幸福実現党の研究(5)金正日守護霊の霊言
最初に断っておくが、今回の研究にあたっては、関連図書すべてを読み込んでいるわけではない。幸福実現党宣言シリーズも1と4しか買っていない。しかし、ここで取り上げた書籍についてはすべてちゃんと購入している。それは、公刊された書籍・雑誌に掲載された内容をもとにしなければ、「守護霊メソッド」のように、相手が言っていないことを勝手にでっち上げて批判するという恐ろしいあやまちに陥ってしまうからである。
そして、この研究は幸福実現党に「投票するな」でもなければ「投票せよ」でもない。ただ単に彼らの主張を記録し、分析し、そして私の一個人としての感想を添えているものである。アジテーションやプロパガンダではなく、また何かを笑って喜ぶようなものでもなく、幸福実現党の主張する政策についての判断材料をまとめておくのが目的である。
さて、そんな前置きが吹っ飛んでしまうのだが、タイトルを見た瞬間に、これは買っておかねばなるまい、と手を伸ばしていたのがこの本だ。
■幸福実現党の研究シリーズ一覧
(1)新型インフル/(2)オバマ守護霊/(3)ノストラダムス/(4)憲法試案/(5)金正日守護霊/(6)主要政策/(7)活動年表/(8)得票数・率/(9)陰謀説/(10)ゆくえ
守護霊にインタビューするというスタイルは、研究(2)で取り上げた「オバマ守護霊インタビュー」とまったく同じなので、その「守護霊メソッド」(命名は当該ページブクマコメントにてid:nijuusannmiriさん)についての私の見方については、「幸福実現党の研究(2)オバマ守護霊インタビュー」のページを参照していただきたい。
以下、そのページをすでに読まれているという前提で分析していく。
■まえがきとあとがき
この本がどういう位置づけにあるのか、大川隆法氏(「国師」らしいが、朝廷から大川隆法氏に国師号が贈られたという話は寡聞にして知らない)が述べた文章である。読点が多すぎて読みづらいが、とりあえず氏はこのように述べている。
まえがき
本書では、日本の今後の国政を見通す上で大切と思われる、北朝鮮指導者、金正日の本心を探った。「守護霊」と言えば、宗教的であるので、信じない人も多いと思うが、「金正日の潜在意識にアクセスした」と説明すればわかりやすいだろう。「そんなことがはたしてできるのか。」と疑問に思う方も多いだろうが、私は日本最大規模の宗教団体『幸福の科学』の総裁であり、教祖でもある。不思議でも何でもない。これは、神通力の一つである。かつて三国志の名軍師、諸葛亮孔明が、千里の彼方に勝敗を決しえたのも、このような神通力があったからだと思う。
本書の付録として、マスコミが、次期総理最有力候補に持ち上げようとしている民主党代表、鳩山由紀夫氏の守護霊へのインタビューも収録した。彼がどういう人物かを鑑定する材料となるだろう。
なお、本霊言は、幸福の科学総合本部で行われ、男性幹部二名がインタビューし、女性幹部三名が立ち会った。
二〇〇九年 七月十日
国師 大川隆法
あとがき
本書は、冗談や、空想目的で書かれたものではないし、特定個人を攻撃するために出されるものでもない。あくまでも、私たちが「国難」と呼んでいるものの正体を明らかにするための試みである。
政治家、外交関係者、防衛関係者には是非読んでほしいし、一部の心あるマスコミ人にも読んで頂きたい。
国民に対し、「国難」の警鐘を鳴らすのは宗教家としての使命、天命と信じ、批判、非難を怖れず、勇気をもって刊行することを決意した次第である。
今の世に、たとえ受け容れられずとも、国師として私が発言していることが正しいかどうか、百年後の人たちの評価に判断を委ねることとしたい。
二〇〇九年 七月十日
国師 大川隆法
いや。本人が考えているかどうか裏付けのとれないことを「守護霊に聞いた」として世に広め、あたかも本人の「潜在意識」がそう考えているかのように決めつけて世間の印象を操作しようとし、さらに「国難の正体」を裏付ける証拠として挙げることについて、私は暴力的な言論だと思う。
いや、本人ではなく守護霊だ、と言うのだろうか。では、以下のようなアマゾンレビューがあることをどう思われるだろうか。(以下、Amazon.co.jp: 金正日守護霊の霊言: 大川 隆法のレビュー欄より引用)
真偽の程は、読者の判断に委ねられるほかないであろうけれども、その内容は、恐るべき具体性を持っている。
例えば、金正日の守護霊(つまり、金正日の本心)は、次のような発言をしている。
(中略)
次に、鳩山由紀夫の守護霊(つまり、彼の本心)。
(中略)
〔感想〕
まず、金正日は、日本人による朝鮮半島の支配という歴史から、日本人は、朝鮮人の奴隷になるべきという、己の正義を主張している。国連を敵視し、我々との共通の認識や価値観の基盤のうえには立っていないようである。彼の正義と、国連・日本の正義とは異なる。これを踏まえたうえで、北朝鮮に対する友好戦略が、どれほど意味をなすか、という点が問われる必要があるだろう。
また、すでに、金正日の命令ひとつで、核ミサイルを日本に打ち込める体制が整っているという点は、恐るべき情報である。
金正日は、独裁者ではあるが、軍事的な戦略家としての側面を持っているように思われる。彼が、我々との共通の価値観のうえに立っているのではない以上、こうした側面を見逃すことは、日本にとって、極めて危険な状態にあると感じる。
フィクション、ノンフィクションの是非を問う以前に、
恐ろしいほどのリアリティを感じた。
金正日はこれほどの狂人なのか。
そして、今の日本人は、その現状に対する認識はない。
また、鳩山氏の宇宙人度はここまでか。とも。
あまりに恐い現実なので、読み終えた後に、
これは現実ではないのだ思いこみたくなるほどである。
もちろん「信者乙」で済ませればよい内容である。しかし、まがりなりにも「研究」と称する以上、きちんと分析しておこう。
これらのレビューは(あるいはそれにつけられたコメントも含め)守護霊の発言を、本人の発言として受け取っている。金正日の「本心」、鳩山由紀夫の「本心」として受け取っている。少なくともそういう人たちがいて、アマゾンのレビューという公開の場でその見解を堂々と表明している。守護霊の発言をもとにして、その対象者の人物評価を下している。
もし後で「これは本人がそう言ったとは言っていない。守護霊の言葉だから、本人も気づいていないことを語っているかもしれない」という言い訳が出てきたとしても、それは言い訳にならない。「金正日は、日本人による朝鮮半島の支配という歴史から、日本人は、朝鮮人の奴隷になるべきという、己の正義を主張している。」と書いた人物がいる以上、"一部の人たちは「金正日の守護霊の発言」を「金正日の本心」と信じている"ということは紛れもない事実であるといえる。
守護霊に語らせ、その内容をもとにして人物評価を行ない、政策を決定する。それが幸福実現党だ。それは、「まず、ものごとをありのままに正しく分析し(あるいは、分析しようとし)、その結論から導かれる現実に対して対応を考える」という態度からはかけ離れていると思われる。日本で幸福実現党政権が成立し、「金正日の守護霊が明日核ミサイルを発射すると言ったから、こちらから先制攻撃しました」という発言がまじめに語られるような時代がやってきたら、私はもうどこかに亡命する。
■第1章 金正日守護霊の霊言
金正日守護霊は何を語ったか。冗長になるので、ここでは目次をすべて引用してみる。最後の項目以外はすべて「金正日守護霊」の発言の要旨をまとめた内容になっている。
- ミサイルは国威発揚の手段
- 中国は、北朝鮮を強化して、アメリカの覇権を終わらせようとしている
- ミサイルは日本がいちばんパニックになるときを狙って撃つ
- 北朝鮮の味方をしてくれる"朝日(ちょうにち)新聞"はありがたい
- わしらの"部下"が日木の政権を取ろうとしておる
- 日本の金融資産を奪って、北朝鮮が世界第二の大国になる
- 偉大な"将軍様"を戴く北朝鮮の人民は日本人より幸福
- 韓国は北朝鮮が併合する
- 共和党政権は怖かったが、オバマは手のひらに載せているようなもの
- 中国の胡錦濤政権は上手に二枚舌を使っている
- 北朝鮮は韓国と日本を呑み込み、中国は世界の覇権を握る
- 核ミサイルのボタンを押すときに「良心の呵責」などない
- 死よりも"仕事"をやり残すことのほうが不安
- ミサイルに核弾頭を付けたら陸地を撃つ
- ミサイルを皇居に撃ち込めば、日本人は衝撃を受けるだろう
- 選挙中や「原爆の日」に撃ち込めば効果的
- ミサイルの命中精度は上がっている
- 私は、毎週、居場所を替え、ダミーも使っている
- 命令を録音してあるので、私が死んでも核は発射できる
- 米軍基地を攻撃されても、核戦争を避けたいオバマは反撃しない
- 中国とロシアが団結したら、アメリカだって手が出せない
- 日本人を拉致した所は日本への攻撃ルート
- 日本人は全員が拉致されても文句は言えない
- 国民の餓死は物資を入れない国際社会のせい
- 自分が霊であることを分かっていない「金正日の守護霊」
2ちゃんねるの嫌韓厨が「金正日はこう考えているに違いない」と書いた内容ではない。「国師」大川隆法氏が、金正日の守護霊(潜在意識)にアクセスし、金正日は本心でこう考えているのだと主張する内容である。見事なまでの反中国・反北朝鮮。「特定アジア」という用語を使って批判する一部のネット愛国人士でも、ここまでの決めつけを行なったことはなかっただろう。
こうしてみてくると、金正日守護霊の口を通じて、幸福の科学・幸福実現党の世界観が浮かび上がってくるように思われる。
「金正日守護霊」は、選挙中など、日本が最もパニックになるときを狙って核ミサイルを陸地に撃つと言っている。その目的について、守護霊とインタビュアーはこんな会話を繰り広げる。
――それで、何を目的としている?
金正日守護霊 目的? 要するに、日本を恐怖の支配下に置く。
――日本が、それに対して右翼化するとは思わないのか。
金正日守護霊 全然。この国には、もう、六十何年、全然、そんな気配はない。何しろ、われわれのスパイが、この国を牛耳っておるでね。
――日本の左翼思想があるから、ミサイルを撃ち込んでも大丈夫と?
金正日守護霊 そう、左翼思想が北朝鮮と中国を守ってきたんじゃないか。その勢力が、今、この国を乗っ取って牛耳ろうとしているんだろ。まさしく、今、北朝鮮の支配する国になろうとしているんじゃないか。
――その左翼思想があるから、ミサイルを撃つ自信があるんだな。
金正日守護霊 というか、日本は社会主義の国じゃないのか。よく自民党のタカ派が変なことを言っているだけで、もともと社会主義国だと、わしは理解しておる。
――そうすると、日本のマスコミの動きは非常にありがたいということ?
金正日守護霊 "朝日(ちょうにち)新聞"のことか。
――そうだね。
金正日守護霊 それは"朝日(ちょうにち)新聞"はありがたいよ。北朝鮮の味方を、いつもしてくれる。これが日本のナンバーワンの新聞なんだろ。
――産経はどう?
金正日守護霊 産経なんてのは、あんなの、くずだ。
「左翼が日本を牛耳っている」という幸福実現党の現状認識が浮かび上がる。
また、「ちょうにち新聞」というスラングを金正日の守護霊が言い出していることに注目したい(→朝日新聞 (ちょうにちしんぶん) - アンサイクロペディア)。そして、インタビュアーも「そうだね」と応じている。彼らにとって、「ちょうにち新聞」という言葉は日常語らしい。
公明党についても、このように述べている。
――公明党はどう思う?
金正日守護霊 公明か。まあ、公明も仲間だな、どっちか言えばな。在日の支援をずいぶんしてくれるので助かっとるよ。在日のわれらが先兵たちに選挙権を与えようとして頑張ってくれているのでなあ。ありかたいなあ。しっかり、国家公務員のなかに、うちのスパイを入れたいもんだ。
在日に選挙権を与えることに反対だと主張している。もう、ネットでよく見かける「ウヨク」発言は、幸福の科学の信者によるものではないか、と勘違いしてしまいそうな勢いである。いや、これらの発言を見て、「なんだ、マトモなことを言ってるじゃないか」と言いかねない人たちが一定数はいるように思われる。
この後に「うーん、幸福実現党? なんだ、それ。」「うーん、うーん、知らんなあ。」という、ある意味最もリアルな発言が飛び出すのはご愛敬。
何はともあれ、この金正日の守護霊によれば、このような世界観が浮かび上がってくる。中国は北朝鮮を利用し、世界の覇権を握ろうとしている。北朝鮮はそれに応じて世界第二の大国になろうとしており、韓国を併合しようとしている。北朝鮮は日本を呑み込むためにスパイを送り込んでいるが、左翼思想に侵された日本はそれを防ぐことができない。金正日は皇居に核ミサイルを撃ち込む。日本を乗っ取るので、経済的には損害を与えたくない。
そんな北朝鮮の侵略を防げないのが、鳩山民主党政権だ、と本書は続く。
■ 第2章 鳩山由紀夫守護霊の霊言
- 私は北朝鮮の友情を信じる
- 日本にミサイルが落ちてきたら防衛を考える
- 北朝鮮よりもアメリカのほうが悪い
- 左翼勢力の国が粛清を行った証拠はない
- 先行きは「米・中・日」の三国同盟しかない
- 「鳩山兄弟で連立政権をつくる」という密約
- 私は何もしなくても当選する
- 政権交代以外のビジョンは何もない
- 私は過去世において、宮中で歌を詠んでいた
- 幸福実現党を脅威とは思っていない
「政権交代以外のビジョンは何もない」という「鳩山由紀夫守護霊」の発言は、「正直言えば、(どうすればいいのか)さっぱりわからず、ただ「変化」を訴えているわけです。とにかく変化あるのみ。抜本的なアイデアがあるわけではありません」と語った「オバマ守護霊」と同じ趣旨である。「変えると言ってるだけで具体性はない」と、鳩山守護霊もオバマ守護霊も語ったことになっている。いや、正確には「オバマも鳩山も、変えると言っているだけで具体性はない」と幸福実現党が認識しているということだと思う。
それにしても、「鳩山兄弟で連立政権をつくる」と鳩山守護霊が語ったなどと記して本当に大丈夫なのだろうか。いや、「鳩山由紀夫守護霊(鳩山由紀夫の本心)」と「鳩山由紀夫」は違う、というのかもしれないが、少なくともアマゾンレビューに投稿している人たちはイコールだと思っている。それで名誉棄損に問われないのか、法律に詳しい方にお聞きしたい。それとも、「だれそれの守護霊(=潜在意識、本心)」が言ったことと表記さえすれば名誉棄損には問われないのだろうか。
「日本侵略計画(金正日守護霊)VS 日本亡国選択(鳩山由紀夫守護霊)」とサブタイトルをつけられた本書は、金正日や鳩山由紀夫の潜在意識=本心を明らかにしたものだというのが出版趣旨なのだろうが、私にとってそれは、幸福実現党・大川隆法氏の本心を明らかにしたものと読めてしまうのであった。
■幸福実現党の研究シリーズ一覧
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何を大真面目に取り上げているのですか?
なんか近親憎悪に見えますよ。