「激安オークション」の版間の差分
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− | 「'''入札手数料オークション(bidding fee auction)'''」は、参加者が入札時に返金されない手数料を支払う必要があるオークション形式で、別名「'''ペニーオークション(penny auction)'''」とも呼ばれ、日本では「'''激安オークション'''」「'''新感覚オークション'''」などと自称するサイトが多い。時間切れになったときに最後に入札していた参加者が商品を落札し、最終入札価格を支払うことになる。通常、それはその商品の一般的な小売価格よりも激安である、というようにうたわれていることが多い。 | + | 「'''入札手数料オークション(bidding fee auction)'''」は、参加者が入札時に返金されない手数料を支払う必要があるオークション形式で、別名「'''ペニーオークション(penny auction)'''」「'''ライブオークション(live auction)'''」とも呼ばれ、日本では「'''激安オークション'''」「'''新感覚オークション'''」などと自称するサイトが多い。時間切れになったときに最後に入札していた参加者が商品を落札し、最終入札価格を支払うことになる。通常、それはその商品の一般的な小売価格よりも激安である、というようにうたわれていることが多い。 |
− | + | しかし、実際には落札できた場合でもそれまでの入札手数料が莫大にかかるため、合計するとそれほど安くない。場合によっては定価以上になることも多々ある。 | |
さらに、入札に使われた手数料は落札できなくても返金されないため、落札できなかった場合には大きな損となりかねない。この点が通常の「落札できなくても損はしない」形式のオークションとはまったく異なる。このため、ギャンブルあるいは賭けと等しいともいえる。一方、オークション主催者側は、入札ごとに支払われることになる手数料と、最終落札価格の支払いとの双方を手に入れるため、入札が一定数あれば格安で落札者に渡しても決して損をすることはない。このため、サクラ入札が疑われる事例も多い。 | さらに、入札に使われた手数料は落札できなくても返金されないため、落札できなかった場合には大きな損となりかねない。この点が通常の「落札できなくても損はしない」形式のオークションとはまったく異なる。このため、ギャンブルあるいは賭けと等しいともいえる。一方、オークション主催者側は、入札ごとに支払われることになる手数料と、最終落札価格の支払いとの双方を手に入れるため、入札が一定数あれば格安で落札者に渡しても決して損をすることはない。このため、サクラ入札が疑われる事例も多い。 | ||
− | + | 結論としては、激安オークションは平均すれば負けることが確実なギャンブルである。 | |
==システム== | ==システム== | ||
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プログラマーのアンディー・ガルシアとウォーウィック大学経済学部卒のルパート・エルダーが実際にこの「ゲーム」に挑戦したところ、試みを断念するまでの間にすべてのオークションで落札できなかったことが「The Times」で報じられた<ref>http://www.timesonline.co.uk/tol/money/article6839947.ece</ref>。 | プログラマーのアンディー・ガルシアとウォーウィック大学経済学部卒のルパート・エルダーが実際にこの「ゲーム」に挑戦したところ、試みを断念するまでの間にすべてのオークションで落札できなかったことが「The Times」で報じられた<ref>http://www.timesonline.co.uk/tol/money/article6839947.ece</ref>。 | ||
− | == | + | == 歴史 == |
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+ | 最古のペニーオークションサイトは、2005年9月に開設された「Telebid」である。運営会社はドイツ・ミュンヘンに本社を置くEntertainment Shopping株式会社。2007年12月には英国、2008年5月に米国、2008年9月にオーストラリアへ進出。2008年末にはサイト名を「Swoopo」に改称した。さらに2009年6月にはカナダにも展開している。2010年現在、支社はロンドンとシリコンバレー(カリフォルニア州マウンテンビュー)に置かれている。 | ||
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+ | Telebid / Swoopoは当初よりペニーオークションサイトとしての仕組みを備えていたが、2009年8月には"Swoop-it-now"機能を導入。これは、落札できなくてもSwoopoから商品を購入することで手数料がバックされる(商品価格に含まれる)という仕組みである。 | ||
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+ | 日本で最初にペニーオークションサイトが開設されたのは、2009年7月10日開設の格安オークションサイト「ヤスオク」である(Yahoo!オークションすなわちヤフオクに類似する名称である)。当初の運営会社は株式会社ヤスオク(東京都渋谷区代々木)。2010年2月16日、香港の九龍旺角登打士街56に本拠を置くInnovative Auction Limited社に譲渡され、同4月1日に「激安オク」と改称した。 | ||
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+ | Swoopoクローンと呼ばれる類似システム構築スクリプト等が販売されていることから多数の類似ペニーオークションサイトが乱立したが、中には出会い系サイトや懸賞サイトと同じ業者が運営しているものも多かった。その中で大手企業の中にもペニーオークションに手を出すところが現われている。 | ||
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+ | * 2009年10月「カイドキ」。モバイル版としては日本国内初。運営は株式会社シーエー・モバイル(サイバーエージェントグループ)。 | ||
+ | * 2010年6月14日「GEO(ゲオ)オークション」。運営は株式会社ぽすれん(株式会社ゲオの子会社)。 | ||
+ | * 2010年8月「DMM.comポイントオークション」。運営は株式会社デジタルメディアマート(DMM)。 | ||
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+ | ==博打・ギャンブルとしての実態== | ||
ペニーオークションは必ずしも詐欺ではないが、以下の要素を考え合わせるとギャンブル性が非常に高い博打と考えるのが妥当である。 | ペニーオークションは必ずしも詐欺ではないが、以下の要素を考え合わせるとギャンブル性が非常に高い博打と考えるのが妥当である。 | ||
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しかも、ペニーオークションの多くは損失を出さないための「サクラ入札」が疑われている。入札者が少なすぎればオークション主催者側が損失を出すことになるが、極端な場合、一般利用者には(なかなか)落札させない自動システムを作ることで詐欺同然の主催者総取りサイトを構築することが可能である。 | しかも、ペニーオークションの多くは損失を出さないための「サクラ入札」が疑われている。入札者が少なすぎればオークション主催者側が損失を出すことになるが、極端な場合、一般利用者には(なかなか)落札させない自動システムを作ることで詐欺同然の主催者総取りサイトを構築することが可能である。 | ||
− | + | そのため、2010年現在ではペニーオークションに誘導するspamメールが続出しており、従来の詐欺目的出会い系サイトやそれと抱き合わせの懸賞サイトとセットになっている例も多々見られる。 | |
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+ | 一方、大手によるペニーオークションサイト(カイドキ、GEOオークション、DMM.comポイントオークション等)では、Swoopoの"Swoop-it-now"機能に似たシステム、すなわち落札できなかった場合の手数料に応じて割り引き購入ができるシステムを導入して安心感を高めようとしている。 | ||
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+ | ただし、それも手数料すべてがバックされるわけではない。まったく商品も手に入らず丸損ということは避けられるとしても、いずれも厳しい条件が設定されている。 | ||
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+ | カイドキでは、商品を落札出来なかった場合、落札から24時間以内であれば、入札に使用したコイン数×75円を参考価格から割引いて商品を購入できる「今すぐ買う」機能があるが、すべての商品が対象ではなく、また対象商品でも「上限割引率」が設定されている。 | ||
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+ | GEOオークションでは「当社販売価格から差し引くことができる還元額(Gコイン消費数×75円)は当社販売価格と同額を上限とし、当社販売価格を超える部分の還元額についての換金・返金は一切致しません」と明記されており、結果的に定価を超える価格で購入する場合がありえる。 | ||
− | + | DMM.comポイントオークションでは、1入札70ポイント(70円)がかかるのに対し、落札できなかった場合の「割引購入」では「DMM販売価格より入札回数×50円を差引いた価格」で購入できるとうたわれている(販売価格より入札回数×50円の金額が上回っている場合は、1円での購入が可能)。いずれにしても、最低で入札回数×20円は帰ってこない計算であり、入札額が販売価格を上回る場合もありえる。 | |
結論的には、ペニーオークションは決して格安ではないということになる。したがって、激安・格安・新感覚といったうたい文句に惑わされず、あくまでも博打(落札できなくてもゲームとして楽しめる)と割り切れる場合にのみ参加するべきである。 | 結論的には、ペニーオークションは決して格安ではないということになる。したがって、激安・格安・新感覚といったうたい文句に惑わされず、あくまでも博打(落札できなくてもゲームとして楽しめる)と割り切れる場合にのみ参加するべきである。 |
2010年11月26日 (金) 13:28時点における版
「入札手数料オークション(bidding fee auction)」は、参加者が入札時に返金されない手数料を支払う必要があるオークション形式で、別名「ペニーオークション(penny auction)」「ライブオークション(live auction)」とも呼ばれ、日本では「激安オークション」「新感覚オークション」などと自称するサイトが多い。時間切れになったときに最後に入札していた参加者が商品を落札し、最終入札価格を支払うことになる。通常、それはその商品の一般的な小売価格よりも激安である、というようにうたわれていることが多い。
しかし、実際には落札できた場合でもそれまでの入札手数料が莫大にかかるため、合計するとそれほど安くない。場合によっては定価以上になることも多々ある。
さらに、入札に使われた手数料は落札できなくても返金されないため、落札できなかった場合には大きな損となりかねない。この点が通常の「落札できなくても損はしない」形式のオークションとはまったく異なる。このため、ギャンブルあるいは賭けと等しいともいえる。一方、オークション主催者側は、入札ごとに支払われることになる手数料と、最終落札価格の支払いとの双方を手に入れるため、入札が一定数あれば格安で落札者に渡しても決して損をすることはない。このため、サクラ入札が疑われる事例も多い。
結論としては、激安オークションは平均すれば負けることが確実なギャンブルである。
システム
典型的なパターンでは、参加者は、入札するたびに必要な手数料を支払う必要がある(事前に入札用ポイントを購入するという形式のサイトが多い)。オークションに入札すると、一定値で商品の落札価格が上がることになる。同時に、オークションの終了時間が延長される。このゲームは「瀬戸際戦術」ゲームである。入札が続けば落札価格は上がるわけだから、次第に見返りは少なくなっていくことになる。そして、見返りを少なくしてでも入札することに決めた最後の入札者がその見返りを手にすることになる。
オークションが終了した瞬間、オークション主催者は入札手数料としてすでに手にしていた金額にくわえて、最終的な商品価格を手に入れることになる。
このシステムで動いているウェブサイトは、多くの場合「ペニーオークション」と呼ばれている。カメラ、ノートPC、MP3プレーヤーなどの家電商品が販売されることが多い。日本で最も典型的なペニーオークションである「激安オク」では、1回の入札あたり75円の入札手数料(=1コイン)を支払い、入札ごとに15円ずつ落札価格が上昇する(商品によっては5円または1円ずつ上昇)。そして、オークション終了時間が20秒追加される。商品はドロップシッピング形式で発送されることが多い。落札できなかった人は単に購入できないだけでなく入札した回数分の手数料を支払わねばならず、一方、落札できた人も最終落札価格と入札手数料を合計すると、場合によっては市販価格を上回ることがある。
このモデルを分析した多くの記事では、最終的に批判的な結論となっている[1][2][3]。
プログラマーのアンディー・ガルシアとウォーウィック大学経済学部卒のルパート・エルダーが実際にこの「ゲーム」に挑戦したところ、試みを断念するまでの間にすべてのオークションで落札できなかったことが「The Times」で報じられた[4]。
歴史
最古のペニーオークションサイトは、2005年9月に開設された「Telebid」である。運営会社はドイツ・ミュンヘンに本社を置くEntertainment Shopping株式会社。2007年12月には英国、2008年5月に米国、2008年9月にオーストラリアへ進出。2008年末にはサイト名を「Swoopo」に改称した。さらに2009年6月にはカナダにも展開している。2010年現在、支社はロンドンとシリコンバレー(カリフォルニア州マウンテンビュー)に置かれている。
Telebid / Swoopoは当初よりペニーオークションサイトとしての仕組みを備えていたが、2009年8月には"Swoop-it-now"機能を導入。これは、落札できなくてもSwoopoから商品を購入することで手数料がバックされる(商品価格に含まれる)という仕組みである。
日本で最初にペニーオークションサイトが開設されたのは、2009年7月10日開設の格安オークションサイト「ヤスオク」である(Yahoo!オークションすなわちヤフオクに類似する名称である)。当初の運営会社は株式会社ヤスオク(東京都渋谷区代々木)。2010年2月16日、香港の九龍旺角登打士街56に本拠を置くInnovative Auction Limited社に譲渡され、同4月1日に「激安オク」と改称した。
Swoopoクローンと呼ばれる類似システム構築スクリプト等が販売されていることから多数の類似ペニーオークションサイトが乱立したが、中には出会い系サイトや懸賞サイトと同じ業者が運営しているものも多かった。その中で大手企業の中にもペニーオークションに手を出すところが現われている。
- 2009年10月「カイドキ」。モバイル版としては日本国内初。運営は株式会社シーエー・モバイル(サイバーエージェントグループ)。
- 2010年6月14日「GEO(ゲオ)オークション」。運営は株式会社ぽすれん(株式会社ゲオの子会社)。
- 2010年8月「DMM.comポイントオークション」。運営は株式会社デジタルメディアマート(DMM)。
博打・ギャンブルとしての実態
ペニーオークションは必ずしも詐欺ではないが、以下の要素を考え合わせるとギャンブル性が非常に高い博打と考えるのが妥当である。
- 落札できなければ手数料がすべて損失となる。
- 落札するためには通常、多数の入札が必要となり、入札手数料がかさむ。
- 落札でき、落札価格が通常価格より格安であったとしても、実際には入札手数料と合わせれば決して割安とは言えない場合が多い。
- すべての入札者の入札手数料と落札価格を合計すると、商品の通常価格をはるかに上回る場合が大半である。
しかも、ペニーオークションの多くは損失を出さないための「サクラ入札」が疑われている。入札者が少なすぎればオークション主催者側が損失を出すことになるが、極端な場合、一般利用者には(なかなか)落札させない自動システムを作ることで詐欺同然の主催者総取りサイトを構築することが可能である。
そのため、2010年現在ではペニーオークションに誘導するspamメールが続出しており、従来の詐欺目的出会い系サイトやそれと抱き合わせの懸賞サイトとセットになっている例も多々見られる。
一方、大手によるペニーオークションサイト(カイドキ、GEOオークション、DMM.comポイントオークション等)では、Swoopoの"Swoop-it-now"機能に似たシステム、すなわち落札できなかった場合の手数料に応じて割り引き購入ができるシステムを導入して安心感を高めようとしている。
ただし、それも手数料すべてがバックされるわけではない。まったく商品も手に入らず丸損ということは避けられるとしても、いずれも厳しい条件が設定されている。
カイドキでは、商品を落札出来なかった場合、落札から24時間以内であれば、入札に使用したコイン数×75円を参考価格から割引いて商品を購入できる「今すぐ買う」機能があるが、すべての商品が対象ではなく、また対象商品でも「上限割引率」が設定されている。
GEOオークションでは「当社販売価格から差し引くことができる還元額(Gコイン消費数×75円)は当社販売価格と同額を上限とし、当社販売価格を超える部分の還元額についての換金・返金は一切致しません」と明記されており、結果的に定価を超える価格で購入する場合がありえる。
DMM.comポイントオークションでは、1入札70ポイント(70円)がかかるのに対し、落札できなかった場合の「割引購入」では「DMM販売価格より入札回数×50円を差引いた価格」で購入できるとうたわれている(販売価格より入札回数×50円の金額が上回っている場合は、1円での購入が可能)。いずれにしても、最低で入札回数×20円は帰ってこない計算であり、入札額が販売価格を上回る場合もありえる。
結論的には、ペニーオークションは決して格安ではないということになる。したがって、激安・格安・新感覚といったうたい文句に惑わされず、あくまでも博打(落札できなくてもゲームとして楽しめる)と割り切れる場合にのみ参加するべきである。
参照
なお、このページはBidding fee auction - Wikipediaを翻訳した上で大幅に加筆修正編集を加えたものである。