新型インフルエンザ「A/H1N1」対策完全マニュアル
「新型インフルエンザ(ブタ由来インフルエンザA/H1N1)」がついに日本に上陸した(海外に出たことのない患者が出現した、つまり日本国内で感染があった)。これを書いている5月18日0時の時点では兵庫県・大阪府に限られているが、爆発的に感染者数が増えており、全国に広まるのも時間の問題だろう。
そこで、パニックに陥ることなく、適切な行動をとれるよう(そして必要のない行動・必要のない購入をしないよう)、実用的かつ必要充分な対策マニュアルを作成しておくこととした。なお、この文章は医師のチェックを受けている。
この記事は「厚生労働省:健康:新型インフルエンザ対策関連情報」「感染症情報センター<新型インフルエンザ(A/H1N1)>」など、公的なガイドラインに基づき、現時点での行動に必要なことを現場の医師の意見を聞きながら抽出したものである。「あとで読む」ではなく、「今すぐ実行」をおすすめする。
なにしろ「新型」なので、すべてが解明されているわけではない。詳細については日々新たな情報が出ている状況である。ただし、現実問題としての対策としては、厚生労働省による指針に基づいて行動することが非常に大事である。
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(旧: )
■今回の新型インフルエンザの特徴
◎感染力は強いけれども、弱毒性。抗インフルエンザ薬は効果がある。
◎致死率は0.4%と低い。しかし、高齢者・乳幼児・他の病気を併発している人は、重症になり、生命の危険のある可能性も考えられている。
◎近い将来、トリ由来インフルエンザA/H5N1などの強毒性新型インフルエンザが発生する可能性が示唆されており、そのシミュレーション(予行演習)としても、今回、真剣に対策する必要がある。
追記。「0.4%」の根拠はサイエンス誌の「Pandemic Potential of a Strain of Influenza A (H1N1) : Early Findings -- Fraser et al., 10.1126/science.1176062 -- Science」という論文。この数字については現時点でもっと低いという見解もあるが、具体的な数字は今のところサイエンス誌の記載しかないので、とりあえずこの数字を記している。ここでは「強毒性よりはずっと弱め」というくらいの意味でとらえてください。新型なので知見は日々変わりますのでご容赦を。
■用意するものと、使い方
■最低限購入しておくもの
- 2週間から2カ月分の食糧。
- マスク(1日5枚として100枚くらいあれば)。
- 「アルコール消毒用スプレーまたはジェル」または「石けん」(後述)
- ビニール袋(マスクを使い捨てするためのもの。レジ袋等で可。たくさんあると便利)
追記。ブクマコメントより。「airbird 身内の内科医もだいたい同じ意見。自宅療養になったときに備えて、レトルトおかゆとか、簡単調理かつ食べやすそうな食料も備蓄しときーだって。 2009/05/18 」
■マスクは「不織布製の三層構造」を選ぶ
マスクとして購入するのは、不織布製の三層構造であれば充分。
△ 花粉用であっても、ないよりはマシと思われる(口を覆うので、接触感染のある程度の予防になりえる)
× ガーゼ製は避ける(使い捨てできないから)
× N95マスクは買わなくてよい。
インフルエンザ対策として「N95マスク」が販売されていることも多いが、これは一般の人には必要ない。N95マスクは医療従事者向けのものであり、今回でいえば新型インフルエンザに感染している患者さんを診察したり治療したりする必要のある医師や看護師等々が使うものであって、一般の人が街中で使うにはまったく不必要なレベルのものである。こんな高価なマスクを使う必要は全くない。
追記。N95マスクは機密性が高いので、付けてみればわかるが、付けると苦しい。付け続けるのが大変だし、値段もやたらと高い。今、マスク品薄の状況でN95マスクをインフル用として売りつけられないようにしましょう。
追記。マスクについては、当然ながら、100%防御できる手段ではないし、開放的な屋外ではマスク着用の意味は乏しいという見解も出ている。ともかく人混みに行かないのが最優先だが、しかし、それができない場合の対策としては、マスクによって大きな飛沫を防いだり、接触感染を防ぐなど利益も大きいので、感染の可能性を減らす手段としてマスクはぜひ着用しましょう(人が近寄ってきたからマスクする、離れたからマスクはずす、というのは現実的ではない)。なお、感染の疑いのある症状が出ている人だけではなく、感染していない人も人混みに行くときはマスク着用です。後述。
追記。ブクマコメントより。sabolink マスクが購入できない場合の次善策につき、ご存知の方がおいでになれば、お教え願いたく思いました。 2009/05/18
→マスクを使う習慣に乏しいアメリカでは、極力人混みを避けること、とにかく消毒用のジェルを持ち歩いてこまめに手を洗うことが推奨されています。参照→CDC - How to Prevent Getting and Spreading Novel H1N1 Flu
■マスクの正しいかけ方。
1.まず手を洗う。
2.先に鼻の部分のワイヤーを半分に折って、鼻の位置を定めてから両耳にかける。
3.かけたあと、鼻から頬にかけての形をフィットさせる。
4.最後にプリーツをあごまで伸ばす。
※上下を間違わないこと。
■マスクの正しいはずし方。
1.ゴミ箱のふたを開ける(またはマスクを捨てるためのビニール袋を開く)。
2.耳にかける部分を持ってはずす(マスク部分はさわらない方がいい)。
3.ゴミ箱(またはビニール袋)に捨てる。ゴミ箱のふたを閉める。
4.手を洗う。可能であれば(余裕があれば)顔も洗う。
※マスクにはウィルスの含まれた飛沫を吸い込まないという目的もあるが、同時に、手に着いたウィルスを口に運ばせないという目的もある。無意識のうちに顔や髪に触っていることは多い。だから、余裕があれば顔も洗った方がよい。(接触感染の予防の観点)
追記。特に自分が咳・くしゃみをしている人は、この方法を守ること。粘液に包まれたウィルスに触ると接触感染する可能性があるので、捨てたマスクには触らないこと。
■正しい手の洗い方
「アルコール消毒用スプレーまたはジェル」または「石けん」を用意する。
消毒用の場合は、まんべんなくすり込む(親指、手の甲、手首まで忘れず、すべてまんべんなく)。
石けんの場合は、石けんをよく泡立てて、流水を使う。トータルで15秒以上洗うことが推奨されている。ただし、手荒れが起こるとバイキンが落ちにくくなるという報告もあるので、アルコールジェルを薦める意見もある。
手荒れがなければ石けんで充分。ただし、アルコールなら持ち歩きもできるのがメリット。
■うがいは必要ない
うがいはインフルエンザ感染防止という観点では、取り立てて重視する必要はない。ただし、「やっても害はない」といううまい言い方をする専門家も多い。
■今からすぐにとるべき行動
◎なるべく人混みに行かない。「人混みに行く」の定義は、他の人の2メートル以内に入ること。たとえば職場でお客さんとの距離が2メートル以内になるなら、マスクを着用すべき条件となる。
◎人混みに行く必要があるときは、必ずマスクをする。
◎その際、アルコールジェルやスプレーを持ち歩ければベター。手すり・つり革等につかまったら、降りたときにすかさず手を消毒するならば完璧。また、マスクをはずした後や、食事の前にも消毒する。
◎特に公共交通機関(電車・バス等)に乗る際は、「マスク」を着用し、「消毒スプレー」を持つべし。
◎自転車・バイク・自家用車で通勤できるなら、その方がよい。ただし、むやみに自家用車通勤するとトラブルのもととなる可能性がある。
追記。「人混みに行かないようにする」が最優先事項。しかし、やむを得ず人混みに行く必要がある場合には、感染していようといまいと、マスクをすること。5/16「厚生労働省:「基本的対処方針」の実施について」の「2.社会生活上の取組みについて」にも「マスクの着用等」が書かれている。
マスクをしなくてよい状況もあることは上述のとおりだが、「人のいるところに外出するときはマスクをしておく」というルールを守っていれば、最大公約数的に適切な行動となる。
■具合が悪くなったら
◎A:咳や鼻水などの「呼吸器の炎症にともなう症状」に加えて、
B:突然の38℃以上の高熱があり、
C:全身のだるさ、頭痛、筋肉痛などをともなうとき
は、インフルエンザの可能性を疑う(Cはなくてもかまわない)。
追記。「発熱」について、メキシコの事例では発熱の症状が見られなかった例が多いとの報告もある。が、現時点では厚生労働省の症例定義に基づいて、発熱の項目を入れている。今後、新しい知見が出てくる可能性はある。
追記。2009/05/20 18:34 【共同通信】 「舛添厚労相は「神戸市の症例43人のうち、9割以上の人に38度以上の高熱があった」と述べた。」
◎具合が悪くなったら、職場に絶対行かない(他の人に絶対うつさないという気持ちが最も重要。具合が悪くてもとにかく行くという根性論は今すぐ捨てる)。
◎具合が悪くなったら、絶対に人混みに行かない。いくらかかりつけであっても、いきなり医者に行くのも禁止。
◎家の中から、「発熱外来」に電話で相談する。具体的にどこに連絡すればよいかについては、「厚生労働省:都道府県による新型インフルエンザ相談窓口(2009年4月30日現在)」のページを参照のこと。
◎受診のために外出するときは、咳エチケットを守る(咳をするときにはティッシュやマスクなどで口を覆う)。手だとそのまま触れてしまう可能性が高いので、何もないときは袖口で口を覆う方がよい。→厚生労働省による咳エチケットpdf。デーモン小暮閣下のコメント「デーモン小暮閣下の地獄のWEB ROCK: DC11.01.22: 続・新春毒舌会。」も参照。間違っても、「国際空港ターミナルで、日本人だけマスクマン。その光景は、国際道徳に反するなどではなく、滑稽だ。礼儀的にもマスクはとった方がいい。」(TSUYOSHI TAKASHIRO -BLOG-|honeyee.com Web Magazine)などといった考え方をしてはならない。
※個人個人が行うことのできる対策(国立感染症研究所感染症情報センター)pdfも簡単にまとまっている。
■実際にどういう状態になるの?
厚生労働省による新型インフルエンザ対策ガイドライン(pdfファイル)の161ページ以降に「新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定(一つの例)」が載っているので、どのような社会状況になるか等についてのシミュレーションの一例を見たい場合はこちらを参照のこと。ただし、これは強毒性の場合なので、今回のインフルエンザはこんなにひどいことにはならないと思われる。もっとも、鳥インフルエンザが来たらこんな感じと思われる。
■公式発表
デマ等にはまどわされないように。
■とりあえずこんなもん。
とりあえず、これくらいのことがしっかり守ることができればよい。
私自身は連休中に備蓄関係その他はすべてそろえていた。そして5月17日、日本国内での患者の発生の報を受けて、すでに関東地方にも潜伏期の感染者がいる可能性が非常に高いと考え、マスクをつけて消毒ジェルを携行し始めた。
しかし、17日の東京都内では、マスク率は数パーセント程度でしかなく、マスクをしていると感染者と思われて人がよけていく状況であった。本来は逆である。マスクをしている人が、していない無防備な人から離れなければならないはずなのだ。
すべての人が、正しい知識に基づいて、適切な行動を取れることを望む。それによって、自分や周囲の大切な人(家族、職場の人、友人、などなど)を守ることができるのである。
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>致死率は0.4%と低い。
0.4%はメキシコのみの数値、しかもかなり精度の低い推定値です。メキシコ以外では非常に低い値であり、「危険性は非常に低い」とWHOは表明しています。
http://www.who.int/csr/disease/swineflu/assess/disease_swineflu_assess_20090511/en/index.html
>高齢者・乳幼児・他の病気を併発している人は、重症になり、生命の危険のある可能性も考えられている。
正確には高齢者・乳幼児・妊婦・慢性疾患者です。慢性疾患者の定義は上記WHOの発表を参照。
安物マスクは感染予防には効果がないんだってば...
新型インフルエンザ対策情報ありがとうございます。
マスクは使い捨てと言うことですが、
マスクについたウィルスは何時間ぐらい猛威をふるっているのでしょうか?
紫外線で退治は出来ないのでしょうか?
出来れば、情報お待ちしております。
お疲れ様です。インフルエンザの国内感染拡大を防ぐ(国防)為にも、このサイトをより多くの方々が拝見されることを願いますが、一般に非感染者のマスク使用及びうがいは感染防止効果が殆ど無いように言われています。が、一般にインフルエンザウイルスは湿度を嫌う事と、気道及び鼻腔粘膜に異物が付着し炎症を起こす事により、炎症を起こした脆弱な部位からの2次的な感染を考えれば、吸気の保湿及び粘膜保護には充分な意義があると思います。
要は、必要以上に騒ぎ過ぎず、より多くの人が各自感染防止意識を持ち、高める事が大切だと思われます。今回のように潜伏期間が一週間もある場合、国は、空港検疫などは無駄である事を早く理解し、国内感染者の治療環境の充実と非感染者への意識啓発を高める為の正しい危機管理マニュアルを作り上げるべきではないでしょうか。ウイルスが弱毒性で良かったものの、強毒性で更にテロ等人為的な目的で国内進入した場合、この国は滅んでしまうでしょう。
新型インフルエンザ完全対策情報ありがとうございます。所感として、マスクに関して、ある意味そこまで神経質に取り扱うならば、外出時の自己の接触物に関する除菌作業等も同じようでなければ、
中途半端になると思いました。例えば、外出から戻った時の玄関や部屋のドアノブ、照明のスイッチ、鍵(これらは手を洗浄する前に接触してるので)などや、外出した時の衣類・カバン(外部からの飛沫物が付着している可能性がある)、買い物などで外部から持ち込んだ物、食品・書籍等(店舗陳列時に飛沫物が付着している可能性がある)などなどです。これからは、玄関ホールはアルコールウエットティッシュ・二酸化塩素薬液スプレーなどを用意した、「簡易除菌ルーム」みたいになるのではないでしょうか…。なんというハワード・ヒューズ!w
マスクで予防!在庫切れ間近!うがい、手洗い、マスクが重要!
厚生労働省によると、新型インフルエンザのパンデミックが発生した場合、日 本でも、約3,200万人が感染し、約17~64万人が死亡する恐れがあると想定されています。
発生直後は食料品の需要が一時に集中し、思うように手に入らないおそれもあります。不要不急の外出をしなくてもいいだけの最低2週間程度の食糧・日用品は準備しておきましょう。
管理人より。このコメントのリンク先ショップについて、管理人は決して推奨しません。まず、医療従事者以外にN95マスクは不用です。また、備蓄しておくとよい三層不織布マスクですが、1日に1枚ではなく、1日数枚と考えるべきですから、50枚で50日と書いている時点で誤りです。さらに、三層不織布マスクは1枚あたり5円~15円くらいが相場と考え、それ以上のものは高すぎると考えてください。つまり、50枚なら300円~750円くらいが妥当な価格水準であり、「3780円」とか「6300円」とかは「ケタ一個多い」レベルとなります。この情報をもとにお考えいただくよう、読者の皆さまにはお願いいたします。
インフルエンザのことがすごくわかりました