第14回「日本語教育と音声研究会」レポ:声優・若本規夫氏の操る声の秘密

2011年2月26日、早稲田大学にて第14回「日本語教育と音声」研究会(戸田貴子教授 - 早稲田大学大学院日本語教育研究科)が開催された。•参加費無料・事前申し込み不要ということで、興味ある分野でもあるため初参加した。

第14回のゲストは声優の若本規夫さん。私の予備知識ではしょこたんの「スカシカシパンマン」と、「人志松本のすべらない話」「嵐にしやがれ」のナレーションの人というだけのものだったが、その独特の声色はいやでも印象に残っていた。

当日、会場はなかなかの盛況で、第一部の若本さん目当ての人がおそらく過半数だったように思われる。以下、会場にてポメラでメモした内容をまとめた。※個人のメモであり、本人の発言そのままではないことをご了承ください。

2011年2月28日18:04| 記事内容分類:言葉| by 松永英明
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第一部:音声で気持ちを伝えるー声優としての音声表現の工夫

若本規夫さん登場。「音声表現の工夫」というテーマで、どのように「声」による表現を行なっているか、プロの声優に話を聞くというのが今回の研究会の趣旨である。以下、事前に用意された質問などをもとに話を聞くが、どうも話が脇にそれがちであった。しかし、戸田教授がまた上手にそれをまとめてしまうのだった。

発話キャラクタ

――アニメ「名探偵コナン」の大滝警部役(関西方言)のように、方言話者を演じる際の特徴は?

大滝警部の場合、自分も大阪だから何の苦労もない(笑)。方言を表現するには、通り一遍のアクセントでしのぐしかない。わざとらしくやるしかない。

大阪弁はユニーク、その奥のメンタリティを含めて、二カ国語をはなせる機能を持っていると思っている。大阪弁のニュアンスを共通語で話すと、そのニュアンスで思わぬ雰囲気や親近性が出る。大阪出身の声優は二カ国語の土壌を持っていると思うが、きついキャラクターなので、大阪出身者の特徴が端々に出がち。でも自分は出ない。アナウンサーをまねて関西弁のアクセントは消してしまった。

――ドラマ「プリゾン・ブレイク」のティーバッグはかなりの悪党だが、経験のない役柄を演じる(吹き替えする)場合は?

こういう経験をしていなければできないということはありえない。身体的なイメージから推測していく。周囲は野郎ばっかりだ、そういう中でどういう雰囲気になるか、という状況を推測していくと役になじんでいく。なりきることはできないが見ていける。

見る人も演技者も、ドラマが真実ではないということはわかっている。その目が冷静でないと(仮に役になりきってしまうと)めちゃくちゃな演技になってしまう。

――キャラクタの声が逆に日常生活での会話に影響を及ぼすことは?

ない。仕事だから。

感情表現

――丁寧さ・申し訳なさ・ありがたさなどの感情を表現する決め手は? 

「ドラゴンボールZ」のセルと「サザエさん」の穴子とティーバッグと「銀英伝」のロイエンタールを同一人物がやってるということがわからない人がいる。使い分けは、順序立てたものはないけれども、声の当て方。

穴子の場合は全部後ろに抜いてるんですよ~、フグ田く~ん(※実演、場内爆笑)。セルはがつんがつん、ロイエンタールはセンターを利用して自分の百会から会陰に至るラインをまっすぐ通すピュアな声。

声というものは誰でも出せるし、日本語でしゃべっているが、役柄によって当て方、空気のもって生き方ですっと変わってしまっちゃうんだよなあ(※ここもいきなり変わって場内笑)。

――留学生のための聴解テープを収録するとき、プロの声優がいくつも演じわけることを体験してきた。

――映像がある場合、その人物の感情をどのように判断しているのか。

視覚的に向こうの役者が意図しているものを判断する。のんべんだらりと発音していてもメリハリがないので、相手の動きにアクセントをつけていかなければならない。そういうものがなければ、キャラクターが浮き立たない。独創的な判断でしかない。

リスクはある。失敗するとなにやってんだということになる。アドリブは、僕はアニメではむちゃくちゃやるけれど、他の人たちはこわがる。「失敗すると仕事がこなくなるんじゃないか」。いいじゃないか、仕事が来ないとしたら下手くそなんだから。若い人はリスクが怖いのでやらない、かばう。それが必ず跳ね返ってくる。ああいう中途半端なアドリブじゃだれも聞いてくれないんだということがわかる。チャレンジは必要だなと思います。

さっきの実演みたいなのも、ふつうの人はやらない。せりふを読んでるだけ。そういう意味では、僕は画像とは異なったインパクトを与えている。そういう声優はほとんどいない。失敗がこわいからね。ずいぶん冷や飯も食いましたけどね。何の話だっけ?(笑)。

泥まみれになれ。どろどろに。きれいに人生を歩いていこうと思うと足下すくわれますよ。私はどんな役でも拒まない。どんな役でもやります。キャッチフレーズは王侯貴族から墓堀人夫まで、360度何でもやりますね。

以前できないものは何だったと思う? できなかったのはおかまやホモ。ディクショナリにはない。イメージがない。でも仕事が来ることがある。工夫したけれどもできなかった。今はできますよ(※実演)。

声優を目指す人には、人生経験がなければいけない。社会に出て、社会の仕組みにもみくちゃにされるじゃない。洗濯機に放り込まれたように。社会にはいろんな人たちがいるから。

高校出て代々木アニメーション出てわかるのか? 人間の底、深い闇、陰陽、裏表、氷山の一角……。表現の世界というのは裏なんです。裏が出てこないとなにもおもしろくない。氷山も表に出てるのは少しでしょ、その裏がないと役など表現できない。

おままごとのせりふはよく聞きますよ。そういうところのない表現というのは根のないもの。王子様ならそれでもいいかもしれないが、声優が陰の部分を少しでも出したら一気に売れるんだよ。売れようと思ったらそれがないとだめ。本音と建て前、建前と本音。それをまぜていける役者じゃないと。そうじゃないものはだれもそんな芝居みたくないし。

人間の業の深さを見たくて映画館にいくわけなのに、業のないものを見せられても仕方がないでしょ。何の話だっけ(笑)。

――コミュニケーションは奥深いものだということで(笑)。何十倍ものモノが隠れているのがコミュニケーションの意味。

映像がない場合

――(羊でおやすみシリーズを一部流す)音声のみで感情表現することは難しい?

画像がある場合は、それを視聴者も画像を見ながら音声を聞いているので、ある程度ごまかせる。声だけだと、その人の世界がモロだしに出る。CDドラマやラジオが声優の実力を判定するいい材料になる。声だけ、台詞だけで状況を耳によみがえらせていかなければならない。それが実力。声優にとって一番難しいんじゃないかな。

――日本語教育だと、生徒が電話で会話するときに非常に緊張すると言う。対面だとコミュニケーションが成立するが、電話でのコミュニケーションは音声のみ。サラリーマンがお辞儀しながら電話するように、非言語的コミュニケーションが会話とつながってくる部分もある。日本語学習者にとって音声・発音は気になる。英語の発音が気になってなかなかはなせない人もいるが、日本語学習者にとっても発音に不安があり、自信がないのでなかなか話せないという意見もある。

日本語学習者

――(YouTube - 若本規夫 Voiceの音声前半が流れる)

外国人がアニメや映画等を使って日本語の練習をする例も多い。日本語が分からない外国人を声だけで感動させることができる。

黒人女性から電車の中で突然パックモンと言われて何かと思ったら、「ポケモンセンターに行くにはどうしたらいいか」という質問だった。英語学校に通っていたが何の役にも立たない。パッといえない。英語の空気感に入っていけない。バイリンガルの人はその空気が変わっていくんだろうな。

語学修得、アニメもそうだけども、僕が思うに、3Dかなんかのカプセルを英語環境で作ればいい。次から次へとネイティブが現れて、人がいないから羞恥心なく自分も話す。マンハッタンの雑踏が聞こえてくるなかで次から次へとネイティブが現れるというカプセルがあればいい。臨場感がないと語学取得はだめ。学校に通っても。やっぱり、留学というのが一番いいんですけど、そういうカプセルをドクター中松につくってもらいたい(笑)。あるいはカラオケの一室を英語バーとかチャイナバーとかにして。そういうの作ってくれない?(笑)

――中国・台湾の留学生は2015年までには8000人に激増する。たくさんの留学生がアニメや映画でシャドウイングしている(声を聞いてすぐさま繰り返す練習)。そういう方法については?

K1の格闘家で角田信朗という人がいる。ブルースリーの全盛期、何度も見ながら跳ね飛んだり、見よう見まね、聞きまねをしていた。アクション映画のふりをまねていた。高校2年ごろ、リーディングで読んで見ろといわれたら、ネイティブの発音が雪崩のように流れてきたという。英語教師がびっくりして、「おめえ、どこで学んだんだ?」英語教師もまねできないくらいの発音。京都外大に進んで格闘技もやり、今は海外の交渉も一手に引き受けている。ひたりきるというのが大事じゃないかな。日本に来ている留学生のみなさんは周りが日本語バージョンですから恵まれている。環境というのは大きい。

練習方法

――声優の練習方法、感情表現を豊かにする方法は?

声優の修業方法はつきつめていくとアスリートと同じ。僕はイチローの練習にはついていけないが、イチローは俺の練習にはついていけないんじゃないか、はっはっは(笑)。

呼吸にかかわるすべての筋肉、インナーマッスル、深層筋。これをどこまで鍛えられるか。長せりふを息があがらずに続けられるか。スタビライザーと同じようなものが自分の中にできていないとうわずっちゃう。するとそこで表現は終わる。終わらないためにはどうするか。

ふつうは少しずつ出していく。最初から全開で出していくとあがっちゃうからごまかしごまかしでいく。でも鍛えていくと3分5分10分あっても絶対に上に上がらない。だから声優はアスリートだよって、声優学校でも言う。ただ声出していたらいいのか? アスリートだよ。体鍛えないと。

古武道とかいろんなところから、いろんな先生のところに通った。浪曲、虚無僧の尺八とかいろんな先生がいらっしゃいますよ。声楽もいますし、大道芸もあります。

結局、どういう風に自分の言葉を豊かにしていくか。日本語は子音と母音がほぼ交互にある。何かニュアンスを乗せるには母音をはっきり発音する。子音も大事だが、そちらは肉体的条件が整っていないと明瞭度が出ない。口のまわりの筋肉、唇の筋肉、舌の筋肉。舌は薄くないといけない。舌を薄くするトレーニングがある。urrrrrrrという感じでタングドリル・リップドリルを長ければ30分くらいする。そうすると微細な筋肉ができる。

母音は流すように言えばいい。こーんにーちわだとよい。コンニチワだと×。

――日本語は子音と母音で構成、「モーラ」(拍)でできている。母音の性質に気を配るという話ですが……

「のばす」じゃなくて「流す」。空気を相手に入れていく。ふわぁーあ。どぉーうお?おじょうさーぁん?

――聞き手の心をぐっと捕まれていますね。我々は日常生活で声のことはあまり意識していない。語彙や表現には気を使っているが。音声表現について改めて考え直すことができた。

――歌は上手ですか?声楽もされたと。

ボイストレーニングの一環ですからオペラを歌うというわけではないけれども。演歌世代だから演歌とか。民謡とか竹田の子守歌。歌詞を歌う必要はなくてハミングで、母音だけでもやってるとずいぶん声の鍛錬にもなるし、なじんだ曲をピアノで入れてもらって練習するとか。

――声の高さ、イントネーションも大きな意味を持つ。ふだんあまり意識しないが。

イントネーションというより、自分が一番伝えたい言葉を粘るような感覚で、そこだけすうっとねばっていく。立てるという言い方は好きじゃないけど、濃くしていく。他の言葉は淡泊にたんたんたんと流れていても。プレゼンするときにもわかりやすいと思う。わからない言葉は丁寧に。アクセントにもそういうことがいえる。

――(まとめ)話者が伝えたいことを強調してつたえる。声優の仕事でも、外国語学習においても相手に伝えたいことを意識することが大切だと思った。

質疑応答

Q 今までにやられた役で特に印象に残っている役は?

A 終わった仕事、終わった役はとっとと忘れていく方なのだが、思い出に残ってるのは「トップを狙え」のオオタ・コウイチロウ、ロイエンタール、ティーバッグ。自分がメインになった役というのは色濃く刷り込まれてますから。

Q 4月から声優になります。1、声優として演技をされるとき技術以外で気を使われている部分は? 2、見えない部分をいかにだすかという話。キャラクターとして演じるときに原作にキャラクターの情報が入っていると思う。オリジナル作品で役を演じるときに役作りしているのか。

A 2、何の材料もなければ圧倒的に自分に任されているから圧倒的に自分勝手にやっていけばいい(笑)。下手だったら途中でだめになるが。

収録に3時間くらい時間とってあっても、僕は40分くらいで終わらせる。強靱な声帯だから。「おやすみになりますか?」「いらない。休憩、いらない」(笑)。

おもしろい話がある。ゲームで8000ワードのせりふがあった。水曜日に3時~9時に押さえられて、金曜日に10時~3時を押さえられた。住まいが横須賀なのに小平で家から3~4時間かかりそうなところだった。50歳くらいのとき。2日押さえられている。金曜10時からなら朝6時にいかねばならない。「今日ですべてやる」といったら、クライアントが「無理ですよ」と。途中で社長ディレクターが「休みます?」「休まん」(笑)。終わったのが7時50分。さすがに椅子から立ったらふらーっとして。そういうことはあったけれど。

別に気にかけてることとかじゃなくて、覚悟を決めてやること。

1、だからもう、振り当てられた仕事は俺がやるしかないよね。ずうずうしい。偉そうじゃなくて、ぬうっとしてると周りがこうなってくる。クライアント喜ばせるためには思い切りやる。中途半端なことやってるとだめなんだ。

Q 30年ほど前の作品でXボンバーという特撮人形劇があった。

A 覚えてないよ(笑)。訊かないで。

Q (質問変更)外国人の方が日本語の勉強としてサザエさんを見ている。

A サザエさんはいいと思いますよ。みてもらえばわかるようにアナゴはわかりやすく母音をのばしてるでしょ。外国人が見ていてもついていけるように。JーWAVEのDJのタロウに呼ばれていったことがあるが、サザエさんで日本語を覚えたといっている。他のアニメだと早すぎる。本当にいい題材だね。しかもホームドラマだから日常のことをはなしてくれるじゃない。

Q ナレーションだけどキャラクター性を要求される演技、どちらに寄せてなのか。 A 圧倒的にキャラクター的なナレーション。なにもいれないではなしてくれと言うのはめったにこない。きたらやるけど、ナンパターンかとるとき、クライアントのいる中で、最後の何にもないやつをつかうんだったら俺を呼んだ意味はないよ、と一言捨てぜりふを残していく。クライアントに会釈して帰る。(笑)。コマーシャルとかでふつうの声優とかは米搗きバッタみたいな感じだよ。僕の場合はマイクの前で喜んでもらうためにやってもらうので、クライアントにへいこらするために行ってるわけじゃないから。

Q 音声表現から離れるかもしれないが、コンテンツを作る、作品を作る、クリエイティブ系の仕事をしていて、監督、ディレクター。プロデューサーにも興味がある。いろんな職業の方との橋渡し。声優さんに対しては、どういう関わりをすればよい?

A いろんな人がいる。ディレクターだと、自分の頭で作ってくる人がいる。このキャラクターは「こうでなければならなぁい」。でも「僕そういう風に感じてないんですけどね」。やっていくと、それは違うよと言う。それは僕という人間の資源を無視してるわけだよね。まったく共同作業ではない。あなたの言うことを一方的に受け入れたら俺は死んじゃう。やるのは俺でしょ?僕の資源というものを上手にいかさなきゃいかんのじゃないの?とちょっとした大げんかなんだけれども(笑)。そういうのは困るんだよ。

戦国BASARAのユウコウ(小林裕幸氏)というのは厳しいよ。追い込んでくる。ここまでいったらまた追い込んでくる。3で詩人的なせりふが300、400ワードくらいあって、要求も高いし。恵比寿で帰りに3回くらい縁石でよろめいたよ。そういうのが好きなんだよ。自分の乏しい前頭葉で考えてプライドだけでものを言うというのは許せない。

Q 社会でもみくちゃにされるべきだという話でしたが……

A もみくちゃにされるの。誰もが、みんなされるんだ。洗濯機に放り込まれたパンツのように。

Q 大学に入ってきて、それでも十分いろいろなことが開けてきたんですけど、大学時代にこういうことをしとくといいというのはありますか。

A 早稲田の少林寺拳法部で4年やってきた。今は女の子も入ってきて楽しくやってるけれども、当時は体育会系で、鳥取砂丘で合宿。逃げるに逃げられない(笑)。スペシャリストがいて、拳立てが得意なのがいて、みんなそれをやらされる。終わったら10人くらいに減ってしまう。

それは財産になったかなあと言う気がする。格闘シーンでも役立っている。どういう息があがるのか。腹、顔など(※それぞれ殴られた場面を実演)ぜんぶ違う。あと、男のだいじなとこね(笑 ※実演)。

それが今の若い声優はできない。できないから薄っぺらくなる。それができる声優がいれば使われる。「うめきだけがうまい声優がいます」といったら使われるようになるんだよ。どう生きたら世の中で使えるかを考えて生きていかなければならない。鼻歌を歌いながら生きていけるような世界が、君の行くべき世界。

みんながみんな大企業に入っても仕方ない。大企業だって大変だよ。地獄だよ(笑)。人付き合いいやだったら漁船にでものりなよ(笑)。林業、農業があるじゃないですか。黙々とやってりゃいいじゃないか。漁業だって転覆のおそれはあるけどな(笑)。大海原が好きならそっちへ行けばいいじゃないか。

声優はあんまりならんほうがいいよ、食えないからね(笑)。やってもいいけど、3年で芽がないと思ったらやめる。その3年で学んだことを生かしていけるようにしなければ。そういう技術を身につければいいんだ。マンガ目指して、マンガやめとけよといっても、結局だめになる。マンガの世界なんて声優どころじゃないんだよ。絵画、小説、もっと無理(笑)。

自分の能力をしっかりはかっていく時代が学生なんだな。

第二部:研究発表

第二部では日本語教育研究科の院生による発表が行なわれた。こちらは簡単な概要のみのレポートとする。

「声で気持ちを伝える」

古賀裕基さん(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程二年)による発表。パラ言語情報(話し手の表現意図、表現態度)に着目する。

同じ文でもイントネーションや間の置き方によってまったく意味が異なってしまう。文字情報=言語情報、「うれしい」などの気持ち=パラ言語情報、という対比がある。声の高さ、速さ(長さ)、大きさ、声色、ポーズなどによって伝わる気持ちが変わる。

ただ、母語話者は発話意図を理解できるが、母語が異なる学習者のパラ言語情報の知覚空間が異なるため、指導なしには意識化されにくいことも多い。

「気持ちを伝えるイントネーション学習」

村田佐知子さん(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程二年)による発表。実際の日本語教育現場での事例などが多く示された。

特に興味深かったのは「負の母語転移」現象である。母語のイントネーションをそのまま当てはめて日本語のイントネーションを発音する傾向があり、たとえばロシア語では疑問詞を含む疑問文を下がり調子で発音するため(Что это ?)、ロシア人の日本語学習者はそれと同じように日本語の疑問文の文末が下降しがちである。また、韓国語では丁寧なときには文全体の声の高さが低くなるため、丁寧にすると声の高くなる日本語を低く発音してしまって、冷たく感じられてしまうことがあるという。

これらのイントネーションは、学習者にとって気づきにくいもののようだ。そこで、どのようなタスクによってそれを自覚化していくかが考察されていた。

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