激安オークション
「入札手数料オークション(bidding fee auction)」は、参加者が入札時に返金されない手数料を支払う必要があるオークション形式で、別名「ペニーオークション(penny auction)」とも呼ばれ、日本では「激安オークション」「新感覚オークション」などと自称するサイトが多い。時間切れになったときに最後に入札していた参加者が商品を落札し、最終入札価格を支払うことになる。通常、それはその商品の一般的な小売価格よりも激安であることが多い。
入札に使われた手数料が返金されず、落札できなかった場合には大きな損となりかねない。この点が通常の「落札できなくても損はしない」形式のオークションとはまったく異なる。このため、ギャンブルあるいは賭けと等しいともいえる。一方、オークション主催者側は、入札ごとに支払われることになる手数料と、最終落札価格の支払いとの双方を手に入れるため、入札が一定数あれば格安で落札者に渡しても決して損をすることはない。このため、サクラ入札が疑われる事例も多い。
システム
典型的なパターンでは、参加者は、入札するたびに必要な手数料を支払う必要がある(事前に入札用ポイントを購入するという形式のサイトが多い)。オークションに入札すると、一定値で商品の落札価格が上がることになる。同時に、オークションの終了時間が延長される。このゲームは「瀬戸際戦術」ゲームである。入札が続けば落札価格は上がるわけだから、次第に見返りは少なくなっていくことになる。そして、見返りを少なくしてでも入札することに決めた最後の入札者がその見返りを手にすることになる。
オークションが終了した瞬間、オークション主催者は入札手数料としてすでに手にしていた金額にくわえて、最終的な商品価格を手に入れることになる。
このシステムで動いているウェブサイトは、多くの場合「ペニーオークション」と呼ばれている。カメラ、ノートPC、MP3プレーヤーなどの家電商品が販売されることが多い。日本で最も典型的なペニーオークションである「激安オク」では、1回の入札あたり75円の入札手数料(=1コイン)を支払い、入札ごとに15円ずつ落札価格が上昇する(商品によっては5円または1円ずつ上昇)。そして、オークション終了時間が20秒追加される。商品はドロップシッピング形式で発送されることが多い。落札できなかった人は単に購入できないだけでなく入札した回数分の手数料を支払わねばならず、一方、落札できた人も最終落札価格と入札手数料を合計すると、場合によっては市販価格を上回ることがある。
このモデルを分析した多くの記事では、最終的に批判的な結論となっている[1][2][3]。
プログラマーのアンディー・ガルシアとウォーウィック大学経済学部卒のルパート・エルダーが実際にこの「ゲーム」に挑戦したところ、試みを断念するまでの間にすべてのオークションで落札できなかったことが「The Times」で報じられた[4]。
日本での実情
ペニーオークションは必ずしも詐欺ではないが、以下の要素を考え合わせるとギャンブル性が非常に高い博打と考えるのが妥当である。
- 落札できなければ手数料がすべて損失となる。
- 落札するためには通常、多数の入札が必要となり、入札手数料がかさむ。
- 落札でき、落札価格が通常価格より格安であったとしても、実際には入札手数料と合わせれば決して割安とは言えない場合が多い。
- すべての入札者の入札手数料と落札価格を合計すると、商品の通常価格をはるかに上回る場合が大半である。
しかも、ペニーオークションの多くは損失を出さないための「サクラ入札」が疑われている。入札者が少なすぎればオークション主催者側が損失を出すことになるが、極端な場合、一般利用者には(なかなか)落札させない自動システムを作ることで詐欺同然の主催者総取りサイトを構築することが可能である。
そのため、2010年半ばではペニーオークションに誘導するspamメールが続出しており、従来の詐欺目的出会い系サイトやそれと抱き合わせの懸賞サイトとセットになっている例も多々見られる。
一方、大手通販サイトDMMでも同様のシステムでのDMMオークションを開始したが、落札できなかった場合の手数料に応じて割り引き購入ができるようにするなど、極力ギャンブル性を排除する仕組みを提供せざるを得なくなっている。
結論的には、ペニーオークションは決して格安ではないということになる。したがって、激安・格安・新感覚といったうたい文句に惑わされず、あくまでも博打(落札できなくてもゲームとして楽しめる)と割り切れる場合にのみ参加するべきである。
参照
なお、このページはBidding fee auction - Wikipediaを翻訳した上で大幅に加筆修正編集を加えたものである。