「おばさん」呼ばわりは名誉毀損となるか
昨年末だが、レコードチャイナ:「オバサン」と呼ばれた30代女性、侮辱罪で隣人男性を訴える...というニュースがあった。
翻訳なので「大嬸(おばさん)」という語のニュアンスがよくわからない。そこで、中国語のニュースを読んでみた。
自由時報と蘋果日報の記事が見つかったが、報道内容が食い違っている。車を停めていたのが男性か女性かがまるで逆なのだ。どちらかというと蘋果日報の記事の方がきちんと取材しているように思えるので、「女性が日頃車を男性宅の前に止めていたためにいさかいが絶えず、ついに男性がおばさん呼ばわりしてしまった」というのが実態のように思われる。
また、訴えた女性によれば、大嬸というのは50~60代の田舎女性を指す言葉であるから、「わたしのように大卒でまだ30代のセレブを大嬸呼ばわりするのは公然侮辱」ということらしい。
以下、中国での報道の翻訳である。
■台湾の女性が男子を「公然侮辱」で訴えた
2008-12-31 自由時報
■「大嬸(おばさん)」と呼ばれたのが不満
【明報専訊】気安く人を「おばさん」と呼んではいけない。訴えられるかもしれないので気をつけて! 台湾高雄の一人の35歳既婚の陳という姓の女性が、最近、停車問題によって、隣家の30歳の王という姓の男子と争った。陳さんは王さんの車が停まっている場所があまりにも自分の家に近いと指摘したが、王さんはただ一時停車であってすぐに移動すると言った。しかし、陳さんはなおも「停めるな」と怒鳴った。王さんはそのとき急発進しようとして言った。「大嬸(おばさん)、こんな小さなことでそんなにずっと言い争う必要はないだろ」。陳さんは「おばさん」と言われて激怒し、ついに警察に報告して、「公然侮辱」で王某を告発することに決めた。
王さんは、陳さんがいつも鉢植えの場所や冷気漏水などの煩瑣な問題で何人かの隣近所の人たちとけんかしているという。また、人の話の些細な揚げ足をとるという。王さんが言うには、毎回陳さんと話すとき、いつも1~2時間話さなければならず、「毎回話の最後には、けんかの話題はいつももとの原因となった問題ではなくなっていました」という。
■知識人で優雅な貴婦人と自称
陳さんは事件発生後半月たってもいまだ怒りを抑えきれない。陳さんは、自分が高学歴の知識人であり、仕事と収入もよく、「優雅な貴婦人」であるという。そして、「大嬸(おばさん)」とは中国の田舎の田舎者に対する呼び方であって、あんなに大声で街頭でののしられれば、自分のような気高い女性にとって「もちろんどうしても『大嬸(おばさん)』というような呼び方は受け入れられません」という。王さんは警察にこう述べているという。「『大嬸(おばさん)』というのは単に口語的表現で、叔叔(叔父さん)伯伯(伯父さん)などと同じ。わたしがもし侮辱するつもりであれば、もっと直接下品な言葉でののしっていました」
台湾の法律における「公然侮辱罪」は、人を指しておとしめたり嘲笑したりするものである。
■35歳の女を「大嬸」と呼んだ男が訴えられる
2008年12月30日 蘋果日報
【李菁豪╱高雄の報道】「大嬸(おばさん)」と呼ぶ人は訴えられないように注意! 高雄市のある男性が、停車問題でしばしば隣人の女性と口論になっていた。先日、男性は自動車が自分の家の入り口をふさいでしまっていたので、女性に言った。「大嬸(おばさん)!すみませんが車を少し動かしてもらえませんか」。女性は、「大嬸」という二文字は50~60歳の田舎の田舎者を指す言葉であるが、自分はまだ30代でしかなく、また大学で高等教育を受けているため、辱められたと強く思い、当局に公然侮辱で告発した。男性は昨日訊問された後、検察に送致された。
警察によれば、高雄市中山路に住む被告、王という姓の男性(30歳)と、隣家の陳という既婚女性(35歳)は、常々、停車問題で争っていた。今月初め、王さんは陳さんの車が自分の家の入り口を遮っていたのを見て、すぐ陳さんを探し、近所の人たちの面前でこう言った。「大嬸(おばさん)!すみませんが車を少し動かしてもらえませんか」。陳さんは憤慨がおさまらず、王さんを公然侮辱罪で当局に告発したのだった。
■公然侮辱で送検
陳さんは警察に対して、自分の認識では「大嬸(おばさん)」というのは50~60歳の田舎の田舎者を指す言葉であるが、自分は大卒であり、年齢もやっと30歳すぎであり、王さんの呼び方によって激しく辱めを受けたと感じた、と語った。警察は先日王さんを召喚して出廷させ、王さんは警察に対してこう述べた。「『大嬸(おばさん)』というのは単に口語的表現で、叔叔(叔父さん)伯伯(伯父さん)などと同じ。わたしがもし侮辱するつもりであれば、もっと直接下品な言葉でののしっていました」。しかし、警察は訊問後、昨日、公然侮辱罪の嫌疑で王さんを送検した。
公然と35歳の女性を「大嬸(おばさん)」と呼べば罪になるのかどうかについて、法律家の見方はまちまちである。郭家駿弁護士は、「大嬸(おばさん)という言葉自体には客観的な認知上ではおとしめる意味合いは明らかにありません。もし王さんが陳さんを侮辱しようとした故意がないのであれば、公然侮辱罪の嫌疑を構成する可能性は大きくありません」という。しかし、呉春生弁護士は、「もし、大嬸(おばさん)という言葉が社会大衆の普通の解釈・認知において50~60代の田舎者を指す言葉であって、人を辱める意図がある、ということを陳さんが納得させることができるなら、公然侮辱罪が成立する可能性はあります。ちょうど、平凡な「小強(強ちゃん)」という二文字が、映画スター周星馳の映画によって「ゴキブリ」の別名というマイナスの意味を持つようになったように」。
■侮辱関連訴訟の実例
- 2008年12月26日 台中のある詐欺事件被告が、相手側弁護士に和解を勧告されたため、この弁護士を4回にわたって「黑道(どろぼう)」と痛罵。結果:30日の拘留と賠償10万元(およそ30万円)
- 2008年12月22日 高雄のある警備員が詐欺事件の調停裁判に出たとき、台湾語で被害者を「婊子(売女)」とののしって辱めた。結果:20日の拘留と賠償6万元(およそ18万円)。
- 2008年11月17日 台中のある校長が校内の紛糾に関して、女性教師が再調査を求めたのに対し、「豬頭(イノシシ頭)」と痛罵。結果:賠償5万元(およそ15万円)、女性教師に対して平身低頭で謝罪。
- 2008年11月11日 ある男性が結婚披露宴で、同級生が2000数元(およそ6000円)しかご祝儀を持たずに参加したのを不満に思い、電子メールで相手に「人不要臉天下無敵!(天下無敵の厚かましさ!)」と書いたばかりか、15人の同級生にも転送した。結果:40日の拘留。
資料元:《蘋果》資料室
※訳注:台湾ドルと日本円の換算はゆとり教育に準じて1NTD=およそ3円とした。
■大嬸婆
台湾のなつかしキャラに「大嬸婆」というのがあるらしい(婆は既婚女性を意味し、日本語の婆さんのニュアンスではない)。
- 2006.09.23 台北旅行記 3日目その2(かぶりものあり)
劉興欽の郷土マンガの舞台となった内湾では、登場人物の阿三哥や大嬸婆がキャラクターとなっているようだ(Welcome to Justaiwan)。
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