Twitterがタイムラインにおける有料広告の挿入を禁止した理由
Twitter社は、2010年5月24日の公式ブログ「The Twitter Platform」記事にて、サードパーティーによる「タイムラインにおける有料広告の挿入」を禁止した。これは、タイムラインの健全性・信頼性・価値を保つためであると述べられている。ただし、タイムラインの外側での広告は問題がないとされる。
ツイッターでの広告ツイートをプロモートする「つあど」などはグレーゾーンとなろうか。
以下、現時点で日本語版が出ていないので、全訳ならびにコメントを掲載する。
ツイッター社による発表
以下、The Twitter Platformの独自訳である。公式な翻訳は追ってTwitterブログ(日本語版)にて公開されるだろうが、少々フライング気味に。
ツイッター・プラットフォーム
永続的な価値
わたしたちがツイッターの未来を論じるときには、永続的な価値のプラットフォームを作ることのできるメカニズムを意識しています。そのようなプラットフォームを構築するために最重要な3つのメカニズムとは、拡張性を持たせて設計すること、プラットフォームの機能性のための強固なAPIを提供すること、ユーザーの経験の長期的な健全性と価値を保つこと、です。
この投稿の目的は、わたしたちが何を作っているか、会社と生態系をどのように維持しようとしているのか、パートナーの広大な生態系において大きな機会があるのはどこだとわたしたちが信じているか、ということを説明することです。
ツイッターは開かれた、リアルタイムの紹介・情報サービスです。一日単位で何百万人という人に、面白い人、流行、内容、URL、組織、リスト、会社、製品、サービスを紹介しています。こういった紹介によって、直接的なリアルタイムの関心グラフを形成する結果となります。どの瞬間にも、ツイッター上でつながる広大なネットワークは、関心という観点からの世界図を描き出すのです。わたしたちはそういう人々、組織、サービス、自分に興味を持ってくれている他のユーザーをフォローし、お返しに、他の人たちが自分をフォローしてくれます。
このリアルタイムの開かれた情報プラットフォームを推進するために、短文形の公開/定期受信ネットワークとそのネットワークへのアクセスポイントを提供しています。アクセスポイントにはwww.twitter.com、m.twitter.com、そしてiPhoneやBlackBerryやAndroidデバイスのためのツイッターがバンドルされた携帯クライアントなどがあります。他の人たちがアクセスポイントを作れるように、ネットワークの機能の中で完全なAPIを提供しています。タイムラインという形式において、ネットワークのコンテンツの完全性と関係性を管理しています。そして、ユーザーが喜びや満足を得られるように、わたしたちは時間とお金を多大に費やし続けるつもりです。最終的に、Annotation(注釈)やジオロケーションから、会社のためのサポートチケットを発送できるヘッダーに至る広い範囲のイノベーションを可能とするネットワークの拡張性を維持しなければなりません。Twitter API を利用しているアプリケーションは10万以上あり、ここ数か月のうちにアノテーション経由でのプラットフォームの拡張については大きく成長すると思われます。
わたしたちの責任も、そこから拡張します。ネットワーク、ツイッターがバンドルされた端末(SMS、ウェブならびに多く使われているプラットフォーム上でのツイッタークライアント、ツイッターがバンドルされたウィジェット)、一貫したユーザー経験、プラットフォームのための持続可能な収益モデルに関して、その健全性・信頼性・規模についてツイッターは責任を有しています。そのそれぞれに対して、最大限可能な経験を提供していきます。
生態系に関して明快にする
先月のChirp デベロッパー・カンファレンスにおいて、開発者の皆さんが「明確さ」を望んでいるということを、はっきりと耳にしました――ツイッターが提供しなければならないとわたしたちが確信するもの、ツイッターが提供する生態系にわたしたちが見ているもの、もしあるならどこに線引きがなされるのか、についての明確さです。わたしたちは、プラットフォームという環境において提供するサービスと責任について概説してきました。生態系に対してさらに明快にするために、ネットワークの完全性・健全性・価値を維持するためにわたしたちが引く境界線についても明記しましょう。
現在、200人以上の人を雇っており、機会の要求に応じてこの投資を増やすことを計画しています。この投資を維持するために、「Promoted Tweets」を公開しました。これらのツイートは、まず検索に、それからタイムラインに現われます。ただし、それはタイムラインの完全性と信頼性を維持する形で行なわれます。すでに告知しましたように、Resonance(反響)のような革新的な測定指標を使い、「Promoted Tweets」はユーザーにとって意味があってユーザー経験を拡張するときにのみ示されることとなります。
わたしたちの主要な関心は、ネットワークの長期的な健全性と価値です。ユーザー経験における「Promoted Tweets」の効果を慎重に計測するサービスですから、短期的な収入機会は放棄し続けます。リアルタイム紹介と情報の中心的な経験がユーザーのために守られ、すべての広告主・ユーザー・ツイッター生態系の長期的な成功に目を向けることは、決定的なことです。この理由のために、「Promoted Tweets」は別として、Twitter APIを利用するいかなるサービスにおいても、タイムラインに有料ツイートを挿入するサードパーティーはすべて許可しません。わたしたちは、この発表によって意図されるものを明確に説明するため、利用規約の言葉を更新しています。間もなく公開される最新の利用規約をお読みください。
わたしたちはなぜこの種の広告を禁止するのでしょうか。第一に、サードパーティー広告ネットワークは、必ずしも、ツイッターが作り出した独特のユーザー経験を守ろうという視点を有していません。それは、ツイッター・プラットフォームの長期的な健全性を損なって、それぞれの市場シェアや短期的な収入のために最適化されています。たとえば、サードパーティー広告ネットワークは、たとえユーザーの不満を引き起こしてツイッターの利用総数そのものを減少させることになろうとも、広告効果とクリックスルー率を最適化しようとするかもしれません。
第二に、ユーザーにとって役立つ永続的な広告ネットワークを構築する土台は、短期的なマネタイゼーションではなく、イノベーションに置かれるべきです。ツイッターは、プラットフォームの長期的な健全性と価値にきわめて依存しており、そこに責任を有しています。ですから、「Promoted Tweets」の焦点は、ユーザーのために価値を生み出す方法を探ることに当てられねばならないのです。サードパーティー広告ネットワークは、短期的なマネタイゼーションのために最適化されているため、最前のユーザー経験を革新・創造することを犠牲にしかねません。創造的な製品開発を奨励し、イノベーションに危険をもたらすクライアントを抑制することが、わたしたちの責任であると確信しています。
ネットワークを維持し、ツイートの流れをスパムから守り、ユーザーの要求に応え、サービスの規模を調整するために必要なコストをツイッターは負担している、ということを念頭に置いていただくことは重要です。ツイッターはサードパーティーの有料ツイートについてサポートするためのコストを費やすことになります。というのも、ユーザーがツイートの流れの中で見るものについては何であれ、ツイッターはサポートメールを受け付けているからです。サードパーティーはこれらのコストに関して、比較すればほとんど負担していないといえます。
イノベーションを促進する
ツイッター・プラットフォーム上でのイノベーションの機会は、今ほど大きかったことはありません。明快さを提供し続けるために、わたしたちのガイドラインの原則には以下のようなものが含まれます。
ユーザーが何をツイートするかについて、わたしたちはコントロールしようとしません。そして、ユーザーは自分自身のツイートを所有します。
広告を売り、縦断的なアプリケーションを作り、ブレイクスルー分析を提供するなど多くを提供する機会があると確信します。多くの企業が、多くのツイッタークライアントにおいて、タイムラインの周辺のリアルタイム表示広告その他の可動的広告を販売しており、わたしたちはその広告から明示的な価値を得ていません。それは結構です。タイムラインの近辺に突然表示されるあらゆる種類の他のサードパーティーのマネタイゼーション・エンジンもありえるだろうと考えています。
他の会社がネットワークをマネタイズする無数の方法に、わたしたちが常に参加する必要があるとは考えません。
プラットホームは進化します。Annotationが出荷されるなら、現在可能なものだけでなく、ツイッター・プラットフォーム上に多くの新ビジネスの機会が出現することでしょう。会社や起業家たちは、わたしたちが想像もしたことのないようなものを、Annotationを使って作ることでしょう。ツイートの周辺ならびにツイートに関するあらゆる種類のリッチデータ、メタデータサービスを提供する会社が出現することでしょう。ツイッター・クライアントは、金融だとかエンタメだとか、異なった種類のデータ縦断サービスを提供することで差別化が可能です。生態系におけるメディア会社は、リッチなタグ付け能力を持つことになります。拡張可能なアーキテクチャのメリットを理解する人であれば、その力と可能性を理解するのです。それゆえ、Annotationによって提供される機会について、多くの人が書いてきました。
新しい利用規約では、一部の会社が時間とお金を費やしてきた行動について禁止することになることを、わたしたちは理解しています。わたしたちはできるだけ迅速にAnnotations機能を市場に届け続けます。それによって、どこにいる開発者でも、成長するツイッター・プラットフォーム上で革新的な新しいビジネス方法を創造することができるようになります。
このように目的・焦点・ロードマップを明快にすることで、何千という会社がツイッター生態系において明確な進路をとる助けとなりますように。
ツイッター社の主張の要点
要するにツイッターは「タイムラインを広告とかスパムとかで汚染するな」ということを述べている。であるから、タイムライン外の広告は今のところ制約されないようである。
裏を返せば、ツイッター社はタイムライン、すなわち「つぶやき」の集積そのものに大きな価値があり、それはユーザーによって作り出されるものであって、ツイッター社あるいは他のサードパーティーによってコントロールされるべきではない、という信念がうかがわれる(それはそうあるべきかとか正しいかどうかとかではなく、ツイッター社がそう信じているということである)。この点を理解した上で、ツイッターのタイムラインに蓄積されたデータを利用して収益を上げることについては、ツイッター社も「どうぞご自由に」と語っている。
ツイートの集積。それこそがツイッター社の大きな資産であり、「神聖にして侵すべからざる」絶対的な存在であるということになる。ツイッター社の方針を知るには、この価値観を認識することが必要であろう。
であるから、ユーザーが興味を持っている商品についてツイートし、それが結果的に広告になることについてはまったく問題ないし、アフィリエイト関係のツイートが混じる分には今回の規制対象というわけではないだろう(ただし、情報商材ツイッターのようなのはspamという観点から排除されるべきであると思う)。
微妙なのはつい先日発表された「つあど」のようなサービスで、一応ツイートするのは人力になるのだが、人工的にタイムラインを操作する性質がある以上、グレーゾーンではないかと思われる。
(湯川鶴章さんはTwitterがタイムライン上の広告を禁止=「つぶやきはユーザーのもの」【湯川】:TechWaveで「ペイ・パー・ポストやアフィリエイトはOKという認識」の上で解説されているが、TechCrunch「「長期的ユーザー体験が第一」―Twitter、サードパーティーのタイムライン内広告を全面禁止」や「秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログ : ツイッター社、他社がつぶやきをお金で売買するのは許さん、と公式ブログで表明」ではペイ・パー・ポストはブラックと解釈されている)
今のところ、明示的にはユーザーではなくサードパーティーによる直接的なタイムラインへの広告挿入が問題となっており、ユーザーを介した間接的広告投稿は一応可のようだ。しかし、それがユーザーによる投稿とは認められないレベルになった時点で禁止される可能性は充分にあると思われる。
ツイッター社はAnnotationなど、膨大なタイムライン情報データを活用する方法を提供するとアナウンスしている。だからこそ逆に、その元になるツイートの集積には手を出すな、ということになるようだ。
(2010/5/26追記)つあどは黒か白か
具体的なサービスとして、つあど twad.jpは大丈夫なのか、という疑問が提示されている。私は、「つあど」全体ではなく、それが提供する広告スタイルによって、限りなくダークなものと白があると考える(ただし、これは一個人の意見であって、ツイッター社の見解ではないことをお断りしておく)。
「twitterユーザー様 | つあど twad.jp」のページによると、「つあどには2種類のオファーがあります」という。以下、図を省略して引用すると、
一つ目は、広告主様が指定したつぶやき文章について、配信するかしないかを選ぶだけのオファーです。
この場合、オファーを承認するとつぶやきが配信待ちになり、指定した時刻に自動的につぶやきに成功すると報酬が発生します。
もう一つは、広告主様があなたにつぶやきの原稿をお願いするオファーです。
この場合、あなたは期限内に広告主様の要望に添うように、自分でつぶやきの文章を考えます。その入稿したつぶやきが広告主様に承認されれば、つぶやきが配信待ちになり、指定した時刻に自動的につぶやきに成功すると報酬が発生します。
私は、一つめはかなり難しく、二つめは条件付きで「白」と考える。その理由をきちんと説明しよう。
まず、二つめは、つぶやき文章を「自分で考える」ところがミソである。広告を自分で考えて自分で宣伝してあげて、それに対して報酬をもらう……ツイートはユーザー自身が生み出している。この点では普通に商品レビューを書いてアフィリエイトリンクを貼るのと同じで、問題は少ないだろう。ただし、それが広告費を受け取っての宣伝ツイートであることが明確にならないなら、やらせと認識され、クチコミマーケティング上最悪の事態を引き起こして炎上するおそれがあることは間違いない。
同様に、デジタルガレージのつぶレコの場合は、「サイトで入力したつぶやきはテキスト解析され、内容にマッチする商品をピックアップ」という仕組みなので、ユーザー独自のツイートが先にある。だから、これはツイッターの方針には違反しないと思われる。
一方、つあどのシステムの一つめはかなり「黒」と判断される可能性があると思う。広告主がオファーした広告ツイートをそのまま掲載するという意味で、それは「ユーザーによるツイート」かどうかという疑問が生じる(RTと同じ、と言い切れるかどうか)。
問題は、「つぶやきが配信待ちになり、指定した時刻に自動的につぶやきに成功すると」という部分である。この「指定した時刻」は、ユーザーが自由に指定できるわけではない。「パブリッシャー様(twitterユーザー)用FAQ | つあど twad.jp」では「つぶやきはつあどのシステムが自動的に指定時刻に配信します」(Q3)と書かれており、システム側にゆだねられていることがわかる。となると、たとえば数万ユーザーがある広告を指定し、それが一斉に配信されたらどうなるか。完全にspamと認識されるだろう。
もちろん、同一時刻でなくても、ユーザー数が増えた時点で、これらの広告ツイートは大きなノイズ化する可能性が高い。
そして、自分のサイトでタイムラインの横に広告が出るのではなく、タイムラインそのものに広告を表示させるタイプであるから、これは他のシステムでツイッターAPIを使っているところにも「つあど」に金を払った広告が表示されることになる。これは大きな問題である。
ちょっと離れた例を出す。現在、アメブロと楽天ブログは、RSSに広告が自動で埋め込まれる。ところが、RSSを読み出して表示させるサイトがあれば、広告はそのサイトでも表示されることになる。しかし、表示された外部サイトに広告料は入ってこない。たとえばOpenPNEでユーザーが「外部ブログ」にアメブロや楽天ブログで作成した自分のブログを設定すると、「最新ブログ」に広告が埋め込まれることになる。無料で提供されているSNSの一部では、「外部ブログにアメブロと楽天ブログは登録禁止」とされているものがある。無償提供しているところに勝手に広告を載せられると困るわけだ。
そうなると、「つあど」の場合、ツイッターのタイムラインを何らかの形で表示させているサービス(あるいはツイッター社そのもの)に対しても広告費を払うのか、という問題が生じる(いや、払うわけはないだろう)。これはフリーライドと言われても仕方ないだろう。
Yahoo!リスティング広告(旧オーバーチュア)やGoogle AdWordsは、広告と表示媒体が完全にリンクしている。つあどの場合はリンクしていない(少なくともツイッター社と金銭の絡む契約はしていない)。そこが問題といえる。
私としては、「つあど」は一度ペンディングしてシステムを練り直すべきではないかと思う。(この記事はつあどにもツイートしておく)
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