幸福実現党の研究(3)ノストラダムス戦慄の啓示
幸福実現党の研究第3回は、オバマ大統領の守護霊インタビューに見られるエスノセントリズムが、実は最近のものではなく、幸福の科学の初期から見られることを検証したい。その題材となるのが、『ノストラダムス戦慄の啓示 人類の危機迫る』と題された大川隆法著・幸福の科学出版 1991年刊の書籍である。
■幸福実現党の研究シリーズ一覧
(1)新型インフル/(2)オバマ守護霊/(3)ノストラダムス/(4)憲法試案/(5)金正日守護霊/(6)主要政策/(7)活動年表/(8)得票数・率/(9)陰謀説/(10)ゆくえ
■ノストラダムス戦慄の啓示
この本の序文と霊示は1991年1月11日の日付となっている。約20年前、まさに「新・新宗教ブーム」のまっさなかに発表された。ところが後に、これはあくまでも「ノストラダムスの霊」が語ったことであり、幸福の科学の考えではない、と主張されるようになる。
もちろん、この本が出版されたときには、幸福の科学ではノストラダムスという偉大な霊人の語ることだ、と尊重されていたことは言うまでもない。幸福の科学は霊言について1994年に格下げを行なっている。すなわち、「方便の時代は終わった」として、それまでに出版してきた書籍の内容を一部否定したのである。特に、「霊言」については大きなスタンスの変更があり、たとえばGLAの高橋信次氏について、それまで非常に持ち上げていたものを完全否定するようになった。しかし、霊のメッセージをやはり扱い続けるという点では、前回取り上げたオバマの守護霊や、最近発売された『金正日守護霊の霊言』でも、そのスタンスは変わっていない。
さて、「ノストラダムスの霊」は何を述べているか。まずは目次から。
- 第1章 ビヒモスとリヴァイアサン
- 第2章 誇り高き鷲の最期
- 第3章 人類滅亡の時
- 第4章 太陽の帝国
世界中の国々が、戦乱、天変地異、病気などによって滅んでいくさまが予言されている。フランス人のノストラダムスが「リヴァイアサン」と英語読みしていたりする点などは、まあ措いておくとしよう。
■ 日本=海の怪獣リヴァイアサン
そして、最後の4章で日本について書かれている。
「我語りしがごとく、海の怪獣リヴァイアサンとは、この日本のことなり。」
それが海の怪獣である理由は、
あなたがたは極東の小さな海洋国家に住んでいるからだ。
……(中略)……
その小さな島国が、
今、巨大な国家として浮上しようとしてきている。
これはリヴァイアサン以外の何者でもないのだ。
世界の認識は、あなたがたを怪獣として見ているということを
知らなくてはならない。
あなたがたは未来の人類史の栄光である。
この巨大なリヴァイアサンの胃袋のなかに、
救世主が生きている。
そのなかで、独り救世主が降りたち、
今、新たな教えを説こうとしている。
全世界から憎まれ、恐れられる「日本」が存在を許されるのは、その中から救世主が登場するから、というストーリーである。この文脈で、救世主が大川隆法総裁を指すことは言うまでもない。
一九九九年をもって、
全人類は、もはや破局を迎えたかのごとき状況に陥ることになる。
その前にも、世界大戦もあり、核戦争もあり、
大規模の病気も、流行病もあり、
天変地異もあり、津波、その他さまざまなことがあり、
場合によっては宇宙人の飛来等もある。
1980年代ごろにはポピュラーだった世紀末のイメージが語られている。
リヴァイアサンとビヒモスとは、
二大怪獣として今世紀末の世界を暴れるであろう。
そして、どちらもが血を流しながらも、
なんとか新たな時代に生きのびようとするであろう。
そして、二十一世紀以降の歴史は、
リヴァイアサンのものとなる。
ビヒモスは、「ユダヤの地に血塗られた国家を建てしことにより、砂漠の地には、ビヒモスが甦った。巨大なる陸の怪獣、ビヒモスが。」と書かれているため、アラブ国家(特にイラク)を指すものと思われる。
しかし、21世紀、日本が世界の頂点に立つと予言されている。
二十一世紀、リヴァイアサンは無敵となるであろう。
年老いた鷲の喉を食いちぎり、
また、力尽きた赤き熊を打ち倒し、
老いたるヨーロッパを嘲笑い、
中国を奴隷とし、朝鮮を端女(はしため)とするであろう。
彼らは金切り声を上げて、日本を、リヴァイアサンを非難するが、
その声は怪獣の耳まで届かない。
鷲はアメリカ、熊はソ連(この予言書では、中国がソビエトに食らいつくと書かれている。ソ連崩壊直前のことであった)。日本は「中国を奴隷とし、朝鮮を端女とする」という表現は、当時、物議をかもした。
さあ、しかし、怪獣諸君よ。リヴァイアサンの国民たちよ。
私はあなたがたに敬礼、脱帽しよう。
神が何ゆえに、このような東洋のちっぽけな国を選んで、
繁栄をもたらさんとされるのか、私にはわからない。
日本は(日本だけは)確実に繁栄する――現在も幸福の科学・幸福実現党が主張する内容と一致している。
この日本の国に、新たに興きたるところの「太陽の法」が、
北米を、南米を、ヨーロッパを、
ソ連を、中国を、韓国を、
そして中近東を、アフリカを照らし、
それらの人びとを救い得てのみ、
リヴァイアサンは歴史のなかで、初めて存在を許されることになる。
それまでは、長く辛い戦いが続くことになるであろう。
「太陽の法」とは、もちろん、大川総裁の説く教えのことである。
■日本の予言
さて、この後に日本についてのかなり詳細な予言が続く。その概要をまとめると、
- 1992年、軍事大国化の世論が高まる。
- 1994他国を攻撃しうる軍隊を持てるという解釈・方針を出す。元防衛庁に関わった者が総理大臣。アメリカが日本を守ってくれないという認識が共通するため、この方針は受け入れられていく。
- 1992年から3年ごろに朝鮮の南北統一をめぐっての紛争、場合によっては武力衝突。
そして、朝鮮の人びとにとって悲劇であることには、
彼らは、あまりにもリヴァイアサンの近くに
住みすぎたということだった。
かつて、リヴァイアサンにその脇腹を抉られ、食べられはしたが、
今度はその尻尾を食べられることになるだろう。
(中略)
この朝鮮半島において、
韓国の繁栄が、やがてリヴァイアサンの憎しみをかうこととなり、
そしてまた、歴史が繰り返されるだろう。
(中略)
そうしてリヴァイアサンが、今は鎖につながれていると思って、
その悪口を、雑言をやめなかったことが
自分の命とりとなったことを、
やがて後悔することになるであろう。
相手は海の怪獣なのだ。
怪獣に対して、小魚が嘲笑ったということが、
命取りとなったのだ。
それをまた深く悔いることが来るであろう。
「ノストラダムスの霊」は、2ちゃんねるの嫌韓厨を先取りしていたかのようである。
そして、さらにロシアに対する予言が続く。北方四島だけではなく、日本はシベリアへも触手を伸ばすが、それを止める力はどの国にもない。「シベリア地区を、再び植民地化する活動を始める」。
そして、中国である。
この国もまた二十一世紀において、
再び日本の植民地化に置かれることになる。
かつてと全く同じとは言わぬ。
しかし、事実上はそのようになる。
この中国の政治は、日本の政治の傀儡政権となる。
国内の混乱により、統一を保つために日本の進出を招くようになり、「そして親日的なる人びとが、その政権を担当するようになる」という。
「ノストラダムスの霊」は、「特ア(特定アジア)」という言葉を得意げに使っているネット愛国厨の先駆けだったのだろうか。
東南アジアも植民地化される。そして、大東亜共栄圏の復活かとおびえることになるが、「ノストラダムスの霊」はそれ以上だという。アジアのみに限定されることなく、先進諸国すべてが倒れた世界の中で、日本を阻むものはだれもいないというのだ。
そしてビヒモス(「中東にできる巨大なアラブの国家」)は、イスラエルと最後の決戦を行なう。2010年から2020年の間にイスラエルは消滅する(もっと早くなる可能性もあるという)。
ヨーロッパはほとんど「死体のような国家が広がっている」が、イギリスだけは日本と組んだために生き延びる。
……という予言がなされているのである。ノストラダムスの書いたとされる四行詩・六行詩とはまったく関係なく、ひたすら「ノストラダムスの霊による新予言」とでもいう内容となっている。
■読ませてはならない
そして、最後にノストラダムスの霊は語る。
この私の語った未来史は、
決して、それが成就するまで諸外国に伝えてはなるまい。
諸外国の人びとには読ませてはなるまい。
翻訳してはなるまい。
日本人の胸のうちに秘めておけ。
これを、この内容を、
英語や中国語や韓国語には、決して訳してはなるまい。
そりゃあ、訳さないほうがいいだろうという内容ではある。
この霊言に対して、大川隆法氏は、このように「あとがき」に記している。
第4章に至って、突如、この世界の危機の当事者が、我われ日本人でもある、ということに思い至るにあたって、心を寒からしめたのは、私一人ではないであろう。
ノストラダムスの予言は、おそらく的中率は、七割から八割を越えるのではないかと推定している。百パーセントではないことが救いではあるが、しかし、大きな流れとしては、おそらく実現するべきものは実現し、的中すべきものは的中してゆくのだろう。
日本が世界を力によって制圧していく。しかし、世界からは当然、嫌われる。それでも受け入れられるためには幸福の科学の伝道が必要だ、というのが本書のテーマとなっている。
海の怪獣は嫌われている。力が強すぎるがために、
エゴイスティックであるがゆえに、
また、他の者の利益を考えないがために。
あなたがたが許され、
世界にかろうじて受け入れられる唯一の保証は、
あなたがたのその胃袋のなかに、
今、育っている救世の光を、
これを世界に伝えること。
これ以外に道はないのだ。
日本が世界を軍事的・経済的・政治的に侵略していき、21世紀の超大国として世界に君臨するという予言に対して、大川隆法氏は七〜八割以上は当たるだろうと述べるだけである。それに対して積極的に賛同するわけではないが、阻止しようとか、反対しようとも考えてはいない。ただ、その「嫌われ者日本」が世界に受け入れられるには幸福の科学の救世の光を世界に伝えるしかない――という、特に信者向けのアジテーションとなっている。
世界を救うのでもない。怪獣扱いされる日本を変えようというのでもない。日本が世界に君臨する(大東亜共栄圏がさらに拡大したものとなる)未来図を描き、それによって苦しむ世界の人々を救おうというような発想もない。私は、ここに、世界宗教と相容れない性質をみてしまうのである。
世界宗教となりえる思想は、少なくとも、国境という枠組みにとらわれず、人(あるいはすべての生き物)に対する平等かつ広範な博愛の心を抱いていなければならないだろうと思う。ユダヤ人(ヤハウェを信仰する者)だけを救済するユダヤ教は世界宗教となりえず、「よきサマリア人」などのたとえにもみられるとおり、博愛的な教えを説いたイエスの教えは世界に広がっていった(もっとも、イエス自身の教えと今のキリスト教が同一とは思えないのだが)。
幸福の科学の発想は、ノストラダムスの霊言に対して、「日本人でよかった。でも嫌われるから、それを防ぐには……」という、あくまでも日本人という概念に立脚した視点でしか見ていない。日本という国家の枠組みでしか見ていない。日本人を罵倒する韓国人、8億人が死ぬという中国人、あるいは滅んでいく鷲、熊といった大国の人たちが不幸を味わっていることに対して、その人たちの立場での視点は全くなく、それを何とかしたいという「救済」の心が感じられない。
「ノストラダムスの霊」はなぜここまでジャパニーズ・エスノセントリズム的なのか。あるいは、なぜ、仏陀の再誕であるエル・カンターレ大川隆法ともあろう存在が、ノストラダムスの霊のエスノセントリックな発言をたしなめず、あるいはそれに対して仏陀としての見解を示さないのか。
幸福の科学は、20年前には、エスノセントリズム宗教であったといえよう。そして、それは今も変わっていないのである。
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