災異改元
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ナビゲーションに移動検索に移動災異改元(さいいかいげん)とは、天変地異や災害などの災異を理由として元号(年号)を改めることである。
改元には大きく分けて5種があるとされる。
- 代始改元:天皇の代替わりによる。一般には即位や践祚の翌年に改元される。
- 祥瑞改元:吉事・吉祥を理由とする。飛鳥・奈良時代に多い。
- 災異改元:天変地異・疫病・戦災などの凶事に際してその影響を断ち切る。
- 革年改元:讖緯説による革令(甲子の年)・革運(戊辰の年)・革命(辛酉の年)に改元する。
- その他:室町時代以後、将軍の代始に行われた改元など。
新井白石『折たく柴の記』下には、「古より此かた、我朝改元の例は、代始、または革命、革令、三合、天変、地妖、水旱、疾疫、兵革、飢饉等の事によれり」と記されている。このうち、「天変、地妖、水旱、疾疫、兵革、飢饉等」による改元が災異改元ということになる。
飛鳥・奈良時代から平安時代初期には代始改元または祥瑞改元が通常だったが、平安時代の醍醐天皇による「延長」改元から災異改元が始まり、その後は非常に多く行なわれるようになった。時代によっては改元の理由がほぼすべて災異改元と考えられる時期もあるほどである。
「明治」への改元の際に「一世一元の詔」が発布されてからは代始改元のみとなっており、その後の皇室典範や元号法により、災異改元は行なわれないこととなっている。
以下の災異改元一覧は、主に国史大辞典を参考にしてまとめ、日本国語大辞典で補ったものである。改元の理由を検索したものであり、漏れがある可能性もある。
目次
平安時代
10世紀
- 【延長】(923-931)醍醐天皇・朱雀天皇。延喜二十三年閏四月十一日改元。洪水・旱魃・疾疫(咳病)による。醍醐天皇の勅勘。
- 【天慶】(938-947)朱雀天皇。承平八年五月二十二日改元。厄運・地震・兵革の慎による。
- 承平七年11月:富士山噴火(承平七年噴火)。「甲斐国言、駿河国富士山神火埋水海」
- 承平八年4月15日:京都・紀伊の地震。
- 【天暦】(947-957)村上天皇。天慶十年四月二十二日改元。代始による。厄運地震説もある。
- 【天徳】(957-961)村上天皇。天暦十一年十月二十七日改元。水旱災による。
- 【応和】(961-964)村上天皇。天徳五年二月十六日改元。辛酉革命、内裏焼亡による。
- 【康保】(964-968)村上天皇・冷泉天皇。応和四月七月十日改元。旱魃と甲子の年にあたるによる。
- 【天延】(973-976)円融天皇。天禄四年十二月二十日改元。天変・地震による。
- 【貞元】(976-978)円融天皇。天延四年七月十三日改元。天変・火災・地震による。
- 天延四年6月18日:山城・近江の地震。
- 【天元】(978-983)円融天皇。貞元三年十一月二十九日改元(別説あり)。明年陽五の御慎、天変による。
- 【永観】(983-985)円融天皇・花山天皇。天元六年四月十五日改元。旱魃・内裏焼亡などによる。
- 【永祚】(989-990)一条天皇。永延三年八月八日改元。天変(彗星)・地震による。
- 【正暦】(990-995)一条天皇。永祚二年十一月七日改元。大風天変による。
- 【長徳】(995-999)一条天皇。正暦六年二月二十二日改元。疾疫、天変による。
- 【長保】(999-1004)一条天皇。長徳五年正月十三日改元。天変、炎旱災による。
11世紀
- 【寛弘】(1004-1012)一条天皇・三条天皇。長保六年七月二十日改元。天変地震による。
- 【長元】(1028-1037)後一条天皇。万寿五年七月二十五日改元。疫癘、炎旱(疫病、旱魃)による。
- 【寛徳】(1044-1046)後朱雀天皇・後冷泉天皇。長久五年十一月二十四日改元。炎旱疾疫による。
- 【天喜】(1053-1058)後冷泉天皇。永承八年正月十一日改元。天変怪異による。
- 【康平】(1058-1065)後冷泉天皇。天喜六年八月二十九日改元。大極殿火災のため。
- 【治暦】(1065-1069)後冷泉天皇。康平八年八月二日改元。炎旱・三合厄による。
- 【承暦】(1077-1081)白河天皇。承保四年十一月十七日改元。旱魃、疱瘡による。
- 【嘉保】(1094-1096)堀河天皇。寛治八年十二月十五日改元。疫病(疱瘡流行)による。
- 【永長】(1096-1097)堀河天皇。嘉保三年十二月十七日改元。天変地震、疾疫による。
- 嘉保三年11月24日:畿内・東海道の地震(永長東海地震)。
- 【承徳】(1097-1099)堀河天皇。永長二年十一月二十一日改元。天変・地震・洪水・大風などによる。
- 【康和】(1099-1104)堀河天皇。承徳三年八月二十八日改元。春地震、夏疾疫による。
- 承徳三年1月24日:南海道・畿内の地震(康和南海地震)。
12世紀
- 【長治】(1104-1106)堀河天皇。康和六年二月十日改元。天変による。
- 【嘉承】(1106-1108)堀河天皇・鳥羽天皇。長治三年四月九日改元。天変による。
- 【天永】(1110-1113)鳥羽天皇。天仁三年七月十三日改元。彗星天変による。
- 【永久】(1113-1118)鳥羽天皇。天永四年七月十三日改元。天変・怪異・疾疫・兵革など(東大寺、興福寺の僧徒の騒動や火災、悪疫流行など)のため。
- 【元永】(1118-1120)鳥羽天皇。永久六年四月三日改元。天変・疾疫による。
- 【保安】(1120-1124)鳥羽天皇・崇徳天皇。元永三年四月十日改元。天変、御厄運御慎による。
- 【大治】(1126-1131)崇徳天皇。天治三年正月二十二日改元。疱瘡による。
- 【天承】(1131-1132)崇徳天皇。大治六年正月二十九日改元。炎旱天変による。
- 【長承】(1132-1135)崇徳天皇。天承二年八月十一日改元。疾疫による。
- 【保延】(1135-1141)崇徳天皇。長承四年四月二十七日改元。飢饉・疾疫・洪水などによる。
- 【仁平】(1151-1154)近衛天皇。久安七年正月二十六日改元。暴風・洪水などによる。
- 【応保】(1161-1163)二条天皇。永暦二年九月四日改元。疱瘡の流行による。
- 【長寛】(1163-1165)二条天皇。応保三年三月二十九日改元。天変、疾疫(疱瘡)による。
- 【承安】(1171-1175)高倉天皇。嘉応三年四月二十一日改元。天変による。
- 【安元】(1175-1177)高倉天皇。承安五年七月二十八日改元。疱瘡の流行による。
- 【治承】(1177-1181)高倉天皇・安徳天皇。安元三年八月四日改元。火災による。
- 【寿永】(1182-1184)安徳天皇。養和二年五月二十七日改元。疾疫・飢饉・兵革・三合による。
鎌倉時代
12~13世紀
- 【文治】(1185-1190)後鳥羽天皇。元暦二年八月十四日改元。地震・兵革などによる。
- 元暦二年7月9日:近江・山城・大和の地震(文治京都地震。方丈記に記される)。
- 【建久】(1190-1199)後鳥羽天皇・土御門天皇。文治六年四月十一日改元。地震による。
- 【建永】(1206-1207)土御門天皇。元久三年四月二十七日改元。疾疫(疱瘡)による。
- 【承元】(1207-1211)土御門天皇。建永二年十月二十五日改元。疱瘡・洪水による。
- 【建保】(1213-1219)順徳天皇。建暦三年十二月六日改元。天変地妖による。
- 建暦三年5月21日:大地震。
- 【承久】(1219-1222)順徳天皇・仲恭天皇・後堀河天皇。建保七年四月十二日改元。三合厄年、天変旱魃による。
- 【元仁】(1224-1225)後堀河天皇。貞応三年十一月二十日改元。天変災旱による。
- 【嘉禄】(1225-1227)後堀河天皇。元仁二年四月二十日改元。疫病による。
- 【安貞】(1227-1229)後堀河天皇。嘉禄三年十二月十日改元。疱瘡の流行による。
- 【寛喜】(1229-1232)後堀河天皇。安貞三年三月五日改元。天変による。
- 【貞永】(1232-1233)後堀河天皇。寛喜四年四月二日改元。天変地妖、飢饉による。
- 寛喜四年1月2日:大地震。
- 【文暦】(1234-1235)四条天皇。天福二年十一月五日改元。天変地震による。即位後、大嘗祭が延引されているにもかかわらず二度目の改元で、不快の例と評されている。また諒闇中(本年八月、後堀河上皇没)の改元も異例とされる。
- 天福二年2月8日・9月16日:大地震。
- 【嘉禎】(1235-1238)四条天皇。文暦二年九月十九日改元。天変地異による。
- 文暦二年:3月から地震頻発。9月1日には文治以後最大の大地震。
- 【暦仁】(1238-1239)四条天皇。嘉禎四年十一月二十三日改元。天変による。
- 【延応】(1239-1240)四条天皇。暦仁二年二月七日改元。天変地震による。
- 【仁治】(1240-1243)四条天皇・後嵯峨天皇。延応二年七月十六日改元。彗星・地震・旱魃などによる。
- 延応元年4月16日:大地震。
- 延応元年8月17日:加賀白山噴火。
- 延応元年11月12日:大地震。
- 【建長】(1249-1256)後深草天皇。宝治三年三月十八日改元。変異(天変火災)による。
- 【正嘉】(1257-1259)後深草天皇。康元二年三月十四日改元。官庁炎上による。
- 【正元】(1259-1260)後深草天皇・亀山天皇。正嘉三年三月二十六日改元。飢饉・疾疫による。
- 【弘安】(1278-1288)後宇多天皇・伏見天皇。建治四年二月二十九日改元。疾疫による。
- 【永仁】(1293-1299)伏見天皇、後伏見天皇。正応六年八月五日改元。天変・地震(関東)による。
- 正応六年4月12日:鎌倉大地震(建長寺地震)
14世紀前半
- 【嘉元】(1303-1306)後二条天皇。乾元二年八月五日改元。彗星ならびに炎旱による。
- 【徳治】(1306-1308)後二条天皇・花園天皇。嘉元四年十二月十四日改元。天変による。
- 【応長】(1311-1312)花園天皇。延慶四年四月二十八日改元。疫病の流行による。
- 【正和】(1312-1317)花園天皇。応長二年三月二十日改元。天変地震による。
- 【文保】(1317-1319)花園天皇・後醍醐天皇。正和六年二月三日改元。大地震などによる。
- 正和六年1月5日:京都の地震。
- 【嘉暦】(1326-1329)後醍醐天皇。正中三年四月二十六日改元。疾疫流行ならびに前年の地震などによる。
- 正中三年1月3日:未曾有の大地震。余震続く。
- 【元徳】(1329-1331)後醍醐天皇。嘉暦四年八月二十九日改元。疾疫による。
- 【元弘】(1331-1334)後醍醐天皇。元徳三年八月九日改元。疾疫による。
室町時代
14世紀後半
- 【康永】(1342-1345)北朝の光明天皇。暦応五年四月二十七日改元。病事、天変地妖による。
- 【貞和】(1345-1350)北朝の光明天皇・崇光天皇。康永四年十月二十一日改元。風水疾疫による。
- 【延文】(1356-1361)北朝の後光厳天皇。文和五年三月二十八日改元。兵革による。
- 【康安】(1361-1362)北朝の後光厳天皇。延文六年三月二十九日改元。兵革・疾疫による。
- 【貞治】(1362-1368)北朝の後光厳天皇。康安二年九月二十三日改元。天変・地震・疫病の流行(天変・地妖・兵革)による。
- 康安元年6月16日:康安南海地震
- 康安二年5月17日:大地震
- 【応安】(1368-1375)北朝の後光厳天皇・後円融天皇。貞治七年二月十八日改元。病患および天変地妖などによる。
- 【康暦】(1379-1381)北朝の後円融天皇。永和五年三月二十二日改元。疾疫兵革(天変、疾疫、兵革)による。
- 【明徳】(1390-1394)北朝の後小松天皇。康応二年三月二十六日改元。天変・兵革による。
- 【応永】(1394-1428)後小松天皇・称光天皇。明徳五年七月五日改元。疱瘡の流行による。
15世紀
- 【宝徳】(1449-1452)後花園天皇。文安六年七月二十八日改元。洪水・地震・疾疫などによる。
- 文安六年4月10日:山城・大和地震
- 【享徳】(1452-1455)後花園天皇。宝徳四年七月二十五日改元。疫病(疱瘡)流行による。
- 【康正】(1455-1457)後花園天皇。享徳四年七月二十五日改元。兵革連綿による。
- 【長禄】(1457-1460)後花園天皇。康正三年九月二十八日改元。病患、旱損(病患炎旱)による。
- 【寛正】(1460-1466)後花園天皇・後土御門天皇。長禄四年十二月二十一日改元。天下飢饉による。
- 【応仁】(1467-1469)後土御門天皇。文正二年三月五日改元。兵革による。
- 【文明】(1469-1487)後土御門天皇。応仁三年四月二十八日改元。兵革・星変による。
- 【長享】(1487-1489)後土御門天皇。文明十九年七月二十日改元。疾疫、兵革、火事による。
- 【延徳】(1489-1492)後土御門天皇。長享三年八月二十一日改元。天変・疫病による。
- 【明応】(1492-1501)後土御門天皇・後柏原天皇。延徳四年七月十九日改元。疾疫・天変による。
16世紀前半
- 【大永】(1521-1528)後柏原天皇・後奈良天皇。永正十八年八月二十三日改元。兵革・天変による。
- 【天文】(1532-1555)後奈良天皇。享禄五年七月二十九日改元。兵革による。
- 【弘治】(1555-1558)後奈良天皇・正親町天皇。天文二十四年十月二十三日改元。兵革による。
- 【元亀】(1570-1573)正親町天皇。永禄十三年四月二十三日改元。兵革によるか。
安土桃山時代
16世紀後半
- 【天正】(1573-1592)正親町天皇。元亀四年七月二十八日改元。兵革によるか。
- 【慶長】(1596-1615)後陽成天皇・後水尾天皇。文禄五年十月二十七日改元。天変地妖による。
- 文禄五年4月4日:浅間山噴火。
- 文禄五年閏7月9日:豊後・薩摩で大地震。
- 文禄五年閏7月12日:近畿地震(伏見地震)
江戸時代
17世紀
- 【万治】(1658-1661)後西天皇。明暦四年七月二十三日改元。前年正月の江戸大火による。
- 【延宝】(1673-1681)霊元天皇。寛文十三年九月二十一日改元。即位および京都大火、内裏炎上、諸国洪水などによる。
18世紀
- 【宝永】(1704-1711)東山天皇・中御門天皇。元禄十七年三月十三日改元。関東地震による。将軍家より申し入れるという。
- 元禄十六年11月23日:関東で大地震。
- 元禄十七年1月1日:浅間山噴火。
- 【安永】(1772-1781)後桃園天皇・光格天皇。明和九年十一月十六日改元。関東の大火大風による。
19世紀
- 【天保】(1830-1844)仁孝天皇。文政十三年十二月十日改元。地震による。
- 文政十三年7月2日:京と山城で地震。同日、阿蘇山崩壊。
- 【安政】(1854-1860)孝明天皇。嘉永七年十一月二十七日改元。内裏炎上、近畿地震、異国船渡来等の変異による。
- 嘉永六年2月3日:江戸と東海道で大地震。
- 嘉永七年6月15日:伊賀を中心に大地震。
- 嘉永七年11月4日:東海道を中心に関東以西の広範囲に大地震。津波で下田が壊滅し、停泊していたロシア軍艦ディアナ号も沈没。津波はサンフランシスコに至る。
- 嘉永七年11月5日:前日に引き続き西日本で大地震。
- 嘉永七年11月7日:伊予・豊後・日向北部で地震。