三村玲土 渋谷APIAライブ

 レニのライブも今回で三回目。毎回違った顔を見せてくれるレニのライブはまるで飽きない。いつ聴いても同じように完成されたライブというのも好きだが、毎回趣向もアレンジも全然違うのがレニのライブの楽しいところである。

 今回はアコースティックなライブハウスだというので、楽しみだと思っていたら、「次は兵隊さん慰問風だよ」とメールが。一体何が起こるのか。

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2006年11月30日00:45| 記事内容分類:ライブ| by 松永英明
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エスニックなライブハウス

 アコースティック・ライブハウス 渋谷アピアは駅からそう遠くないのに、ちょっとわかりにくい。恵比寿・渋谷間を歩いたときに何度も前を通ってはいたのだが。

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 小さな扉を開いて中に入ると、普通のバーか喫茶店のように椅子と机が並んでいる。ステージはさらに扉をくぐって向こう側だ。インテリアは完全にエスニックで、民族調の木彫り細工やら、中国少数民族のトンパ文字が飾ってあったりする。これは、はまる人ははまるだろうなという感じの装飾だ。

  • 出演者:早生凛/hatsumi/Kazuhisa Mtsuda vo.三絃/三村玲土

 少しばかり開演に遅れてしまったので、奥のステージの方には行かず、手前でレニファンの人たちと歓談することにした。レニサイトの管理などをやっているケロリンさんといろいろ話が盛り上がる。ケロリンさんが聴きに行くライブといったら、ジャンルなどは関係なく、ただ声がいい人なのだそうだ。もちろんレニも。確かに、音楽をジャンルで限定して好きな人もいるけれど、自分も結構雑食の方なので、声がよければ聴きに行くというのはよくわかる。

 同じアーティストのファンというのは、特に音楽性に惹かれている場合は話が合いやすくて楽しい。それに、このブログで書いたことを読んでくださってる方が何人もいて、喜んでもらってるのがうれしい。だって自分が思ったことを書いているだけなのに、それで喜んでもらえるんだからねえ。

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HATSUMI

 いつもレニのバックバンドをやっているメンバーが、今回はHATSUMIちゃんのバックバンドとして演奏するというので、ステージのある部屋に入る。あー、ほんとだ。

  1. 君らしく
  2. off time!!!
  3. ジェットコースター
  4. 太陽
  5. 歩いていこう

 どれも声が明るくて、楽しそうに歌っているのがすごくいい。

 最後の「歩いていこう」のメロディーラインはかなりお気に入り。特にサビの「ひたすら歩いていこう」の「ひたすら」のところとか、半音進行がたまらない。で、半音進行が狂わないということは音程がしっかりしているということ。中途半端に絶対音感のあるらしい自分としては、音がずれるとそちらが気になってしまうこともあるので(それが表現力の一部ならいいのだけど)、やはり音程の安定感があるヴォーカルでないとダメなのだ。そういう意味でもHATSUMIヴォーカルは楽しく聴けた。

 で、ごめんなさい、HATSUMIのステージが終わったらまた外に出てしまいました。

三村玲土

 で、いよいよレニの登場である。カメラの場所も狙い澄まして(その割にはあとで失敗したと思ったが)待機する。

 レニ登場。振り返ると、いきなり軍服に金髪である。マリリン・レニとも言いたくなるカッコよさだ。つーか、その軍服は独逸陸軍大尉じゃないか(そこは見るべきところじゃないと思うが)。

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 今回は、ピアノの鶴来正基だけが伴奏。しかし、この鶴来さんがすごい。もともと弦楽器は全然できなくて、小学校のときエレクトーンをやっていたので、バンドの中でもキーボード系の演奏者についつい目と耳が行ってしまうのだけど、鶴来さんはすごい。何というか、完全に入り込んでしまうレニ以上に何かが取り憑いたかのように、あるときは振り上げた腕を叩きつけ、あるときは繊細に鍵盤をなで回し、あるときは軽やかに跳ね回る。もう絶賛して言いますが、鶴来さんのソロライブがあったら聴きに行くよ。キーボーディストとしては、サップラのライブによく出ているただすけくん(最近は葉加瀬太郎コンサートに参加してるのか)と並ぶお気に入り登録である。

 で、レニである。もちろん、空間を作り上げていくのはレニの声と表情と、それだけではなくて空間を超えて放たれる「雰囲気」だ。そこに鶴来さんが以心伝心の伴奏を絶妙なタイミングではめ込んでいく。

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 兵隊さんを慰問するというテーマに、金髪+軍服。ここは本当に戦地の外れの兵舎ではないかという気になってくる。軍服の下にはこれまたエロい赤のビスチェで、もう聴きに来る人を煽っているとしか思えない格好だ。それが似合うから困る。

 いきなり金髪カツラを叩きつけて、

「何が金髪だ、ボケ!」

と叫ぶレニ。場内大爆笑。最高。

 チャールストン風アレンジの「ネコ」はひたすら楽しい。

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 そして後半は情念のこもった迫力のある歌を続けて歌う。これは重い。重いけれども、息苦しいわけではない。歌詞の内容も特に軍人さんとは関係ないはずなのに、なぜかそういう世界だという舞台設定が見えてきてしまう。MCの短い言葉と、歌の雰囲気だけで完全に空間を変えてしまう。

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 自分の好きなアーティストというのは、この空間を変える力、空間を操る力をみんな持っている。その場を支配する力だ。それがどういう手段であれ――歌でも楽器でも絵でも踊りでも言葉でも――ただ表現するだけではない力を持っている。

 レニのライブは、そんな迫力がある。しかも、毎回何か違うものを出してくる。

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「兵隊さん、人を殺さず、自分も死なず、きっと帰ってきてね……」

 そんな台詞がまったく浮くことなく、切実に伝わってくるのは、安っぽい反戦でもお上品な平和でもないからだろう。むしろ、色街の気の強い女のように見せかけていたからこそ、「帰ってきてね」が胸を打つのだ。

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 そして、今回もまた涙を流すレニ。もうこうなるとあまりの迫力に近寄れない。そんな圧倒的な存在感を伝えてくる。

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 45分があっという間に終わった。洋風も踊り子も和風の黒髪もみんな似合うレニが最後に「今日レニをお持ち帰りしてくれるのは誰かな?」と締めくくる。わけわかんねえ(笑)

 実は隣でちっちゃな女の子二人が熱心にレニの歌を聴いていた。実はレニの大ファンらしいのだが、本当に熱心に見つめてるのがすごかった。で、その女の子の一人が訊く。

「お持ち帰りってなぁにー」

「そういうときは、はーいって手を挙げなきゃ」

後でそれとなく聴いた話

 金髪は、リハ後に急に思いついて隣から借りてきたのだそうだ。直前の思いつきとは思えないはまり具合だ。

 それと、詳しくは聞かなかったが、リハはあまり調子がよろしくなかったらしい。でも、そんなものはどうでもいいのだ。本番に強いのがプロというものである。それにリハの方が本番よりよかったら、それこそ悔しいではないか。

 そして、ライブ後、すっかり素に戻っている白い服のレニは、ステージ上よりずっと小さく見えた。

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2006年11月30日00:45| 記事内容分類:ライブ| by 松永英明
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松永くんありがとう。れにはおかあさんによく、みんなにすかれるような努力をするべく嫌なこといわれても笑えってゆわれてきたんだけど、無理!ってひらきなおったひとなの。ライブが終わったあと社長に紹介された人に声帯の事とかくだらないことを初対面でゆわれてさ、無礼すぎてやっつけちゃったよ。のわりに、最後にはないたとかゆってきてさ。アーティストって貧乏だと思われてっからなめられてんのさ。でもれには今わ貧乏だけど、すきでやってんだっつーの!誇り高き貧乏だ。気に食わない奴に頭下げるのがれにの仕事じゃない。後は社長、よろしくみたいな。松永君みたいなもの書きがふえればいい。好きなもんは好き、嫌いなもんはいや。れにが頭を下げるのはお客様だ。

だから、れにのまわりには、強い味方しかいないし、いらない。

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