokyo 4th Anniversary LIVE "描くオト"
2006年10月27日 六本木morph tokyo。音楽と視覚で楽しむスペシャルNIGHT――出演:神田さおり、三村玲土、canappeco、田野崎文――
玲土さんに「来てほしいにゃぁ♡」と誘われたので(←多少脚色)行ってきました。
■神田サオリ
morph tokyoは2005年10月19日に「Hello Mr.Asian Tour 2005 in TOKYO」(伊丹谷良介、Gypsy Queen、李浩、LIZ)ライブで来たことがあるから、ちょうど1年ぶり。六本木の地下にあってこぢんまりとしたところである。
今回は椅子席になっていて、ちょっと早めに着いたので最前列の端の方に座った。舞台には高さ2メートル半はあるように思われる巨大なカンバス。これが今回のタイトル「描くオト」に絡んでくる。
「踊絵師」の神田サオリさんが、3組の演奏のバックで踊りながらここに絵を描くという趣向なのだ。カンバスの足下には、おそらくアクリル絵の具の大きなチューブが並んでいる(最初、靴が並んでいるのかと思った)。
舞台に登場したサオリさんは、天使を思わせる純白の衣装(裾は長く引きずり、背中には羽のようなリボン)。アクリル絵の具をその場で溶いて、踏み台に乗って、ハケや手で音楽のイメージどおりに描いていく。曲のはじめには、手を伸ばしてイメージを頭の中に描いてから、実際にカンバスにぶつかっていく。ときには繊細に、ときにはたたきつけるように――それが舞台効果となり、音と一体化したステージは不思議な情景に彩られていくのだった。
■canappeco
最初の演奏は、アコースティックギターと歌だけのユニット、canappeco(カナッペコ)。
毎週土曜26:10からTBS系列で放送されている「エンタメキャッチ」のエンディングテーマとして、2nd mini alubm「misora sketch」に収録されている「スプートニック」が流れています。
初めて聴いたバンドで、曲名もよくわからなかったけど、どの曲も声の広がりがあって、ギターとコーラスだけとは思えないくらいの奥行きがあるように思った。「スプートニック」だけ曲名覚えてるけど、透明感があってなごむ。曲を聴いてると、夕方の煉瓦造りの街角でのんびりしてるような気分になる。
バックのサオリさんの描く絵は、白と柿色をメインにハケをぐるぐる回して、最後には夕焼け空のようになった。やっぱり夕方の穏やかなイメージというのは共通しているらしい。
■三村玲土
名前はミムラレニと読む。
人の縁とは不思議なもので、どこでどう出会うかわからないのだが、まあそんなわけでレニと知り合って(ノリ的に以下あえて敬称略)、それから実は歌を歌ってると聞き、名前で検索したらサイトが見つかって、AmazonでCDを買って聞いたらいきなり打ちのめされ、思い切りはまって、今回のライブにも駆けつけた――という流れである。
ステージに登場したレニは黒革の胸元ぎりぎり見えそうなきわどい衣装。白い天使のサオリさんとは対照的だが、二人はちょっと顔つきが似てるので、同じ人間の黒い部分と白い部分にも見える。
- びっち
- 黒髪
- ネコ
- 裸体
- 浮気の歌
- 子守唄
「びっち」はCD/DVDのメイン曲だが、コーラスを重ねたりしているので、ステージではどう歌うのかと思っていたら、すっかりアレンジが違っていた(当たり前だ)。しかし、表情と生音の迫力はもうCDの比ではない。
「黒髪」は和服の飲み屋の女将みたいな曲調と雰囲気だが、バタくさいイメージのレニが異様に和風も似合うのはなぜだろうか。
衣装の腰につけたしっぽを伸ばして「ネコ」。CD版よりも、かわいらしい部分と怒鳴りつける部分のコントラストがはっきりしていて、このアレンジはいい感じである。
アイリッシュトラッド風にも聞こえる「裸体」は特にお気に入りの曲。
バックのサオリさんは、カンバスの左右の端を黒く塗りつぶし始め、その曲線が次第に女性の横向きの姿に変わっていった。流れるように勢いよく引かれた黒線が、のけぞって頭を抱える腕の輪郭へと化けていく。あちこちに黒い花、赤い花が咲き始め、曲調に合わせた激しい情感をほとばしらせる絵になっていった。
レニはペットボトルの水を頭からかぶった。そして「浮気の歌」あたりでは、それまでにも増して曲の中に入り込んでいったように見えた。歌を歌っているのではなく、「レニ」をステージ上から発散しているのだ。ありきたりの言葉で言えばオーラというのだろうが、生の心の迫力がライブハウスを包み込んで圧倒してしまう。
最後の「子守唄」で、突然、サオリさんが前に出てきて、レニを抱き寄せ、堅く抱き合った。そして、サオリさんはレニの胸元に赤い花を描く。レニの目からは涙が流れ、破壊力にあふれた歌声に身じろぎもできなくなる。そして、曲が終わるとき、レニはサオリさんを抱き寄せに行き、そしてサオリさんはレニの手を絵の中の赤い花に押し当てて引っ張り、指の跡を絵に残させた。
黒と白の二人の天使は、そのまま舞台から去っていった。こんな迫力のある舞台は長らく見たことがなかった。こんなに表現力のあるアーティストというのは滅多にいない。演奏のうまいバンド、歌のうまい歌い手はいくらでもいるが、こんな迫力を伝えるアーティストはそうそういないのである。
11月には2回ライブをやるそうなので、予定があきさえすれば2回とも行きたいと思う。
■田野崎文
さて、レニのあとは、うってかわって再びアコースティックな感じの田野崎さん。
- 田野崎 文 | オフィシャルページ(音が鳴ります)
- 田野崎文
- まよなかのじかんブログ(FM 愛知「田野崎文と神田サオリ まよなかのじかん」毎週土曜日26:30~27:00)
ちょっと太くて柔らかくて優しい声。それが飾らない気持ちを歌うような曲が続く。完全にリラックスしたときに体が重く感じられるときがあるが、そんな風に気持ちがしっとりと落ち着いて、心地よく聞こえる。
サオリさんの絵の具は、レニのときにほぼ完成とも思えた絵の上を容赦なく塗りつぶし、そして女の姿はいつの間にか樹に変わっていった。白い花びらの花がその樹を埋め尽くし、さらに最後に柿色のサクラのような花が咲き始めた。田野崎さんのラッキーカラーが柿色らしく、衣装も、ステージに飾られたダリアの花も同じ色だったが、最後に柿色を使うとサオリさんは決めていたらしい。
そして、今日のステージの最後に完成したのは、狩野派の雰囲気さえも漂わせる、夕日の中の白梅・紅梅の絵だった(と自分は思ったが、描いた人や他の人がどう思ったかは知らない)。穏やかな夕暮れ、黒く勢いのある幹に、優しい花が咲いている。そして、表からは見えないが(そして描く経緯を見ていた人にしかわからないが)その幹の中には激しい情念を持った女の姿が埋め込まれているのだった。
ステージが終わった後、その絵を見ているとなかなか帰れなかった。写真を撮っている人も多かったが、自分のケータイでは真っ白になってしまって写らないのだった。それで、目に焼き付けて帰ろうと思った。
■他の方の感想とか
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