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田母神俊雄前空幕長の論文問題は、大東亜戦争/太平洋戦争の「密教化/顕教化言論」問題

田母神俊雄前航空幕僚長の論文「日本は侵略国家であったのか」が物議を醸している。(「日本は侵略国家であったのか」全文

この問題について、その発言が正当であるか否かという問題はひとまず措くとして、「なぜそのような発言が出てくるのか」「そして、なぜそのような発言が問題視されるのか」という点が重要だと思う。

この問題を考えるにあたって、平成10年度戦史研究発表会にて作家・保阪正康氏の特別講演「大東亜戦争・太平洋戦争はいかに語られてきたか」の内容が非常に参考になる。この講演は、先の大戦(応仁の乱ではない)を「太平洋戦争」と呼称する「顕教的な言説」と、「大東亜戦争」と呼称する「密教的な言説」が存在しているということを述べたものであった。

田母神前航空幕僚長の発言は、まさに密教的な言説そのものを代弁するものであった。そして、日本政府は自民党政権であっても「密教的な言説」を表立っては支持せず、「顕教的な言説」を建前として述べてきている(政府として、ホンネは言いたくても言わない、言えない)。それなのに田母神氏はホンネの部分をずばり言ってしまったがゆえに、(たとえ国内右派の強烈な支持があったとしても)更迭されるしかなかったのである。

今回は、平成10年度戦史研究発表会における保阪正康氏の特別講演の内容を聞き取ったメモを公開する。

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