言語オタが非文系の彼女に世界の言語を軽く紹介するための10言語
最近「○○オタが非オタの彼女に○○を軽く紹介するための10本」が一部で流行っている。
小飼さんの「言語オタ」バージョンを読んだら、バスク語とかの話かと思ったら、プログラミング言語の話だったので軽く失望した。というわけで、発端の記事をテンプレートにして世界の「ことば」としての言語でやってみたいと思う。
まあ、どのくらいの数の言語オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、
「語学マニアではまったくないんだが、しかし自分の言語趣味を肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らない世界の言語とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」
ような、言語ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、言語のことを紹介するために見せるべき10言語を選んでみたいのだけれど。
(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に駅前留学を強要するのではなく相互のコミュニケーションの入口として)
あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う、少数民族言語や方言は避けたい。
できれば日本語文献が存在、少なくても英語・ドイツ語の解説書にとどめたい。
あと、いくら言語的に基礎といっても学習不能な、古びを感じすぎるものは避けたい。言語好きが「インド・ヨーロッパ祖語」は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。
彼女の設定は
言語知識はいわゆる英語的なものを除けば、大学の第二外国語程度はかじっている
海外旅行歴も浅いが、頭はけっこう良い
という条件で。
まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。
■サンスクリット語(Sanskrit, Skt)
まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「インド・ヨーロッパ語族」を濃縮しきっていて、「インド文化の土台」として決定づけたという点では外せないんだよなあ。日本語の五十音図も影響受けてるし。
ただ、ここで言語オタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
この情報過多な言語(音韻的に無声無気音・無声有気音・有声無気音・有声有気音の対立がそろっている)について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。
■ラテン語(Latin, Lat)、パーリ語(Pali)
アレって典型的な「言語オタクが考える一般人に受け入れられそうな言語(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのものという意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな。
「言語オタとしてはこの二つは“(欧州ならびに仏教圏の)共通語”としていい具合にこなれていて覚えやすいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。
■クリンゴン語(tlhIngan Hol)
ある種のSF好き言語オタが持ってる宇宙への憧憬と、マーク・オクラウド監修の言語オタ的な考証へのこだわりを彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにもスタートレック的な
「童貞的なださカッコよさ」を体現するOVS型語順
「童貞的に好みな女」を体現するクリンゴン語版Google
の二つをはじめとして、言語オタ好きのする要素を随所にちりばめているのが、紹介してみたい理由。
■シュメール語(EME.GIR)
たぶんこれを見た彼女は「楔形文字だよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。
この系統の言語がその後続いていないこと、これが古代メソポタミアでは大人気になったこと、SOV型語順で表意文字と表音文字を使っていて、それが日本語話者に学習されてもおかしくはなさそうなのに、日本国内でこういうのが知られないこと、なんかを非言語オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。
■エルフ語
「やっぱり創造言語は子供のためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは「ウォーターシップダウンのうさぎたち」のうさぎ語でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この作品にかけるトールキンの思いが好きだから。
断腸の思いで削りに削ってそれでも指輪物語追補編に満載、っていう尺が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにも言語オタ的だなあと思えてしまうから。
クウェンヤ語やシンダール語の解説の長さを俺自身は冗長とは思わないし、もう削れないだろうとは思うけれど、一方でこれがマイクル・ムアコックやロジャー・ゼラズニィだったらきっちり挿話にしてしまうだろうとも思う。
なのに、各所に頭下げて迷惑かけて完全な言語を系統立てていくつも作ってしまう、というあたり、どうしても「自分の物語を形作ってきた言語が捨てられない言語オタク」としては、たとえトールキンがそういうキャラでなかったとしても、親近感を禁じ得ない。『ホビットの冒険』『指輪物語』『シルマリルの物語』という作品自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。
■古典ギリシア語(ελληνική γλώσσα)
今の若年層で古典語学んだことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。
ラテン語よりも前の段階で、西洋の哲学とか修辞技法とかはこの言語で頂点に達していたとも言えて、こういうクオリティの言語が日常語でこの時代に使われていたんだよ、というのは、別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなく言語好きとしては不思議に誇らしいし、いわゆる大学第二言語でしか西洋語を知らない彼女には見せてあげたいなと思う。
■ゲール語(Gaeilge)
ゲール語の「VSO型語順」あるいは「ケルト文化」を言語オタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。
「終わらないネイティブ・ランゲージを毎日語り続ける」的な感覚が言語オタには共通してあるのかなということを感じていて、だからこそ公用語にゲール語も採用されるのは欧州連合以外ではあり得なかったとも思う。
「非日常化した古代語を語る」という言語オタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「言語オタクの気分」の源はゲールタハトにあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。
■バスク語(Euskara)
能格言語は地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういう非印欧語族風味のことばをこういうかたちで言語化して、それが非言語オタに受け入れられるか気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。
■広東語
9言語まではあっさり決まったんだけど10言語目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に広東語を選んだ。
サンスクリット語から始まって広東語で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、ブルース・リー以降のカンフー映画時代の先駆けとなった言語でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい言語がありそうな気もする。
というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10言語目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。
※原典のテンプレートに沿って書いたので、アフリカや東欧や東南アジアやネイティブ・アメリカンやポリネシアの言語は盛り込めなかった。残念。
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