生活保護受給者の97%は日本国籍(「生活保護・在日」問題に関する統計)

こんなことを言っている人がいる。

生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日であり。その資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ。アメリカの諜報機関が資金の流れを追っているという情報もあります。北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々。正直もう勘弁してください。

そこで、厚生労働省の最新の情報で「生活保護を受給しているのは主に在日」なのかどうかを確認してみた。結論として、まあ当たり前だが「主に日本人が受給しています」。

河本準一氏叩きで見失われる本当の問題[絵文録ことのは]2012/05/25の続編です。

2012年5月31日17:02| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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生活保護受給者の97%は日本国籍

まずは、「在日」か否かを問わず、「日本人と、日本国籍を有しない人の、生活保護受給状況」を調べてみよう。つまり、この数字は「在日」の数字よりも当然大きく、在日の人の受給数が少なくともこれ以上ということはない。

構成統計要覧(平成23年度)第3編 社会福祉 第1章 生活保護|厚生労働省

エクセルファイルでどなたでも見られますからご確認を。さしあたって必要なのは、

  • 第3-4表 被保護実世帯数,保護の種類×年度別
  • 第3-5表 被保護実人員・保護率,保護の種類×年度別
  • 第3-10表 日本の国籍を有しない被保護実世帯数・実人員,年度別

の三つである。3-4表で被保護「世帯」数、3-5表で被保護「実人員」数が判明する。これを3-10表の「日本の国籍を有しない被保護実世帯数・実人員」と比較すれば、簡単にその割合がわかるわけだ。

ただし注意したいのは、第3-4表・第3-5表には「(各年度1か月平均)」という但し書きがあることである。したがって、第3-10表の「延被保護実世帯数」「延被保護実人員」ではなく、「1か月平均」の方の数字を使わなければならない。

日本国籍を有しない人の統計は平成17年度(2005年度)~22年度(2010年度)の6年分が示されているから、これを表にまとめてみた。

年次 被保護
実世帯数
非日本国籍
実世帯数
割合 被保護
実人員
非日本国籍
実人員
割合 日本国籍
実人員
割合
17(FY2005) 1 041 508 29 129 2.80% 1 475 838 46 953 3.18% 1428885 96.82%
18(FY2006) 1 075 820 30 174 2.80% 1 513 892 48 418 3.20% 1465474 96.80%
19(FY2007) 1 105 275 31 092 2.81% 1 543 321 49 839 3.23% 1493482 96.77%
20(FY2008) 1 148 766 32 156 2.80% 1 592 620 51 441 3.23% 1541179 96.77%
21(FY2009) 1 274 231 37 024 2.91% 1 763 572 60 956 3.46% 1702616 96.54%
22(FY2010) 1 410 049 41 681 2.96% 1 952 063 68 965 3.53% 1883098 96.47%
平均

2.85%

3.32%
96.68%

日本の国籍を有しない被保護実世帯数は、6年間を平均すると全体の2.85%。実人員ベースで3.32%となり、おおざっぱに言えば約3%だ。

実際の統計からいえば、「生活保護を受給しているのは、97%が日本人、3%が日本の国籍を有しない人」である。仮にこの「日本の国籍を有しない人」を全員「在日」だと仮定したとしても、「生活保護資金を得ているのは主に在日」というのは「デマ」ということになる(もちろん、これは最大限の見積もりである)。

そしてもちろん、「日本の国籍を有しない人」の中には、在日、正確には「特別永住者」以外も多数含まれる。ただし、その比率については統計では明らかにならない。

以上、「生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日である」という部分は、前提が根本的に誤っていることが明らかとなった。

もし「在日が受給しているから」と思い込んで生活保護受給条件を厳しくするのであれば、実際に生活保護を受けているうちの大多数を占める「困窮した日本人」を追い詰めるだけの結果に終わる。どちらが真の「反日」なのか、よく考えるべきだろう。

外国人の中の特別永住者は18.7%、定住者の中でも33.4%

念のため、外国人登録者数を確認しておこう。

法務省:平成23年末現在における外国人登録者数について(速報値)

「3 在留資格別 -第2表,第2図-」を見れば、「永住者(一般永住者・特別永住者)」と「非永住者」の比率がわかる。いわゆる「在日」と呼ばれているのは「特別永住者」であって、これは特別永住者の高齢化に伴って年々減っている。平成23年(2011年)末での速報値では、「特別永住者」は18.7%、前年度2.5%減である。



19(2007) 20(2008) 21(2009) 22(2010) 23(2011) 構成比 対前年
末増減
定住者
内比率
総数
2152973 2217426 2186121 2134151 2078480 100 -2.6
永住者
869986 912361 943037 964195 987519 47.5 2.4

うち一般
永住者
439757 492056 533472 565089 598436 28.8 5.9 51.3%

特別
永住者
430229 420305 409565 399106 389083 18.7 -2.5 33.4%
非永住者
1282987 1305065 1243084 1169956 1090961 52.5 -6.8

うち
定住者
268604 258498 221771 194602 177981 8.6 -8.5 15.3%
定住者
合計

1138590 1170859 1164808 1158797 1165500


「1990年、厚生省より、生活保護対象外国人は定住者に限る、非定住外国人は、生活保護法の対象とならないと口頭で指示が出されている」が、「その後、基準が緩和され、自治体によっても対応が異なる」ようである(在日の生活保護の受給率は高い? - 児童小銃より)。

仮に「定住者のみ」とした場合、それは上記の統計では「永住者(一般永住者・特別永住者)」と、「非永住者のうち、定住者」の合計ということになる。この三者の合計は116万5500人。これを「外国人定住者の総数」という母数としよう。

そうすると、定住者のうち、一般永住者が51.3%、特別永住者(在日)が33.4%、非永住の定住者が15.3%という数字になる。つまり、「在日」は日本に定住している外国人の3人に1人という計算だ。

したがって、生活保護受給者の中に占める「在日」の人の割合は、最大でも3.3%、定住者比率から単純計算すれば1.1%となる。これを「生活保護資金を得ているのは主に在日」と言うのは、あまりにも無理がある。

生活保護受給者の比率

「生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日」という言説には根拠がないことはすでに明らかになったが、そうすると論旨をすり替えてくる人がいることは容易に想像できる。「在日の受給率が日本人より高い」というものである。この論旨に切り替えた時点ですでに問題点がすっかり変わってしまっているのだが、まあ一応数字を確かめておこう。

つまり、「日本人の中で生活保護を受けている人の割合」と「在日の中で生活保護を受けている人の割合」の比較で「在日の方が生活保護を受けている人が多い」という議論だ。もちろん、これがいくら多かろうと「主に在日が生活保護を受けている」ということにはならないわけだが、念のため検証する。

まず、日本の人口は統計局ホームページ/日本の統計-第2章 人口・世帯の2-1「人口の推移と将来人口」から明らかになる。ここで「日本の人口」から「日本人」を引けば、日本にいる外国人の人数がわかる。

次いで、被保護実人員から非日本国籍実人員を引いた数を計算する。これが「日本人の受給者数」である。これを「日本人」の人口で割る。これで「日本国籍を有する日本人の中で、生活保護を受けている割合」がわかる。その結果は6年間の平均で1.26%、ただし年々増えている。

一方、非日本国籍実人員を「日本の人口-日本人」の数字で割る。その内訳はわからないが、とにかく「日本国籍を持たないが日本にいる人の中で、生活保護を受けている割合」がわかる。その結果は6年間の平均で3.27%だ。

年次 被保護
実人員

日本人人口 割合 非日本国籍
実人員
日本在住の
外国人人口
割合
17(FY2005) 1 475 838 1 428 885 126,205,000 1.13% 46 953 1563000 3.00%
18(FY2006) 1 513 892 1 465 474 126,154,000 1.16% 48 418 1616000 3.00%
19(FY2007) 1 543 321 1 493 482 126,085,000 1.18% 49 839 1686000 2.96%
20(FY2008) 1 592 620 1 541 179 125,947,000 1.22% 51 441 1745000 2.95%
21(FY2009) 1 763 572 1 702 616 125,820,000 1.35% 60 956 1690000 3.61%
22(FY2010) 1 952 063 1 883 098 126,382,000 1.49% 68 965 1675000 4.12%
平均


1.26%

3.27%

確かに「日本人の中で生活保護を受けている割合」より「外国人の中で生活保護を受けている割合」は多い。比率にして約3倍となる。ネットでは「日本人の22倍も生活保護受給率」と書いているページもあるが、実際にはこの数字である。ただし、この「外国人」の中でどれくらいが在日かということは統計上はわからない。

ここではその解釈には踏み込まない。なぜなら、仮にこの「外国人」すべてを「在日」と置き換えることが可能であったとしても、そこには二つの解釈ができるからである。

一つは「在日が在日権益のゴリ押しで生活保護を受給しているのではないか」「日本人より基準が甘いのではないか」という見方(あくまでも解釈であって事実かどうかは別問題)。

もう一つは、「在日外国人は日本国籍を有する人より困窮している」「いわゆる在日と呼ばれる特別永住者は高齢化が進行しており、それに伴って生活保護を必要とする困窮の度が増している」という見方。

ここでは統計を示すのみにとどめ、解釈を選ぶことはあえてしない。ただ、この統計の結果が一つの「結論」を示すと言い切るなら、それは暴論ということである。また、この計算結果はそれぞれの母集団内での比率の比較なのであるから、「主に在日が生活保護を受給している」という結論には当然ならないのは念を押すまでもないだろう。

「北朝鮮のテロ政治は日本人の税金を原資とした生活保護によってまかなわれている」?

「資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ」というのだが、確かに「一部」はそういうこともあるだろう。

しかし、生活保護総額の3%が「日本国籍をもたない人」たちが受給していて、それが100%「在日」だとしても、そのうちの朝鮮籍の人はどれだけなのか。法務省統計では「韓国・朝鮮」と一括して統計されており、国の統計では特別永住者の韓国籍:朝鮮籍(:台湾)の比率はわからない。

2010年の政府統計「国籍(出身地)別在留資格(在留目的)別外国人登録者 」によれば、特別永住者39万9106人のうち、いわゆる「在日」と呼ばれる韓国・朝鮮人が39万5234人。一方、ウィキペディアの「在日韓国・朝鮮人 - Wikipedia」ページによれば、その中で「韓国に本籍地があっても朝鮮籍のままの者もいるため、北朝鮮地域を本籍地にしている者は2010年末時点で2,589人に過ぎないが、朝鮮籍保持者は3-4万人程度いるとみられている」と書かれている(北朝鮮とは国交がないので、韓国籍がいやなら「朝鮮籍」となる)。この「朝鮮籍保持者」は韓国籍を選ばなかったということで北朝鮮政府に親和性のある人たちだとすれば、39万5234人の「在日」の中に「北朝鮮系」の人は多く見積もっても1割しかいないということになる。

40万人中4万人である。1割である。

したがって「在日権益」をそのまま「北朝鮮」に結びつけるのはあまりにも飛躍がすぎるということだ。一部は本当に「一部」の可能性が高い。もちろんゼロではあるまい。だが、ゼロではないからといって、「生活保護を受けているのは主に在日で、だからその資金は北朝鮮に流れている」と主張するとすれば、その主張には統計から見ても二重の飛躍があるわけだ。

仮に生活保護を受給している3%の外国人がすべて在日であり、朝鮮籍の人はその全額を北朝鮮に送っているという最大限の数字を採用したとしても、生活保護を受給している中の朝鮮籍の人の割合は全体の0.3%である。これをもって「資金を得ているのは主に在日」「北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々」というのはあまりにも誇大であり、もはや妄想の域に達しているといえる。

なお、わたしは今のところ、CIAなりFBIが「生活保護で受給した金の流れを調査している」という情報のソースを確認し得ていない。CIAとかFBIは、革マル派などの妄想型陰謀論でよく登場する機関でもある。もし、「資金の流れを追っている」というのが単に「北朝鮮が集めている資金」すべてのことを指すのであれば、ここでそのことを持ち出すのは単なる誤誘導でしかない。

ましてや、河本氏の家族のことをここに絡めるのであれば、氏の家族・親族が「特別永住者」であるということについて、「憶測」や「決めつけ」ではなく「揺るぎない事実の証明」が必要だ。

生活保護は生活保護、北朝鮮への送金はまた別の問題

もう一度事実関係をまとめておこう。

  • 生活保護を受給している人の97%は日本人である。
  • 日本国籍を持つ人の中の受給率は約1%、日本国籍を持たない人の中では約3%。
  • いわゆる「在日」(韓国・朝鮮の特別永住者)のうち、9割が韓国籍、1割が朝鮮籍。
  • アメリカの諜報機関が「生活保護で受給された金」の流れを追っているという情報はない。

この事実を踏まえた上で、もう一度冒頭のこの文面を読んでいただきたい。

生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日であり。その資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ。アメリカの諜報機関が資金の流れを追っているという情報もあります。北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々。

北朝鮮への資金の流れを解明することは重要である。しかし、生活保護をそれと絡めるという「事実から乖離した陰謀論」にはまるならば、かえってその目的を阻害することになる。そして、事実ではない観測から、実際には受給者の97%を占める日本人困窮者を苦しめることになるのである。

最後に一言

事実か否かは、「誰が言っているか」で決まるわけではない。わたし個人の属性等に関する人格攻撃を展開した上で「こんな奴が言ってるから間違い」と言うのは、言論ではなく、言葉を用いた暴力であり、そのような手段を使った時点ですべて無効である。

追記1(追記いずれも6/2未明)

冒頭でも引用した「こんなこと」を書いていたTogetterの説明文が、このブログ記事を受けて完全に書き直されている。

生活保護問題がこれほど騒がれているのは、一部の人たちが不正に受給して「ナマポ御殿」のような暮らしをしているから。在日外国人の人たちが多い。詳細は以下のまとめを参照。北朝鮮に流れている資金の一部がこのナマポだろう。日本人は毎年10万人自殺しているんですがねぇ。検死の限界が3万人ってだけで。各自でよく意味を考えてください。問題がより深く徹底的に世間から審判されることを祈ります。

もともとは上記のとおり、「生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日であり。その資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです」と断言されていた。

「ナマポ御殿」だから騒がれているのだ、と完全に別の話を持ち出している。そこにさりげなく「在日外国人の人たちが多い」と根拠なく付け足し、「北朝鮮に流れている資金の一部がこのナマポだろう」とトーンダウンして補足している。

「在日が主に資金を得ており、それが北朝鮮に流れているから問題視してるんだ!」を、数字的に完全否定されたら今度は「ナマポ御殿のような不正受給者がいるから騒がれているんだ!その一部は北朝鮮にも流れてるハズ」と主張をすげ替えたわけだ。

こういう不誠実な陰謀論者にはもはやつきあえないし、自らの論拠の薄弱さを示したとしかいえない。もし、氏が「実際に北朝鮮に渡っている生活保護の金額」や「これまでの生活保護不正受給のうち、朝鮮籍の永住外国人が関わっていたパーセンテージ」を、追試可能な客観的統計から示せば、わたしもそれをもとに検討し直すことができるのだが、そうではなく、Aが否定されたら「でもB」、Bが否定されたら「じゃあC」と次々後出しじゃんけんを繰り返すのであれば、わたしでなくても付き合いきれないだろう。

もともとわたしは国籍の如何を問わず在日の人たちの権益とは何の関係もないし、ついでにいうと同和利権とも何の関係もない。BLOGOSのコメントで「このブログ書いていくらもらえるの?」とあったが、一銭ももらっていないどころか、費やした時間その他すべて自分の持ち出しで、それに対するバックはまったくない。そういう立場であるから、「これが事実だって言ったら事実なんだ!」とわめくのではなく、「こういう揺るぎないデータがありますよ、出典は社会福祉事務所」というようなものを出してもらえれば、ああそうですかと納得するのに、そういう資料を出そうという努力は何もなく、ただググって見つかった情報を拡散するだけでは、同じテーブルにつくことさえできない。

改めて言うが、すり替えられた論理「不正受給者の大半が在日」ということを主張するのであれば、それを裏付ける追試可能なデータを出せばいい。ただそれだけのことである。

ところで、「こんなこと」自体が改竄されたので、中には「どこにも書かれてないじゃないか、藁人形論法じゃないのか」という人が出てくるかもしれない。そこで調べてみたら、togetterのまとめを作った当人が直後にはてなブックマークしており、そこに冒頭の概要がそっくり引用されていた。改竄前、まとめ作成者が書いたものがそのまま残っているので、画面キャプチャとともに残しておこう。

はてなブックマーク - 生活保護問題、再燃中!? つぶやきまとめ - Togetter

改竄前

改竄後はこのとおりである。

改竄後

ネトウヨ用語にしか見えない「ナマポ御殿」という言葉を使うことの是非はともかく、「不正」は「不正」として糾弾すべきであり、それを「在日」全体への差別・迫害につなげるとか、あるいは単に事実関係を指摘しただけで「在日擁護は許せない、お前も在日利権の関係者だろう」などと逆ギレするのは、みっともないからおよしなさい、としか言いようがない。

追記2

まさか「じゃあ帰化した在日が」云々と言い出す人が出てくるとはわたしの想定外であった。過去の国籍が何であれ、帰化したら日本人であって「在日」ではないし、本当に「共和国」に忠誠を誓っているなら帰化したりしない、ということを考えもしないのだろうか。

ともあれ、これについても統計を示しておこう。

法務省:帰化許可申請者数等の推移」によれば、年間の帰化者数は一万数千人前後。そのうち、「韓国・朝鮮」からの帰化者が約半数である。

要するに、毎年、全人口の約0.01%(1万分の1)くらいの人が帰化してきているということである。この帰化者を「在日」に無理やりカウントするとしても、「生活保護を受けているのは、主に在日」という数字には遠く及ばないことは一目瞭然である。

しかも、帰化申請に当たっては、法務省:国籍Q&Aにあるように、「生計条件(国籍法第5条第1項第4号)」が求められる。

生活に困るようなことがなく,日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので,申請者自身に収入がなくても,配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば,この条件を満たすこととなります。

つまり、生活保護受給が必要な人は帰化できない、言い換えれば「生活保護を不正に受給するために帰化する」というのはそもそもありえないわけである。

そして、改めて言わねばならないのも馬鹿馬鹿しいが、帰化したら外国人でもなければ在日でもなく、れっきとした日本国籍を有する「日本人」なのである。それをいつまでも○○人と排斥し続け、差別し続け、さらには「不正受給してるのは在日、そうじゃないとしたら帰化者」などと言うような人間は、果たして本当に「高潔なる日本人」なのか。むしろ、「日本人」の品位を落とすのはそういう連中の言動ではないのか。

さらに(6/2 12:30)

本文をまったく読んでいないか、この程度の小論を読み通せないのか、読んでも内容を理解するだけの読解力がないか、いずれにしてもこんな感想が書けてしまうことが知的レベルの低さを露呈している。

さらに追記(6/4 12:20)外国人の受給について

「3%であろうと外国人が受給していること自体が問題。0%にせよ!」という主張に対しては、以下のtogetterまとめで語り尽くされている。

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)

第二条

1 この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。

2 この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。

3 開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

2008年刊行分調査資料|国立国会図書館―National Diet Libraryの『人口減少社会の外国人問題 総合調査』「外国人問題の最前線 外国人と社会保障」(堤健造)によれば、以下のとおりである。

日本においては、昭和56年の「難民の地位に関する条約」の批准以降、内外平等の原則に立って国内法の整備を行い、適法滞在者には、日本人と同様の社会保障制度が適用されている。

生活保護法第2条(国籍条項)により、外国人の生活保護受給権は認められていない。しかし、日本における生活保護法の外国人に対する適用は、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和29年5月8日、社発第382号)に基づき、「外国人には生活保護を受給する権利はないものの、在留資格の存否・種類を問わず、少なくとも緊急な場合であれば日本人と同じ要件で生活保護を受給できる」と解釈・運用されてきた。また、この通知は、外国人が生活保護を受給する際には、原則として外国人登録証明書の提示を求めているものの、「急迫な状況」にある場合には、例外的に外国人登録証明書の提示がなくても生活保護の受給を認めている。しかし、「生活保護に係る外国人からの不服申立ての取扱いについて」(平成13年10月15日、社援保発第51号)によれば、外国人の生活保護は権利ではないため、不服申立て等の審査請求はできない。

 こうしたなか、平成元年の「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」制定後の平成2年10月、厚生省(当時)は、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」が有効であることを前提としながら、この通知の適用にかかる予算措置としての行政措置の対象外国人は、適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等、在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人、「出入国管理及び難民認定法」上の認定難民に限ると口頭で指示し、その旨を全国に徹底して現在に至っている。就労が禁止・制限されている技術、技能、研究、短期滞在(観光)及び就学等の在留資格をもつ適法滞在者は、稼働能力の活用が不可能であって資産調査等も困難であるため、いわゆる「補足性の原理」(生活保護を受けるためには、資産・能力を活用し、それでもなお、生活に困窮しているという要件が必要である。)が活用できない。また、不法滞在者は、日本への滞在が認められておらず強制退去の対象であり、生活保護の対象とすると生活保護目的の入国を助長するおそれがあるため、適用外とされる。

したがって、「生活保護法第2条で認められていないのだから、外国人の生活保護受給は違法または不正」という主張には根拠がないということになる。

さらに追記(6/4 12:20)在日コリアンの受給実態について

垣田裕介「「社会的排除」概念からみた在日コリアン高齢者の生活と福祉」(日本社会福祉学会第52回全国大会報告(2004年10月10日、東洋大学)によれば、在日高齢者の状況は以下のとおりである。

所得について、なにより注目されるのは、多くの世帯において所得水準が極めて低いという点である。そして低位の所得水準にありながらも、社会保障給付の適用から漏れている状況が明らかとなった。すなわち、無年金世帯が全体の約7割を占めており、また単身世帯の約7割が生活扶助基準を下回る所得水準にありながら生活保護を受給していない。

介護保険制度の利用状況をみると、全体の半数以上が要介護認定を申請しておらず、要介護認定を受けた場合でも実際に介護保険サービスを利用したことがない者が3割弱を占めている。

「ナマポ御殿」などと揶揄する言葉とはかけ離れた実態が存在している。「生活保護を受給していない「ひとり暮らし」92世帯のうち、仮に定めた生活扶助基準10万円を下回るケースが64世帯(69.6%)と約7割に達する」という数字は、「在日が生活保護を組織的に不正受給している」という言説がデマであることを示しているといえよう。

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2012年5月31日17:02| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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知的レベルの低さを露呈しているコメントの数々   もともとわたしは国籍の如何を問わず在日の人たちの権益とは何の関係もないし、ついでにいうと同和... 続きを読む

コメント(3)

お疲れ様でした。
こちらの記事2chまとめにも引用されてるのを見かけました。
陰謀論・妄想から目を覚まして現実を直視できるようになればいいんですが、発端の人の思考力の欠如っぷりを見るに、それも期待薄だなぁ。
「在日権益」についてはこちらのブログが詳しいです。
「ホンマかいな在日特権?」http://blog.goo.ne.jp/mpac
元全国紙社会部記者がネット上で語られる在日特権の真偽について易しく解説

ちょwwブクマコメントwwww松永氏を元オウム信者扱いwwww
もはや悪口通り越してボクの頭はお花畑ですって言ってるようなもんだろwwwwww
アフォすぎるwwwwww

こんな戯言にここまで事細かな反証が必要なのかと(そしてそれでも理解できる知性を持ち合わせていないのを)見てるだけで疲れてくる
執筆した松永さんはさらに疲れたことでしょう。こんなことにまで労力を注ぎ込まなければならなかったことを思うと頭が下がる。
本当にお疲れ様でした。

このブログ記事について

このページは、松永英明が2012年5月31日 17:02に書いたブログ記事です。
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