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2009年10月4日 (日) 22:16時点における最新版
普通文章論は、明治四十一年(1908年)に幸田露伴が書いた文章論である。
明治~昭和を生きた文豪・幸田露伴の文章に「普通文章論」というのがある。これは、実用的な文章を書くにはどうしたらいいかということを論じたものだ。非常に参考になるのだが、幸田露伴は今ひとつメジャーではないようで、これもあまり読まれていないだろう。もったいないと思う。そこで現代語訳してみたのが以下の文章である。
現代語訳=松永英明。もともとは90節近い節にのみ分かれているが、訳者が便宜的に「第〓部」に分けることにした。
自序
「文章って難しい」という嘆き声は古来どれほど発されただろう。この嘆き声を上げる人たちを救おうとして世に出た著作も、また古来どれほどあるだろう。特に、我が国では最近、紅葉をお金に見立てて子供の泣き声を止めさせるくらい親切な著述が、どれほど世に出されただろう。
しかし、文章は依然として難しい。困難は救われていないのである。子供の泣き声を止めることができるのは、与えられたお金が実は落ち葉であることを知らない間だけだ。
著者もまた、しばしば「文章って難しい」という嘆き声を発する一人であるが、「文章って難しい」という嘆き声の中には、実は二種類あるということを感じた。それは、「美術としての文章は難しい」というのと、「実用上の文章は難しい」というものであって、実にこの二種類は区別されるべき性質のものであると思う。また、美術的文章と実用的文章を作る難易度についてはかなりの差があると思う。
そして、世のいわゆる文章の十中八九までは決して美術的文章ではなくて実用的文章であるにもかかわらず、「文章は難しい」という嘆きを救おうとする古来の著書の多くがこの二者をごっちゃにして、実用的文章を書きたいと求めている人に美術的文章をうまく書く方法を教えているように感じた。落ち葉で泣き声を止めさせるような著作に至っては、もとより多くいうまでもない。
そこで、自ら仕方なくこの一編を書くこととした。
もともと、これは美術的文章など書いたりしない人、つまり実用的文章を書きたいと要求する人に作文の道を問われることが多かったのでやったことだから、ただ実用的文章について語っており、美術的文章については語っていない。美術的文章については、著者もまた今嘆き声を上げている一人であるから、先人の教えを求めてやまないのである。
目次
- 普通文章論 第1部 文章を難しいと思うな
- 文章は論じにくい
- 文章の二種(A:実用的文章 B:美術的文章)
- 二種類の文章を一緒くたに論じるのはおかしい
- 文章本来の約束
- 文章の目的、約束、用意
- 文章の分類
- 実用的文章の特質
- 実用的文章は手段であって目的ではない
- 実用的文章を作るのは容易である
- 世の人はどうして実用的文章を作るのが簡単ではないと思うのか
- 文章は難しいという観念を打破する必要性
- 文章は易しいという観念を持つべし
- 権利は愛することができる。義務はいとわしい。
- 文を作るには楽しんで苦しむべし。嫌がって苦しむなかれ。
- 普通文章論 第2部 日本語の文字の歴史と特徴
- 我が国の文字上の歴史
- 表音文字と表意文字
- 国民と文章との距離
- 表意文字と国民と
- 表音文字と国民と
- 中国の圧迫を受けた日本文章
- 文章における平民的光輝の発揚
- 国民の理想の文章と国民との距離
- 擬漢文的理想
- 擬漢文的段落
- 中国の文字と熟語の効用を欲する思い
- 文章における支那と日本との間の距離
- 擬古文的理想
- 古い日本と新しい日本との間の距離
- 漢籍読みの影響
- 日本古学の影響
- 言語を選択するのは人類の有する大きな権利の一つ
- 世界最良語の成立
- 古国文の現代における勢力
- 古国文に対する謀反の気持ち
- 文章における血税
- 語法の今・昔
- 仮名遣いの今・昔
- 送りがな法
- 慣例的字面
- 和字、借字
- 教育に当たる者の任務
- 学者の任務
- 文筆業者の態度
- 国民の権利
- 国民はその国の文章の所有者である
- 普通文章論 第3部 実用的文章の書き方
- 実用的文章はいかに書くべきか
- 実用的文章と平易さ
- 平易でない文章
- 文章は伝達である
- 美術的文章と平易さ
- 平易と不平易との得失
- 鳴原堂の名言
- 実用的文章は通俗であるべきだ
- 実用的文章と明確さ
- 明確と不明確との得失
- 完全な明確さ
- 地図、病床日表
- 明確を求めるのであれば簡潔にせよ
- 簡潔を欲するならば洗練を試みよ
- 文章は削り去るべし
- 作文教授方法の過失
- 文を作って巧みにしようとするのはよくない
- 想像の運用は作文練習に必要なことではない
- ありていに書き表わすこと
- 実用的文章を作る準備としての作文教授法
- 実用的文章は実につくべきこと
- ログブックならびに鶏のたとえ
- 図と画との関係は、実用的文章と美術的文章との関係のようなもの
- 実は力である
- 実用的文章と懇切丁寧
- 懇切丁寧でないことから生まれる失敗
- 丿閑(へちかん)流の文章
- ありのままで飾らないことが実用的文章に必要
- ありのままで飾らないことは力であり、すぐれている
- ありのままで飾らないことは実用的文章も美術的文章も一致する
- ありのままで飾らないことは素色気を去るところにある
- 実用的文章と品格
- 品格は求めて得られるものではない。おのずからなされるものだ
- 実用的文章を作るにあたっての消極的注意
- 擬古・擬漢・修飾・衒学・好奇の非
- 文章は心の波動である
- 実用的文章を作る人はいつでも作ることができる