ブログはメディアのオープンソースコードである

※以下は博客中国(Blogchina.com) で2003-6-17に方興東氏が発表した「"博客:メディアのオープンソースコード"理念の理由」を翻訳したものである。一部、オープンソースコード特集ページの記述によって補足した。なお、中国ではブログもブロガーも「博客」と表記し、その区別が曖昧なところがあるので、以下、すべて「博客」と表記した。

2003年11月 7日18:38| 記事内容分類:06.ウェブログ論| by 松永英明
この記事のリンク用URL| ≪ 前の記事 ≫ 次の記事
| コメント(0) | トラックバック(2)
twitterでこの記事をつぶやく (旧:

援護射撃を求む:「ブログ――メディアのオープンソースコード」の基本理論構成

作者:方興東
2003-6-17 10:12:18
出所:博客中国(Blogchina.com)

 以下、本書の博客理論のおおよその骨組みである。皆さんの批評・訂正によって、あなたの思想と観点に貢献できることを望んでいる。
 以下は『博客』の第5章からの抜粋である。

"博客:メディアのオープンソースコード"理念の理由

 そう、博客は技術促進の一つの革命であり、草の根の力量を本当に発揮する一つの波だ。
 そのため、自由・個性・革新などが彼らの特徴であるが、乱雑・無秩序・混乱もまた現段階では必然的な特徴である。
 しかし、一回の深刻な革命として、すべては次第に成熟しつつあって内在する規則は水面に浮上し、我々はその中で未来の博客の向かう価値の奉公や内在する構造についての分析や判断を決定する必要がある。
 表面的にみれば、博客とソフトウェア業界のオープンソースコード運動はまるで別の領域のものごとである。一つはソフトウェア、一つはメディアであり、少しも関係がない。
 しかし、博客発展の歴史をひもといてみると、活発な博客の由来や彼らの価値観を観察し、またその中で働いている機能と経済規則を分析すると、両者の間には実際には驚異的な一致が発見でき、調べれば調べるほど血脈が相通じているのである。
 これが、我々の提出する"博客:メディアのオープンソースコード"理念の根拠である。
 "博客中国"は2002年8月にサイトオープンの第一日目に、私たちの理念を気色鮮明に打ち出した。「博客と知識・思想との関係は、まさにNapsterと音楽、Linuxとソフトウェアのようなものである」
 博客の提唱する精神は、「開放・共有・自由」であると思う。
 それから、我々は多くの文章で、"博客とソースコード"の関係について詳しく述べている。
 たとえば、2002年10月23日、「博客の"ソースコード"とその内包」という文章を発表し、明確に「博客の文章区分と、一般の文章の要点は、つまり、博客の文章はオープンソースコード的であるということだ」と書いた。
 2003年の初め、トニー・パーキンス(Tony Perkins)は博客サイトAlwaysOnを始めた。
 ハイテクメディア領域で最も将来性を備えた人物の一人として、トニー・パーキンスは最近、博客は「メディアのオープンソースコード運動」の視点を提案した。
 それは我々の以前の理念と偶然にも一致していた。
 「メディア」「内容」あるいは「情報」「知識」「思想」という違った言葉を使っていても、実際に指しているのは同じことである。
 本文では、我々はその中でも現在最も大衆向きの言葉「メディア」を選んだ。
 2003年6月10日、《ビジネス・ウィーク(商業週刊)》の文章も、正式に"Open Source Media"という概念を使い始めている。
 博客の出現が集中的に体現しているのは、インターネット時代のメディア界が体現している商業化独占と非商業化自由、大衆化伝播と個性化(分衆化・小衆化)表現、一方向の伝播と双方向伝播という3つの基本的な対立・方向・相互作用である。
 これらの対立は、博客が誘発したオープンソースコード運動によるものであり、少なくとも技術的な面では根本的な解決に至っている。
 しかし残念なのは、この方面の理念について、現在まで全世界的に観点は混乱しており、系統だった論述と理論構築がないことである。
 我々はおそれながら、この理論のアウトラインを構築してみようと試みた。

博客とソフトのオープンソースコード運動に内在する精神は、同じ流れを汲む

 およそ3年前、オープンソースコード領域のプログラマーが、種々の博客ソフトを開発した(あるものは博客形式に似た簡易出版ソフトであった)。
 これらのソフトは無料であるだけではなく、オープンソースコードでもあった。
 それらの共通性は以下のとおり。コンピューターの基礎知識と技能がどの程度の人出も使うことができ、便利で、ローコストですばやく自分のインタラクティブなウェブサイトを作り上げる。
 これらのソフトは知らず知らずのうちに地下から、萌芽段階の博客の趨勢の中に出て来た。
 この技術ツールによって、博客は迅速に全世界的な運動へと変貌した。
 そのため、当時、オープンソースコード運動が博客運動の発生を助力したのだ、と言っても少しも大げさではない。
 その上、初期の博客信者の大多数も、オープンソースコード界の人たちだった。
 彼らはインターネット上で一つのサークルを作り上げ、内容をリンクして見解を交換することを簡単にし、論争や探訪を引き起こした。
 これらのサークルと発展変化中の博客サークルと博客ウェブサイトは常に一体しており、分離できないものだった。
 博客運動が勃興したとき、必然的に技術領域を超えて、内容と関連するすべての領域に向かっていった。
 その中でも、メディア領域は最重要なものである。
 博客はメディア領域のオープンソースコード運動の機会を生み出した。
 以下、我々はメディアから、最も重要な3つの要素――作者・内容・読者――を取り出し、「オープンソースコード」の内包するものを分析して明らかにしよう。
 それから、博客とソフトのオープンソースコードの比較的一致する道徳規範・運営メカニズム・経済の規則などを述べ、それから一歩進んで博客のオープンソースコード理論を詳しく述べる。
 これらすべては、参考にできるような過去の系統だった理論体系がないところで行なわれた。
 しかし、思考と探求を経て、我々は博客の未来の趨勢と方向について、大胆にも革新的な判断を作り出した。
 本書は博客を「メディアのオープンソースコード」と捉えるのが土台である。相対的に理論分析が成熟しているオープンソースコードソフトと対比・比較して、現在のところ、全世界の博客領域は最もシステマティックで最も大胆である。
 我々には自信がある。
 当然、これは一回の試みと努力であって、薄っぺらくて早急なものである。
 さらに繰り返して、本当のところがわかるだろう。
 時間をかけて調査され、これらの判断の核心的な観点の正確さが証明されることを望む。

ソフトのオープンソースコードとメディアのオープンソースコードの価値比較(図1)

段階 ソフト(Open Source) メディア(Open Source Media)
  伝統的専有ソフト オープンソースコードソフト 伝統的メディア 博客
作者 企業内部のプログラマー プログラマーなら誰でも 職業作家 ネットワーカーなら誰でも
内容 ソースコード非公開 ソースコード公開 伝統的な文章 文章をリンクさせる
受け手 ユーザーは作動しかできない ユーザーは修正できる 読者は"ただ読むだけ" 読者は相互に討論する

ソフトのオープンソースコードとメディアのオープンソースコードの構造比較(図2)

  ソフト(Open Source) メディア(Open Source Media)
段階 伝統的専有ソフト オープンソースコードソフト 伝統的メディア 博客
制作構造 大聖堂モデル 定期市モデル 大聖堂モデル 定期市モデル
発行構造 著作権(Copyright) GPL 著作権(Copyright) CC公共著作権
運営メカニズム 集中制御 開放共有 集中制御 開放共有
技術実現 代理人が主導し制御 伝統的代理人はなし 代理人が主導し制御 伝統的代理人はなし
経済原則 商品経済 贈り物経済 商品経済 贈り物経済

ソフトのオープンソースコードとメディアのオープンソースコードの共通点
  ソフトの
オープンソースコード
メディアの
オープンソースコード
基礎 どちらも新技術革命(インターネット)が現状を誘発した
構造 どちらも現行の集中制御を越えることを試み、開放共有に向かう
内在する精神 どちらも人類の開放・自由・共有の伝統に回帰する
原動力 商業利益を最大化にするのではなく、快楽を追求する贈り物経済
目的 どちらも現在の制度と構造を補充・包容し、新しい可能性を付け加える
価値 新しい知識を公共領域に付け加え、核心的活力を称揚する
先駆的人物 理想主義者・自由主義者
直面する挑戦 どのように商業化と同時に理想を守るか

ソフトのオープンソースコードとメディアのオープンソースコードとの違い
  ソフトの
オープンソースコード
メディアの
オープンソースコード
影響する領域 ソフトウエア業界 すべての内容領域
主要な参与者 プログラマー(技術の精鋭) ネットワーカー(草の根の性質を備える)
主要な対立者 伝統的専有ソフト 伝統的メディアの巨頭
対立する制度 伝統的ソフト知的所有権制度 伝統的内容知的所有権制度
発展段階 すでに成長期に入っている 発展初期に入ったところ
商業化の程度 すでに展開に成功 試み始めたところ
規則の統一性 規則は厳格に統一 規則はいっそう多元化

読者における"オープンソースコード"

  • オープンソースコードの鍵を理解する:商品経済と贈り物経済
  • 素朴に戻る:近代的な贈り物経済の原始的特徴と伝統精神
  • GPL:オープンソースコードソフトの"憲法"
  • 内容開放(OpenContent):オープンソースコードよりさらに広大な運動
  • "CC公共著作権":博客世界のGPL
  • オープンソースコード世界と伝統世界:対立ではなく、相互に補い共存する

博客と記者の関係は一体どのようなものか? 博客は伝統的メディアの運営メカニズムに影響できるか? これについてはJohn Hilerが非常に優れた論述を行なっている。以下の図表はそれをまとめたものである。「博客世界:新興メディアの生態(Blogosphere:the emerging MediaEcosystem)」で直接全文を読める。

博客興隆後のメディア世界の新しい食物連鎖(下図)

newfoodchain.gif
【広告】★文中キーワードによる自動生成アフィリエイトリンク
以下の広告はこの記事内のキーワードをもとに自動的に選ばれた書籍・音楽等へのリンクです。場合によっては本文内容と矛盾するもの、関係なさそうなものが表示されることもあります。
2003年11月 7日18:38| 記事内容分類:06.ウェブログ論| by 松永英明
この記事のリンク用URL| ≪ 前の記事 ≫ 次の記事
| コメント(0) | トラックバック(2)
twitterでこの記事をつぶやく (旧:

トラックバック(2)

トラックバックURL: https://www.kotono8.com/mt7/mt-tb.cgi/855

ウェブログ@ことのは [weblog@kotonoha] - ブログ――メディアのオープンソースコード (2003年11月 7日 19:38)

「オープンソース」的な知識共有が新たな知識の創造につながる――というテーマが少し話題になっている。方興東氏は「博客はメディアのオープンソースコードである」という主張を... 続きを読む

ソフトとメディアか。なるほどと思いました。 続きを読む

コメントする

このブログ記事について

このページは、松永英明が2003年11月 7日 18:38に書いたブログ記事です。
同じジャンルの記事は、06.ウェブログ論をご参照ください。

ひとつ前のブログ記事は「ジャーナリストとしてのブロガー」です。

次のブログ記事は「ブログすることに関する調査結果」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。
過去に書かれたものは月別・カテゴリ別の過去記事ページで見られます。