石原慎太郎支持者の都内分布を地図化してみた
私は常々公言しているとおり、石原慎太郎4選で心から失望した人間である。今まで一度も石原に投じたことはなく、常に石原の対立候補に投じてきた。今回の都知事選では、石原は最初に消去したものの、東国原・ワタミとも消去の対象となり、結果として石原を下ろす結果にならなかったのが悔やまれる。
もっとも、石原支持は特に年齢が高くなるにつれて「盤石」の域に達していることも実感していた。
この都知事選について、遅ればせながら「石原支持」声なき声の260万票を読み解く - 話の栞というブログ記事があることを知った。ここでは「各自治体ごとの石原票をそれぞれの総投票者数で割った数字」が一覧にされている。そこで、その数字を実際に地図で色分けしてみた。
石原慎太郎得票率色分け図
白地図の出典は「テクノコ」の都道府県コード13,特別区,東京都区市町村白地図イラスト,無料白地図。なお、島嶼部は白地図にないこと、人口的に大勢にあまり影響しないと考えられることから省いてある(ちなみに石原支持の高い地域である)。
特別区・市町村ごとの色分けは、石原支持率の高い順に虹の配色にしてある。つまり、赤っぽい方が石原支持率の高い場所、青っぽい方が(比較的)低い場所となる。
この色分けで一目瞭然になるのだが、奥多摩・檜原の山の中を別にして考えると一定の傾向が見られる。つまり、都心を中心に「西低・東高」型のグラデーションを描いている。
千代田区・港区という都心のど真ん中(オレンジ)を中心に、下町(東京東部)を中心とした一帯が黄色である。言い換えれば、15区時代の旧東京市のうち小石川区と本郷区を除く13区+葛飾区・江戸川区で石原支持が強いということになる。
その周辺、23区の北部から西部にかけて緑色の地域が広がり、中央線沿線の中野区・杉並区が水色に突入している。「話の栞」でも「石原票が40%を切っているのは中央線沿線の自治体に多い。中央線沿線というのは、東京でも例外的に朝日が読売を上回っているエリアが多いのだけど、何か関連とかあるのだろうか」と書かれているが、中野・杉並や、今回保坂展人が区長に選ばれた世田谷などは革新系が強い印象がある(それも政党より生活者ネットなどが圧倒的支持を受けている)。
これが多摩地区に行くとほとんどが水色地域で、石原票が40%を切るのは三鷹・武蔵野(要するに吉祥寺駅・三鷹駅エリア)、国分寺、日野、清瀬(かつて結核療養所のあった医療都市)となっている。吉祥寺を中心とした中央線沿線の「反石原」傾向は明確だ。ただ、逆に言えばこういう地域でも石原は37%以上を獲得しているわけで、どれだけ強いんだという話にもなる。
これから石原とその後継者を倒すには、山手線以西・以北の革新系有利な地域を基盤に圧倒的支持を得られる候補の擁立が必要不可欠ということになるだろう。
「話の栞」での観測に関する雑感
私は、これまでの石原都政をまったく評価していない。新銀行東京の大失敗、オリンピック誘致計画と誘致活動での無駄な出費とその失敗によるさらなる損失、首都大学東京の再編、築地市場移転、いわゆる「非実在青少年」問題を生んだ言論表現規制条例、数々の差別発言や「天罰」発言などの失言を生む思考回路、震災後の「自粛要請」数々の見当外れ方針等々、首都の為政者としても言論人としても人間としても失格だと考えている。(石原批判をすると、理由のない感情論だと言われることが多いので、このように列記した)
- 石原"不謹"慎太郎の「津波は天罰」という妄言を批判する[絵文録ことのは]2011/03/15
- 石原都知事の「花見自粛」には従うな。ひと工夫して「2011震災を乗り越えよう花見」をやろう![絵文録ことのは]2011/03/31
しかし、私は同様の「アンチ石原」派が多いとはまったく思っていなかった。上記「話の栞」ブログでは「ツイッター利用者の多くは、実は自分と同意見の持ち主ばかりが集まったフォロワーとかのたかだか数十、数百の意見の集積にすぎないものを、これすなわち数十万、数百万の「世論」であると錯覚しがちである」と書かれているが、少なくとも私はそのようにはまったく「錯覚」しなかった。むしろ、ツイッター等でのつぶやきしかないことに、極めて強い危機感を持っていたのである。そして、それは裕次郎、もとい慎太郎に投票する人たち(特に老年層)を崩すような力をまったく持っていなかった。それどころか、今回は「反石原層の票を割るために東国原に出馬させた」という陰謀論を信じたくなるほど、「反石原」層のまとまりがなかったという実感がある。
ネットユーザー層は実は日本の中でもかなりの少数派である。インターネットを「使える」環境の人は増えたが、ふだんメインで何を使っているかといえば、日本人の圧倒的多数は「ケータイ」(それもスマートフォンではないガラケー)なのだ。若い世代もそうだし、主婦層も老年層も、家電としてのガラケーを使っている。Twitterなどを日常的に使っているだけでも「一部のネットオタク」的な存在だということを自覚すべきだろう。モバゲーもGREEもケータイ層にアピールするから全国区になっているのだ。ツイッターで話題、という情報はケータイユーザー層にも届いているが、彼らは「ツイッターとか使ってる人たち」をいわば別世界の人たちとして見ているのである。
そんな中で、「ネット世論」は非常に偏っている。「話の栞」では(実際の世の中の割合に比較して)アンチ石原発言がツイッターで目立ったと観測しているが、逆に2ちゃんねるやニコニコ動画では、ナショナリズム+エスノセントリズム(国家主義+日本民族主義+排外主義)的な「ネトウヨ」バイアスのかかった世論調査が見られるのもすでによく知られたことである。しかし、母集団の偏りを考えれば「マスゴミはウソをついていて、ネット世論こそが真実の国民の声」であるかのようにとらえることは明らかに間違っているのである(マスコミ報道が常に正しいという意味ではない)。
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石原氏が特にと言う訳ではないという考察を最近になって思いました。美濃部氏も鈴木氏も多選です。「(現行で)特に問題が無い」と思う人は現職に投票してしまうという構図なのではないでしょうか。ゆえに情報の精度や多さが都知事選に与える影響は極めて低いのでは、と考察します。それ以上に現行に不満を持ち改革を期待するような若年層が投票に行かないという推察も成り立つのですけどね。